推理しない三流探偵アルフィー、ヴィクトリア朝時代を闊歩する

アーキテクト(@Arcnight101)/エンターブレイン ホビー書籍編集部

第一章 まだらの網

第一話「ワイヤード・ラブ その①」

企業のネットが星を被い

電子や光が駆け巡っても

国家や民族が消えてなくなるほど

情報化されていない近未来――

~『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』より~



 殺人は、割りに合わない。


 いかに「殺してやる!」と頭に血が昇ったとして。

 「必ずや、その命を絶ってみせる」との衝動が全身を駆け巡ったとしても。


 現実に人を殴り――人を刺し――人を絞め殺す、というのはどうだろう。


 想像しただけでも、とても耐えられる気がしない。

 「そこまでじゃない」――そう感じてしまう。

 人を死に至らしめるほどのエネルギーを保つには、現代イマは平和すぎる。


 加えて、仮に己の罪が暴かれたとしたら。

 殺人罪の極刑は「死刑」。

 罪の代償を、「死」をもって贖わなければならない――かも――しれない。


 すなわち、何かに命じられるわけでもなく。

 己が意志をもって「人が人を殺す」のは。

 人生すべてを天秤にかける「覚悟」がなければ、とても成しえないのだろう。


 だが。

 もしも、仮にもしもの話だが。


 絶対に罪が暴かれる心配もなく。

 ボタン一つで、人を死に至らしめられる殺人の手段があったとしたら?


 君はどうする?


 ボクはすでに答えを出した。

 だから――この物語は、始まることになった。

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