第10話 優雅な一日

俊輔はなぜか黒野とではなくミラと一緒に食堂にいた

俺のテーブルにはうどんが一つ置かれている

みんな大好ききつねうどんだ

そして彼女のそばには専属の護衛だろうか。ミラと同じ美しい金髪をした女性がいる

しかし目つきは鋭く俊輔のことを異物を見るかのように見ていた


それは当然周りからも視線が集まる

あることないこと勝手に言われている二人だが、俊輔たちが婚約者同士と言うのは誰も知らないようだ

その状況を見て俊輔は自分から小声でミラに話しかけた


「ミラさん、どうしてこの学校に?てっきりドイツに帰ったのかと…」


ミラが喋ろうと口を開きかけた瞬間後ろの女性が先に喋った


「ミラ様は2か月の間この学園に留学するご予定でございます」


俊輔はミラではなく後ろの女性が口を開いたことに少し戸惑った

さきほどから俊輔を見る目はあまり友好的ではないからだ

それをミラも悟ったのか女性を軽く叱責した


「レナ。あまりそう強く当たるな。別に今すぐに結婚するわけではない」


「ですが!」


再び何か言おうとしたその護衛の名はレナ

明らかにその態度は俊輔が嫌いなのだろう

ミラに静止されると、すぐに話すのをやめたレナ

彼女の態度にけおされて俊輔はレナから目をそらす

それと同じ時にレナはミラのそばを離れてどこかへ行った

(なんなんだあの女、俺がこいつに何したっていうんだよ…)


ミラはそれを見てすぐに空気を変えようとする


「それよりシュン殿強行して昼食をお願いしたのは訳があるんだ」


ミラは一口紅茶を飲むと豪華な招待状をテーブルに置いた

白い封筒に綺麗な赤い封蝋がついている

俊輔はそれを手に取り、ミラを見て言った


「こ、これは?」


ミラは手紙を見てなぜか頬が赤くなった

それを俊輔は告白か正式な結婚に関することかと勘繰り同じように赤面する

だがそんな妄想はすぐに終わった


「わ、私の誕生日パーティがあるんだ。次の土曜日に」


「へ?」


期待したものではなかった俊輔は肩をがっくり落とす

でもそう言われた時の気持ちは素直に嬉しく感じた

俊輔はあまり波長が合わなかったミラとこうして話したりできることが何よりも前進できたと思い自然に笑みがこぼれた


「あ、ありがとうございます!またパーティに行けるの楽しみです!」


「そ、おそうか?よかった。私はいいと断ったのだが父上が聞かなくて」


ミラは自分の年齢で誕生日を祝う催しをするのを恥ずかしく思っていたのだ

俊輔自身自分の誕生日はもう2年くらい何もしていない

ミラを見て、少し羨ましいという気持ちがめぐっていた


そうして楽しそうに話しているところにあのレナが昼食を持って戻ってきた

美味しそうなサンドイッチにデザートだろうか

昼食にしては軽い洋風の料理だ


「お待たせいたしました。ミラ様」


「とても美味しそうだ。ありがとうレナ」


「…………。」


先ほどからかなり変わった明るい雰囲気にレナが俊輔を鋭い目で見る


(ヒェ…)


俊輔はすぐさまうどんを食べる

うどんをほおばる俊輔を横目にレナはミラの耳もとに近づいた


「ミラ様。本当にこの男性大丈夫なのですか?品性のかけらも感じられません。私はミラ様が心配です」


い、いや聞こえてるー!


俊輔は自分は何も聞こえないというふりをしている

爆速でうどんを食べ終わりトレーと食器を返却してくるとすぐさま場を離れた俊輔


「な、なんなんだマジで…」


壁に片手を突きながらそう言っているとそこに北条が現れた


「あらご主人様もうお食事は済んだのですか?」


いつもなら見れない北条のスカート姿にドキッとする俊輔

自分自身心の中で北条に対する思いも日に日に強くなるのがわかっていた

そして俊輔は不覚にも北条とデレデレしているところをレナに見つかってしまう


「あ、あの男ぉ!ミラ様という婚約者(私は認めてないけど)がいるのになんでほかの女にデレデレしてんのよぉ!」


俊輔の波乱万丈な学園生活は今幕を切ったのだった!


















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