第3話 RBSの仕様

 禍々しい門の置物「リモデリング・ブレイン・システム(RBS)」はエルド・アトランティスと言う、約9000年前に何らかの理由で没した国の産物だった。

 それは脳や肉体の改造覚醒を目的とした機械である事も分かった。


 門の世界「アラウザルゲート」は、前使用者「オルキルト・アーゲン・ラビリス」が創造した世界だった事を、宝杖七羽ほうじょういろはは知るのだった。



 本に存在した豆を口にした瞬間、目眩に襲われた七羽。

 すぐに立ち直り、感覚が以前よりも研ぎ澄まされていくのを覚えた。


「この豆凄い…急に頭が冴えて、身体が軽くなった」


 メイとイルメイダは顔を見合わす。


「今何かを食べたのかい?」

「え?今、僕、豆食べましたよね?」

「…あたいらには、何かを食べたふりをしたようにしか見えなかったがね?」

「え?そんなはず…2cmくらいの大きな豆だったのに?」

「…いや…本から何か取り出して何か食べた仕草は見たけどな…」


 メイ婆さんと、イルはそう言った。


 見えてない?…

 使用者の僕にしか見えない物だったのか…


「そう…ですか?…見えてなかったんですね…」

「…じゃが…先祖からも聞いておる、オルキルト様は時折、あたいらに見えない物を見ていたりしていたと…それと似たような物かも知れん」

「なるほど…メイさん達には見えない物か…」


 そう言えば、考えるだけでステータスが見えるって言ってたな。

 こうか?


 七羽が自分のステータスを思い浮かべると。

 それは目の前に現れた。


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 宝杖七羽

 人間男性

 17歳

 脳覚醒率9%


 体力: 33

 魔力: 2

 力:  30

 知力: 25

 器用: 20

 敏捷: 26


 能力: 鑑定 身体強化 

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 うわあ…ゲームぽく出て来た…

 脳覚醒率って…つまりレベルって位置づけ?なのかな…


「イロハ?今何か見えてるのかえ?…」

「え?…ああ、ステータスをちょっと」

「すていたす?なんじゃいそれは?」

「ああ…いや、何でもありません」


 不思議そうに僕を見る二人。

 この表示も見えないみたいだね…

 少し、二人を見てみるかな…


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 メイ・アーグラエル

 エルフ女性

 1467歳


 体力: 9

 魔力: 57

 力:  8

 知力: 52

 器用: 8

 敏捷: 6


 能力: 火魔法+2 風魔法+1 水魔法+2 精霊術

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 イルメイダ・アーグラエル

 エルフ女性

 34歳


 体力: 15

 魔力: 29

 力:  9

 知力: 28

 器用: 13

 敏捷: 20


 能力: 弓術+2 水魔法 風魔法 火魔法 精霊術

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「ぶっっっ!!」

「む?なんじゃい…急に吹き出しおって…」

「い…いえ…」


 メイ婆さん1467歳って…

 イルも全然年上だった…

 流石エルフと言った所だ…

 あれ?脳覚醒率って僕しかついてないのか?


 少し疑問を持ちながらも、七羽はまた本に目を向けた。


 ≪私がこのアラウザルゲートと言う世界を作ってから時代も移り変わり、様変わりもしていよう。先を託したエルフ族が存命なら、世界の事を聞き冒険に出ると良い。ブレインビーンズは、この世界の要所などに散らばって出現するようになっている。それを集める事が出来たのならば、使用者の脳と肉体は究極を極める事が出来るだろう。≫


「究極の人間かぁ…」


 ≪最後に。重要な事をもう一つ書こう。RBSは使用者なら設定も多少は自由に決める事が出来る。≫

 ≪まず、地球時間よりも遅くする事も、速くする事も可能だ。流石に時を戻す事は叶わぬが。例を挙げると、この世界での5日を地球時間1日に設定なども出来る、次元世界だからこそ出来る技である。≫


 使用者ならではの特権って事か。


 ≪その場合、使用者はこの世界で5日、地球より時間が進むわけだが、老化を気にすることはない。脳を活性化させていくわけだから勿論、老化も抑える事が出来るようになる。RBS使用者で帰還した者は最大200歳は寿命が延びているとも言われているからな。≫


 なるほど。


 ≪設定は他にもやれる事はあるのだが、自分で確かめて欲しい。世界が壊れるような事は出来ないから安心してくれ。≫


「ふむふむ…」

「イロハ。我々には見えない物が見えているとしたら、やはりそなたはこの世界の新たな英雄と言う事になるわけじゃな」


 本をある程度読んだ僕にメイ婆さんはそう言った。


「そうみたいですね、僕が次のこの世界の使用者って事になっているみたいです」

「うむ。あたいもその本を読んで見た事はあるのじゃが、日記のような部分は読めても、そなたの開いているその部分の文字には魔法が掛かっているのか?白紙や文字が変な形をして読むことが出来ないんじゃよ…」


 なるほど…これは使用者へ向けての文章だから、この世界の人が見ても文字化けして見えているのか。

 でも…大体の事は分かった。

 どうやらアトランティス人の肉体強化のために作られた機械だったって事だね。


 リアルゲームっぽくて何だか面白そうだけど。

 この世界での死は本当の死を意味する…この世界を冒険するのなら、それは、しっかりと注意して置かないと行けない。


 今日から春休みに入るし、この世界の時間設定を変えれば存分に冒険する事が出来るよね。少しはやってみるか…やめたい時はその時考えれば良いし。

 そもそも、バイトくらいしかやる事ないし…


「お婆様、持ってきました!」


 イルメイダが、メイ婆さんに何かを言いつけられて持って来たものを机に置いた。

 それは麻袋だった。


「これは?」

「始まりの資金とでも申しておきましょう、去ったオルキルト様が残して行った物でもありますゆえ」


 麻袋をひっくり返すメイ婆さん。


 ジャラリ…


 そこに転がったのは、この国の貨幣と宝石が数十個だった。


「イロハには、強くなって英雄になって貰わねばな…」

「いや‥英雄って…」

「オルキルト様がこの世界を去って約9000年余り…この世界は今や混沌。魔物も日々日々多くなって…今じゃ人々は塀で町を覆い、強固で高い囲いの中で生活を余儀なくしておる。このエルフの精霊の森にも魔物が入って来る始末…」

「はぁ…魔物が…」

「我がアーグラエル家系しか知らない事じゃが、この世界は、そなたやオルキルト様外部の者が創造した世界。創造者ならこの世界の有り様を変える事が出来る力を持っていると信じて、ここまで待ち望んでおった」


 そうメイに言われ七羽は少し戸惑う。


「‥‥‥メイ婆さん…僕…実はあまり…と言うか生き物も殺した事ないんです…、僕の世界では生き物や人間を殺す事は犯罪行為で、罰せられる事になってて、特に僕が生まれた日本って国は平和な国なので…魔物とかもいませんですし…」

「なんと…魔物がいない世界とは!…」


 メイ婆さんとイルメイダは顔を見合わして驚く。


「イロハさん…私からもお願いします。一緒にマカドになって貰えませんか?」

?」


 イルの言った言葉にそう返した。


「はい、マカドとは、魔物を狩る人の事で、魔狩人の総称です。この世界の50%の人達はマカドに所属して生計を立てています。」

「なるほど…それでマカド…」

「はい、魔狩人マカドは協会があり、どの国や町でも身分証明証さえあれば入れます」

「僕なんかで務まるのかな?」

「この世界の英雄様なんです。英雄様は、この世界の人にはない力を行使出来るとも聞いております。きっとイロハさんも、特別な力があると私は思っています」

「…はは…本当に?…」

「はい!」

「うん…じゃあ、死なない程度に頑張ってみようかな…はは…」

「有難うございます!イロハさん!」


 美人に懇願され、少し浮ついた気持ちで引き受けてしまう七羽だった。


 ん??

 まだページの下に追伸が書いてあった。


 ≪追伸。これを読んでいる使用者よ、エルフ族は良いだろう?自分が創造したとは言え、ここまで魅力的な種族は他にないだろう?実は、私はエルフ族に手を出してしまったのだが、長命族なので私の末裔がいるやも知れん、大切にしてやってくれ≫


「‥‥‥‥はあああああ??」


 オルキルトってこの世界のエルフと…うらやま…いや違う。




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 後書き。

 いまから七羽の冒険を描くのが楽しみな作者であります。

 物語りはどうでしょうか?

 出来る事なら、ありきたりな作品にはしたくないものの。

 異世界系と言うのは最初あたりはありきたりになりがちなので、少し、視点などを考えながら物語を綴りたいと思っております。

 読んでくれているファンのために頑張って行きたいと思います!

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