第13話 日常

 七羽いろはは、服を買い替える為。

 アパレル量販店に来ている。


 Mで入っていた服も胸板や腕に筋肉がついたため。

 少し大きめの服を着ないとパツパツになっていた。


 宝石を売ったお金があるので。

 その辺の服を一気に買った。


 ピロン。


 携帯から音が鳴ったのは、会計に並んでいる時だった。

 七羽は、携帯を見ると浩平からLINEが1件。


《やっと連絡来た。お前携帯とか見ないのか?まあいいや、今日の16時に、ほなみの家な!場所知ってるよな?》


 ほなみの家?女の子の家でするのか…親とか大丈夫なのか?


《分かった、何となく場所は分かるはず》と打ち込んだ。


 両手にいっぱいの服の袋を下げて帰宅する。


 ◇


 服を着替えるとLでピッタリだった。

 16時には着くように、相沢ほなみの家へ向かう七羽。


 何処かこの辺だった記憶があるけど…

 きょろきょろとしていると。


「あ、やっぱりななっちだ!私も今だったわ!」


 後ろから声を掛けてきたのは、柏原桜子かしわはらさくらこだった。


「お?あのね、何度も言うけど僕は、いろはだっつーの」

「私だけの呼び名だから良いじゃん!それより、ななっち…なんか、かっこよくなった?」

「はあ?」

「んー…なんか、男らしくなったような…」

「そ、そう?」

「最初、後ろから見た時、別人かと思ったし…」


 ジロリと体つきを舐めるように見る桜子。


「ああ…最近、僕、筋トレに夢中なんだわ!」

「へぇ、そう言えば、腕周り凄い大きくなったね。いや…全体的に大きくなったのかな?」

「はは…ま、まあ良いじゃないか!この辺…だったよね?ほなみちゃんの家って?」

「ああ、うん、こっちこっち!」


 そう話題を変えて僕らは、ほなみちゃんの家へ向かった。


 ◇


「「「誕生日おめでとー!!」」」


 パーン!


「有難う~、駿河君、宝杖君、桜ちゃん!」


 ほなみは、そう言って喜ぶ。


 イルも美人で可愛いけど、黒髪が似合ってて、ほなみちゃんも本当に可愛いなぁ。

 それに、ここには魔物もいないから、これが普通の日本の日常なんだよね…平和だなあ。

 最近、いつも武器を身に着けていたから、腰に剣がないのが気になるくらいだ。


 暫く、4人で楽しく会話していた。

 その時、ほなみのお母さんが部屋の扉を開けた。


「ほなみ?」

「ん?どうしたの、お母さん」

「今、テレビ見ていたら、この辺で刃物持った犯人が逃走中って言ってるんだけど…」


「「「えええ」」」

 刃物持った犯人?


 4人はそれを聞いて動揺した。


「ちゃんと戸締りしているわよね?」

「うん、窓はちゃんと鍵してるよ」

「なら良かった。絶対開けたらダメよ」

「うん、分かった」


 ほなみのお母さんは扉を閉めて出て行った。


「刃物持った犯人?物騒だな…」

「帰り…大丈夫かな?」


 浩平と桜子は不安そうにそう言った。


「夏休みだし…最悪、私の家に泊まって行った方が良いかも?」


 ほなみはそう言って立ち上がった。


「ちょっとお母さんに聞いて来るね」


 その時。

 ピンポーン。


「はーい」

『私服警察ですが。只今、事件の為に巡回してます。何か変わった事ありませんか?』

「待ってくださいね。今開けますから」


 扉の外から、そう言うやり取りの声が聞こえた。

 七羽は急に動き出して、立ち上がっていた、ほなみよりも先に扉を出た。


「え?宝杖君?」

「待ってて!」


 そう、七羽は感じ取っていた。

 外に居る人間は、警察ではない。

 刃物を持ち、動悸も高く。悪い意志も感じた。


「ほなみちゃんのお母さん待って、開けたらダメ!」

「え?何?」


 カチャ。


 鍵を開けた瞬間、その男は扉を開け、ほなみちゃんのお母さんの首に手をまわした。


「動くな」

「ひい!」


 間一髪、遅かった。

 首に回した手にはナイフを持っている。


「息子か?動くなよ…お母さんがどうなっても良いのか?」


 ドタバタと皆、出て来る。


「お母さん!?」

「え!」


 僕は皆に近づかないように手を横にして静止させる。


 犯人は、片手で扉の鍵を閉めた。


「ちっ。こんなに人がいやがったのか…まあいい、お前が娘か!?お母さんを殺されたくなかったら、そこの部屋で、お前が全員の手足を縛って最後こっちに来い」

「ほなみ…」

「早くしろ!」

「はい!」


 ほなみは、慌てて荷造り用のヒモを持って来た。


「よし。そっちの部屋で全員の手足を縛れ!早く」

「…はい…」


 犯人が監視する中、僕達は居間で、ほなみが手足を順に縛って行く。

 ほなみは不安で泣きそうな顔をしている。


 僕が何とかしなきゃ…

 多分、今の僕なら近づく事さえ出来れば一撃で倒せる。

 まずはこの縛られたヒモをどうにかしないと。


 みんなの手足を縛った、ほなみは、犯人に言われるがまま。

 自分の足をヒモで縛っていた。


 地球で使えるか分からないけど。魔法を使うように掌に火をイメージする。

 すると熱くなってきた。

 手首を出来るだけ折り曲げ、ヒモに触れた。


 手を熱くするように念じ続けると。

 そのヒモは熱で溶けてハラリと落ちた。


 皆にも、見えない位置で正座して足のヒモを同じように溶かす。


 足を自分で縛った、ほなみは、犯人に言われお母さんに手を縛られる。

 犯人は、次にほなみのお母さんを拘束するため、ヒモを受け取りナイフを持ったまま拘束しようとしていた。


 今だ!


 ボコオオオオ!!


 ほなみのお母さんを拘束しようと目が周りから逸れた瞬間だった。

 僕は立ち上がって一瞬で詰め寄り、顔面にパンチ。


 犯人は吹っ飛び壁に激しく叩きつけられ失神した。


「え!?え?えええええええ」

「ほなみちゃんのお母さん!警察に電話!」

「ああ…はい!」


 僕はノビている犯人の手足をヒモで何十にも縛った。

 そして、拘束されていた皆のヒモを外しにいった。


「さんきゅ、びっくりしたぜ…七羽、お前いつの間にヒモ抜けたんだ?」

「僕のだけ緩かったのかもね?ははは」


 腕をさすりながら浩平は立ち上がった。


「ありがとう、ななっち…怖かった…しくしく」

「ありがとう…宝杖君!わーん、ひっく…」


 ほなみちゃんも桜子も、拘束を解いた瞬間、2人抱き合って泣き出してしまった。

 警察のサイレンが聞こえた。


「みんな大丈夫?…良かった…無事で…」


 ほなみのお母さんはそう言って周りを見た。


「宝杖君…ありがとね。本当に有難う…」


 そして、事件を解決した僕にそう泣きそうな顔でそう言った。


「いえいえ、皆無事で良かったです」


 それから、警察が来て犯人は逮捕され。

 後に僕は警察で表彰される事になるみたいだけど…


 結局、事件は解決。

 ほなみちゃんの誕生日は、とんでもない一日だったわけだけど。

 あの時、僕が居なかったと思うと少しぞっとした。


 その後、駿河浩平と一緒に柏原桜子を家に送って。

 いろいろ筋トレとかの事とか浩平に聞かれたけど、適当に誤魔化した。


 とりあえず、帰宅した。

 家に入ると。


「七羽、大活躍じゃったらしいのお?」

「爺ちゃん、もう知ってるの?」

「相沢さん宅から連絡があってのお、改めてお礼がしたいとの事じゃったわい」

「ああ、そゆことね」

「筋トレも悪くないのお、筋トレマシンで欲しいのあったら買って来てやるぞい?」

「要らないよ…自分にあった事やるからさ」

「あらそうかい」

「あ、また2~3日出て行ったり帰って来たりするかもだけど、心配しなくていいからね、爺ちゃん」

「ああ。心配はしとらんから勝手にしなさい」

「有難う、爺ちゃん」


 爺ちゃんは満足げに僕の背中をぽんぽんと叩いた。



 後に、警察で表彰を受けて夕方のニュースにも「お手柄、高校生。格闘家の犯人殴り倒す」でちょっと、この辺では有名になってしまった。


 あの犯人格闘家だったらしい…

 それを一撃で倒したわけだから、そりゃ有名にもなるか。




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後書き。

台風だらけで、憂鬱な日々ですね。

こんな時は小説を読むしかありませんね!

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