第11話ハヤトの職業
「そうだが、あんたらは盗賊かい?」
正直、金のない冒険者と盗賊なんてのは見た目の違いはほとんどない。冒険者としての身分証明書も、適当な冒険者を殺して、そいつから奪えば雑に偽装できる。
だから、冒険者は絶対に冒険者だと分かる冒険者ギルドで身分証を提示してパーティーを組み、寝る間も短剣を手放さず、パーティーの誰かが見張りをする。
俺の質問に焚火を囲んでいた彼らはこちらを眺める。おそらく、戦闘をするほどの実入りがなければ、冒険者として話すつもりだろう。
だが、こちらには……。
「ヒュー。中々の美人さんじゃん」
「そうだな、売れば高くつくだろう」
盗賊たちは立ち上がり、武器を構えた。全員で五人。アリアに二人任せるのはちょっとキツイか。
「アリア、実戦だ。一人任せる」
「はい!」
師匠や上司、先輩から何かを任されるというのは嬉しいものだ。アリアも笑って剣を抜き放った。
「おいおい兄さん。一人で四人相手はちと欲張りすぎじゃねえか?」
「そうでもないさ」
「……へ?」
盗賊の一人は驚いた表情を浮かべていた……のだと思う。俺は正面で剣を構えていた盗賊の首を自分の剣で斬り飛ばして、後ろに居たので見れていないが。
「な、いつの間に後ろに⁉」
「怯むな! もう一度囲め‼」
俺は勇者であって剣士や戦士じゃない。だから、かつての勇者パーティーの仲間で、純粋な戦士をしていたウォウには、単純な剣の腕や耐久力じゃ遠く及ばない。
一人やられたことで、今度は油断せず、三人の盗賊は全員で上段から斬りかかる。
「《火球》」
俺は手の平に現れた火種を上に向け、盗賊たちの上段からの斬りかかりと合わせる。
爆発が起き、俺の身体に盗賊たちの刃は触れることなく、その身体ごと吹き飛ばされる。
俺は《火球》の衝撃を背中で耐えて、素早く次の行動に移る。
ゴロゴロと転がっている盗賊の首を一人、また一人、合計三人分斬り飛ばす。
勇者であったのは過去の話。とすれば、今の俺の戦闘面での職業は魔法戦士だろう。
剣も魔法も使える万能職……と謳ってはいるが、その実、耐久力は低く、剣も魔法も両方の鍛錬が必要なため、純職業より錬度が低い、有体に言えば器用貧乏。
しかし、手札が多ければ戦略の幅が広がる。俺はそれはかなり大きなメリットだと思う。
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