格付け

 ざっくりとこの世界の歴史について説明してみたが、こんなもんだろう。

 結局壊すのも作り出すのも人間ということなのだ。


 そして時はたち……西暦2070年、俺の目の前の訓練を見ているだけだ。


「フッ! ハッ! シッ!」


 機械らしからぬ金切り声のような音を立てて崩れていくロボットたち。回し蹴りからの右のパンチ、そして流れるような左ストレート、この一連の流れだけで大量の対人用ロボットが崩れていく。


 三山の動きは、見ているだけの俺でもかっこいいと感じてしまう様な、主人公の様な、美しい動きだった。


「おーい、田中ー! これ掃除しといてくれよー」


「おいおい、名前が違うじゃねーか! ちゃんと名前で呼んでやれよ」


「おっとっとぉ、そうだったそうだった! 悪かったな!!」


 そう言うと、そいつらは俺をあざ笑うような視線を向けながら、外へ出て行く。


(……くそ……俺だって……このスキルがeasyじゃなければ……)


 そう、easy、easyなのだ。


 前も言ったが、さっきから言っているeasyイージーやhyperハイパーというのは、ゲームで言うスキルのティア、ランクのようなものである。


 この世界はランクで支配されており、ランクが低ければ雑魚、ランクが高ければ、まるで貴族のような扱いを受けることができる。


 下から順に説明していくとこうなる。


easy《イージー 》

 戦闘においてはもちろん日常生活においても何の役にも立たないと判定されたスキル。



normal《ノーマル》

 戦闘においても日常生活においても平均的なスキル。



super《スーパー》

 戦闘において人を殺めることのできるスキル。 



hyper《ハイパー》

 戦闘において超人的な力を持つスキル。ここまでのものは世界でも有数。



master《マスター》

 戦闘において市を壊滅させるほどの力を持ったスキル。世界で10人しか存在しない。



abnormal《アブノーマル》

 戦闘において県を崩壊させる力をもったスキル。世界でこの領域に至ったものは存在しない。



 ……といった具合だ。



 しかもハイパー以上の能力者は兵士になれば、戦闘以外では死ぬことがないほどの絶大な金銭的支援を得ることができる。

 そう……この世界は無情にも、生まれた時から人間に勝ち組負け組が決まるような世界なのだ。

 そして……目の前で踊るように目の前のロボットをなぎ払う三山武は間違いなく勝ち組だ。





スキル名 超身体能力支援


所有者 三山武


スキルランク hyper《ハイパー》


スキル内容

 半径500メートルの味方と認識するものに使用者の身体能力の5倍のバフがかかる。この能力は他の能力と重複し、使用者から離れても10分間の間だけこの支援は継続する。この支援は使用者にもかけることができる。





 強い……ぱっと見ただけでも圧倒的だ。



 普通支援型は半径5メートルにいる間だけ、対象者の身体能力の0.5倍のバフ程度だ。そもそも支援型と言うのは圧倒的に数が少ない。


 支援型と言うだけでスーパーにランク付けされるほどだ。


 さらに自分にも支援できて、離れても10分間維持できて× 5倍だと?正直言ってイかれている。


 対して他の生徒の後片付けをさせられている俺はこんな感じだ。





スキル名 闘力操作


所有者 田中伸太


スキルランク easy《イージー》


スキル内容

 所有者の体の中にある闘力を自由に操作し戦うことができる。闘力が0になれば所有者は気絶する。





 ……まぁスキル内容だけ見れば悪いものではない。


 だがイージーなのだ。理由は主に2つ、1つはそもそも俺の中にある闘力が少なすぎる。


 闘力で肉体強化すれば30秒でぶったおれるし闘力を右手に集めて殴ってもハンマー程度の威力にしかならない。


 そして2つ目は闘力の効率の悪さである。闘力は闘力操作を持っている俺だけの力だ。


 中には魔力やら気力やらを操る力も世界に存在するが、その力を操れるスキルを持っていないとその力は体に宿らない。


 さて、それらを利用して魔力と闘力を比較すると、互いに100あって、10使う場合、魔力から放出された力の威力が50だとしたら闘力はたったの10にしかならない。攻撃するために使うエネルギーとその結果が割に合わないのだ。



キーンコーンカーンコーン



「おーい、お前らー! 体育の授業は終了だ! さっさと着替えて教室に戻れー」


 体育専門の先生である三井みつい先生が来た。

 その言葉をきっかけに次々と体育館を出て行く生徒たち、そんな中、三山は両腕に女を侍らせ退出していった。


 気がつけば体育館には俺1人だけ。三井先生ですら手伝ってもらえない。これが今の俺の学校での立ち位置だった。


「…………」


 無言で重い鉄くずを運んでいく。自分のみじめさに涙が出そうになった。

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