異世界転生物語

第1話 冒険の夜明け

夏樹は、突然の発光と共に目を覚ました。目の前には見たことのない光景が広がっていた。広大な草原、青い空、遠くには見知らぬ山々がそびえていた。

「こ、ここは一体……？」と思った瞬間、夏樹は自分がどうやら異世界に召喚されたことに気付いた。

驚きにもうろうとする中、夏樹は目の前に現れた美しい女性に呼びかけられた。

その女性は、まるでファンタジー映画に出てくるような服装をしており、長い髪は綺麗な金髪をしていた。彼女は夏樹の手を取り、「私の名前は、エリス」と名乗った後、自分の手を握ったまま、夏樹の目を見つめて言った。

「貴方をこの世界に召喚したのは他でもありません。私の村は今、危機に陥っています。私はそれを救うために貴方を呼びました。どうか、私を助けてください！！」

そう言って彼女は夏樹に頭を下げた。

夏樹は彼女の真剣さに戸惑った。しかし、それ以上に、自分は会社に向かう途中だったことを思い出していた。

「すまない……。俺にも用事があるんだ。君を助けることはできない……」

夏樹の言葉を聞いたエリスは顔を上げると悲しげな表情を浮かべた。

「お願いします！！助けてくれないと、村に平和が訪れません。そうなれば、私達は生きていくことができなくなります。どうか、お慈悲をお与えください！」

そう言ってエリスは再び頭を下げる。

「……」

夏樹は言葉を失った。

確かに、俺は平凡なサラリーマンだ。だからと言って、こんな状況になった時、咄嵯に答えられるほど器量があるわけではない。

夏樹は、自分の無力さを痛感した。目の前で困っている人がいるのに何もできない。それは、彼にとっては耐え難い苦痛であった。

夏樹は無言のまま、ただ拳を強く握りしめていた。

「…………分かりました。私が、貴方の代わりに行きましょう」

突然の声に、夏樹は声の主を見た。そこには、一人の女性が立っていた。

「ミリア！？どうしてここにいるの？」

夏樹はその女性を見て驚いた。そこにいたのは、同じ会社の同期で友人のミリアだったのだ。

ミリアはいつも通りの冷静さを保ちながら、夏樹に向かって言った。

「話は全部聞かせてもらったわ。あんたが代わりに行くなら、あたしが行ってあげる」

ミリアは夏樹にそう告げると、エリスの方に向き直り、「そういうわけで、よろしくね。エリスさん♪」と言った。

「ミリア？お前には無理だ！危険する！！」

夏樹は、慌てて叫んだ。

「大丈夫だって！！任せなさいって！」

ミリアは自信満々に言うと、「そんなことより、早く行かないと間に合わないんじゃないの？」とエリスに問いかけた。

「……そうですね。時間がないです。急いで出発の準備をしましょう！」

エリスは慌てるようにして荷物をまとめる。

「ちょっと待ってくれ、俺はまだ納得していないぞ！！」

夏樹は抗議するが、その言葉は聞き入れられなかった。

「ごめん、夏樹。でも、こうしている間にも、村に危機が迫っているの。それに、貴方は魔法使いではないんでしょう？」

「そうだが……」

夏樹が言葉を詰まらせると、ミリアが口を開いた。

「夏樹、諦めなって！！これは、あんたが選んだ道なんだよ？あんたがやるしかないんだ」

ミリアはそう言い放つ。

「そうですよ。私からもお願いします」

エリスもミリアの意見に賛成する。

「……わかったよ」夏樹は渋々と同意した。

「それでこそ、男だよ！！」

ミリアは満足げに微笑む。

「ありがとうございます！！」

エリスは嬉しそうに笑う。

「まったく……。仕方のない奴らだ」

夏樹はため息をつく。

こうして、夏樹は、エリスとともに、ミリアの故郷を救う旅に出ることになった。

「よし、準備完了だ！！」

夏樹はリュックを背負いながら叫ぶ。

「こっちもいいわよ！」

夏樹の隣にいたミリアが答える。

夏樹たちは、村を出発し、村人たちを救うための旅に出ようとしていた。

「本当に大丈夫なのか？」夏樹は不安そうに呟く。

夏樹は、村を出て、街道に向かう道中、ミリアに何度も同じ質問をしていた。

「しつこいな～。大丈夫だって言ってるでしょ？あたしに任せなさいって！！」

ミリアは呆れたように言う。

「でも、相手は魔女なんだろ？お前、魔法なんて使えるのか？」

夏樹が尋ねると、ミリアは胸を張って答えた。

「あったりまえじゃない！！あんたみたいな一般人と一緒にしないでよね」

ミリアは得意げに話す。

夏樹はその言葉を聞いて安心した。

「それじゃあ、出発しようぜ！」

夏樹は、ミリアに声をかけて歩き出した。

「ちょっと待った！！」

突然、ミリアは夏樹を呼び止める。

「何だよ？」

夏樹は不思議そうに振り返ると、ミリアはニヤリと笑いながら言った。

「夏樹、忘れ物だよ」

「えっ？」

夏樹は、自分の荷物を確認するが、何も忘れていないことに気づく。

「何か忘れたか？俺……」

夏樹がそう言うと、ミリアは夏樹に向かって手をかざす。すると、彼女の手からは小さな炎が現れた。

「うおっ！！なんだよ！？」

夏樹は驚いて飛び退く。

「ほら、これでいい？」

ミリアは悪戯っぽく微笑むと、炎は消えた。

「びっくりした～！！いきなりそんなことするなよ！！」

夏樹は心臓に手を当てながら抗議する。

「ごめんごめん。でも、これでわかったでしょ？」

ミリアは満足げに言う。

「わかったよ。もう、行くぞ！！」

夏樹は、ミリアを置いて歩き出す。

「ちょっと待ってよ～」

ミリアは慌てて夏樹を追いかける。

「全く、しっかりしてくれよ……」

夏樹はため息をつく。

「ねぇ……」

ミリアは夏樹の隣に並ぶと、声をかける。

「ん？」

「これからよろしくね……」

ミリアは恥ずかしそうに呟く。

その顔には赤みがさしているように見えた。「ああ、こちらこそ」

夏樹も照れ臭そうに返事をする。

「…………あの二人、お似合いですね」

「そうだな」

エリスの言葉にレオンは答える。

「私たちも負けていられませんよ！！」

エリスは嬉しそうに微笑む。

「そうですね！！」

セリアも笑顔を見せる。

「それじゃあ、行こう！！」

夏樹は号令をかけ、皆はそれに答えた。

こうして、夏樹たちは村人たちを救うための旅に出た。