第4話 鑑定スキル(2)

 

「で、そのセメントの材料って、なんなんだ?」


 ヨナンは、鑑定スキルに尋ねる。


『この世界で手に入れれるのは、古代コンクリートの材料ですね。材料は、火山灰・石灰・海水です』


「おい! ちょっと待てよ! 海水って、この近くに海なんかないぞ!

 まさか、海まで海水を持って来いとか言わないよな!」


 ヨナンは慌てて、鑑定スキルに尋ねる。


『まさか。古代コンクリートの材料は、全て大森林の中に有ります。ご主人様に言われたように、取捨選択して話していますので、ご主人様にも簡単に手に入る材料を提示してますよ』


「だけど、海水だぞ? 海なんて大森林にないだろ?」


『大森林は、20億年前は海だったので、100メートルほど掘り進めば、岩塩層が出てきます』


「ひゃ……100メートルも掘るのかよ! まあ、エドソンから貰った大工道具の中にツルハシ入ってたから、掘れちゃう気もするけど、そもそもツルハシって、大工道具なのか?」


『大工スキルを持つご主人様が持ったら、何でも大工道具になるから大丈夫です』


「大工スキルって、そんなファジーなのかよ?」


『ですね』


「じゃあ、俺が剣をもっても、それは大工道具になるのか?」


『なります』


「滅茶苦茶じゃん」


『滅茶苦茶ですよ。ご主人様の大工スキルは』


 鑑定スキルが、俺が持てば、ツルハシも大工道具になるというので、取り敢えず地面を掘ってみる。


「うおおおおーー! なんじゃこりゃ! 地面がサクサク掘れやがるーー!」


『ご主人様、岩塩層に行く前に、古代コンクリートの材料になる火山灰層と、石灰層も途中に有りますので、採取お願いしますね』


「分かった! どれか分からんが、取り敢えず、採取しとく!」


 ヨナンは、なんか分からんうちに、火山灰と石灰も採取してたらしく、またまた、なんか分からんうちに、火山灰と石灰と海水を混ぜて古代コンクリートを作っていた。


「何で、岩塩が、海水になってんだよ!」


『それは、ご主人様が地下水脈も掘り当てたからですね』


「地下水脈掘り当てたって、全く水が出てないんだけど?」


『それは穴を掘るついでに、治水工事もしちゃったからですよ』


「俺、そんな事してねーし!」


『大工スキルを持ってるご主人様の体が、勝手に動いちゃったんですね』


「嘘だろ?」


『嘘だろって、もう、古代コンクリート作って、家の土台作りも終わっちゃってますよ?』


「うそーん?」


『嘘なんて言ってませんよ。見ればわかりますよね?』


「俺の体が勝手に動いて、メッチャ怖いんだけど……」


『それが、伝説のスキルと言われている、大工スキルというものです』


「大工スキルって、伝説のスキルだったのかよ?!」


『ですよ。よっぽど、女神ナルナーの寵愛を受けてないと貰えないスキルですよね』


「女神の寵愛って……俺が今迄、どんだけ不幸な人生送ってきてると思ってんだよ!」


『知ってますよ。お父さんは戦死して、お母さんはショック死、そして妹さんは奴隷商に売られてしまったんですよね?』


「だろ! 俺は物凄く不幸だったんだよ!」


『でも、ご主人様だけは、奴隷にならずに済んで、貴族の子供になれた。違いますか?』


「それはそうだけど、素手で芋を掘らされるような貴族の家だぞ?農奴と変わらんだろ?」


『それは、継母のせいであって、流石に女神ナルナーも、継母の性格までは分からなかったんじゃないですか?』


「だったら、意味ねーじゃねーか!」


 あまりに会話に飢えていたヨナンは、鑑定スキルとの流れるような会話の連続に、興奮してハイになっている。だが、全く手は止まっていない。

 というか、ゾーンに入ってしまったようで、グングン建築スピードが上がって、既に1階部分が出来上がっていたりする。


『あっ、ご主人様。家具まで一緒に作ってるんですね』


「な……何だと! 家とついでに家具まで……なんて非効率な建築なんだよ!」


『非効率と言っても、多分、誰よりも早く家を建ててますよ』


「だな……」


 ヨナンが呆れている間も、体が動き、ついに三階建ての立派な御屋敷ができあがってしまっていた。


「グラスホッパー家の御屋敷より、立派だな……」


 ヨナンは、大工スキルの凄すぎる能力に、もはや空いた口が塞がらなくなっている。


『ですね。この家と比べたら、グラスホッパー家の御屋敷なんて、掘っ立て小屋ですね』


「お前、結構、口悪いよな……俺も住んでる家なんだけど……」


『僕は鑑定スキルなんで、嘘付けないんです』


「それ、さっき聞いた」


『さっき、聞いたって……。というか、ご主人様は、鑑定スキルを酷使し過ぎだと思います。一体、鑑定スキルを何だと思ってるんですか?鑑定スキルは、お喋りの相手じゃないんですよ』


「仕方が無いだろ! 俺は友達1人も居なくて、会話に飢えてたんだから!

 やっとできた、会話相手を逃がしたくないんだよ!」


『レアスキルの僕を、会話相手って……。ご主人様、鑑定スキルの使い方を完全に間違えてますよ!』


 会話スキルは、少しだけご立腹のようだった。


 ーーー


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