第24話 新しい仲間

「イロハ君と君達には別の任務をお願いしたい」

「別の任務?」

「うむ。それとぉ…おーい、そこの職員、彼らをこっちに連れて来てくれるかねぇ!」

「は~い。連れてきますね」


 ランバルは待機していた職員にそう訴える。


「?」


 6人は、そう言われて行く職員を見る。

 暫くすると、その職員は人を2人連れて入って来た。


 一人は、ガランに負けないくらいの筋骨隆々な重装備な戦士。

 身長は160cmくらいで髭が長い、それを三つ編みにして綺麗に纏めている男。


 そして、その男は空いてるソファにドカッと座る。


 もう一人は、白と黒モノクロを基調にした服に、胴と頭にはちゃんと金属製の防具を装備していて顔がよく見えない。左手には小盾を装備し、右手には綺麗な三又の短槍を持っていて髭男が座ったソファの後に立った。


「ほぅ…良い両手戦斧だな。その輝き…少し、オリハルコンを混ぜてあるのか?」


 ガランは髭男にそう言った。


「おう。お主、なかなか見る目があるようじゃな。いかにも、戦斧これにはミスリルに、オリハルコンを微量混ぜて作ってある代物じゃあ、ほほほ」


 髭男はそう言い返した。


「流石、ドワーフ族。良い武器を持っているようだ」

「お主のそのハルバート風の戦斧もなかなか。ソレの制作はドワーフか?」

「いや、これは迷宮品だぜぇ、ガハハ」

「なんと!もう噂の迷宮に潜ったのか、お主ら?」

「まあな」


 ガランはドヤ顔でニヤけた。


「まあまあ、雑談は後にしてもらえますかなぁ?」


 ランバルはそう言い、場を治めた。


「ではぁ、紹介しよう。今喋っていたのがドワーフ族戦士の、ビクタル・オーレンス君です。でぇ、その後ろに立っているのが、シャルヴル・ソーリン君と言う名だったかなぁ?」


 コクリとその人は頷く。


「すみませんねぇ。種族までは私は聞いてませんのでぇ…私からの紹介はこの辺でぇ。二人をイロハ君達のパーティにと思って連れてきました」


 ランバルは机に肘をついてそう言った。


「なるほどね。私達のパーティに足りない、もう一人戦士と…その鎧の方はもう一人の治癒士って事かしら?そうは見えないけど?」


 チーヌは二人を見ながらそう言い、すぐにランバルが口を開く。


「彼…いやぁ、彼女かも知れないが、シャルヴル君は聞いた話だと特殊でねぇ。水魔法のスペシャリストらしいのだよ。職業的な物を言うならばぁ…治癒魔法槍術士って所でしょうかねぇ…魔狩人達は素性を隠す人間も少なくはない。そこの所察してやって欲しい」


「シャルは儂のダチでな。数年一緒に旅をしているんじゃ。防御、回復魔法もお手の物じゃし、槍の名手でもある。因みに儂ら二人はこの間、魔狩人マカドランクAに昇格したばかりじゃよ。ほほほほほ」


 ヘぇ…何者なんだろう。

 喋らないから男性なのか女性なのか分からないけど。

 確かにあの身なりだと槍戦士ぽいけど…水魔法のスペシャリストで回復も使えるんだ?一体どんな人なんだろう。


「で、ランバル殿。彼らのパーティに入れば、クランに所属してなくても迷宮に入って良いと言うのは本当なのじゃろうな?」

「はい。そのつもりですぅね」

「ガハハハ。なんだ最初にここに来た時の俺達と同じ事言ってやがる。安心しろ俺達と一緒なら迷宮遺跡には入れるぜぇ!」


 ガランは話に割り込んでそう言った。


「なんであんたが威張るのよ…」


 チーヌは呆れてそう呟いた。


「8名揃ったって事でぇ。君達は次の依頼に応えて貰わないといけなくなるわけなんだがねぇ…」


 ランバルがそう言うとビクタルが、髭を擦りながら口を開く。


「む?ランバル殿…依頼とは、彼らと一緒に迷宮に潜る事ではないのか?」

「そういやぁ…おっさん。俺達には別の任務がどうの言ってやがったな?」


 ガランもそう問いかける。


「うむ。君達が持って来た情報により、ここの迷宮遺跡は魔狩人Aランククラン辺りなら守護しているミノタウロスを撃破出来ると確信しぃ、大規模に探索とマジックアイテム集めを始めます」


 ランバルは両手を目の前で組んでそう語り。

 更に話を進める。


「でぇ、君達にやって貰いたい事とは、次の迷宮遺跡の解放とぉ、1階層の探索です」

「なるほど、おっさん。そう言う事か」

「うむ。ここから一番近い迷宮遺跡はここから西、このエルフ国「エルグラン・ルシール」と、人間の王国「アイレンス・ボレス」の国境にある町、「アビライ」へ向かってくれ」


 ランバルはそう言った。


「そう言う事なら、わがったぜ!」

「わかったわ」

「どっちにしても迷宮に入れるのなら、儂とシャルヴルはついて行くだけよのう。シャル?」


 コクリと頷くシャルヴル。


「良い返事ですねぇ。このままではねぇ、迷宮品を手に入れようと、この町にこの大陸中の魔狩人が集まって来て、大変な事になりかねませんからぁ、その方達も間引いておかないといけないわけですよぉ。アビライの魔狩人協会支配人にはメルロウを飛ばしておきますから」

「なるほどね。あそこは迷宮遺跡が停止してからと言うもの、エルグラン首都、アイレンス王国王都ともに距離もあるし、ただでさえ過疎化してるからね」


 チーヌがそう説明した。


「その通りぃ。イロハ君達には、迷宮遺跡解放を目的として大陸を回って欲しいわけですよぉ。本当は自由に迷宮に潜って貰っても構わないと思っているのですがぁ…、ほら、迷宮で死んだらぁ死体…残らないでしょ?だからぁ、イロハ君に死んで貰ったら困ると言いますか…大問題です。西大陸からの連絡もまだないですしぃ。早くこの大陸の魔狩人の攻撃力を底上げして西大陸の魔物へ対処しないと行けないから必死なんですよねぇ…」


 ランバルは困り顔でそう言った。


 なるほど、迷宮は下へ降りれば降りるほど魔物は強く設定されている。

 僕にもしもの事があったら、他の迷宮遺跡の解放は出来なくなる上に、下手したらまた迷宮遺跡…閉じちゃうかも知れないしね…


 他の迷宮がどの程度の強さか分からないけど。

 いくつか解放していないと、殆ど傭兵みたいな魔狩人達は我も我もと迷宮へ導かれる。そうなると、魔物への対処が遅くなってしまうって事か…


 西大陸の魔物も気になる。約9000年放置されていた世界、このアラウザルゲートは、今どういう状態に陥っているんだろう。


 ランバルさんは、明日に8人乗りのヤム車を準備するから、今日一日はこのグランリア町でゆっくりすると良いと言った。


 僕達は8人で近くの酒場で交流を深める事にしたのだった。


 ◇


 酒場でいろいろと皆で語った。


 ビクタルはドワーフ族。

 故郷はドワーフ族の国「ドワルフスミス」だった。

 僕がこの世界の事をよく知らないので、皆はいろいろと教えてくれた。


 この世界で、種族として一番栄えているのは、ドワーフ族らしい。

 物作りが得意なドワーフは様々な物を生み出し、いわば、近代化を進めていると言っても過言ではないらしい。


 武器防具は勿論の事。灯りを灯す魔道具や、農機具の機械まで幅広くこの世界で流通し。エルフ族とまでは行かないが、約500年くらいと長命である。


 約9000年前に迷宮品が出土しなくなり、それが壊れて無くなった後、一気にドワーフの時代が訪れたと言った。


 そして、ドワルフスミスと言う国は、この大陸の西に位置し、大きな山岳地帯の中をくり抜いて作られた要塞のような都市だと言う。


 それは、西への海底トンネルを掘り、西大陸の東にまで国は広がっているのだと語られた。


「で?西の大陸についてビクタルは何処まで知っているんだ?」


 ガランは木のジョッキを飲みながらそう言った。


「知らん、儂はこの大陸をシャルと旅していただけで、向こうの事などはよく知らんのじゃよ。そんなのは西の連中に任せて置けばよいじゃろ」


「ほう…」

「しかし、この大陸よりも魔物が強くて、スタンピードも度々起こっているのは知っておる。ゴクゴク…ぷはー。美味い酒じゃぁ」


 チーヌは、ちらちらとシャルヴルを見ている。


「で?あなたの親友さんは酒も飲まないの?」

「ああ、シャルかぁ?こいつは水をたまに給水するだけで、あまり食事を摂らなくても良い体なんじゃよ」

「ふうん…ま、詮索するのはここまでにしますわ。よほどの事情もありそうですしね」

「まあ、そうしてくれ」


 そう言ってチーヌは黙った。

 シャルヴルは鉄の兜を被ったまま何も言わずそこに座っていた。

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