第3話

「なんてこと!」

赤い着物の少女がメガネをしながらツルを手で掴みくるうー、と周囲を見渡す。刀剣乱舞がやや多めだが、和装の麗人達も負けていない。いや、鬼殺隊もいるので洋装も勝っている。

そこで、着物の少女が、いちばんあり得ない言葉を放つ。

「異世界キターーーーー!!!!!」

女、あの村ではもう立派な女であり。この世界ではまだ少女と呼べる女の子がまさかのジブン異世界来ました宣言。

 レイヤー・チュウは思う。

(え?!異世界じゃないよ?!成り切って唇からズレた位置にちょっと唇するっとしちゃったけど反応が本物だったしていうかあの村何帰れるかどうか超不安だった急に夜になるしスマホはでも使えるしっていうかお気に入りの会いたかったレイヤーさん達眩しすぎるああお化粧直したいけどこの子一体?!)

「なア、女!」

「はい!」

ついキャラになり切ってしまう。ナニコレ?!これ、もしかしてゲーム補正?!それともわたしがこのキャラを愛し過ぎてコスしてる間にこの子にこうして接してしまうだけ?!

「なんだ、その、異世界、ってのは?ここは撮影所だぜ?」

知ってるーーーーー!!!!!異世界知ってるーーーーー!!!!!個人的に好きなのはダンジョンとか成り上がりよりもスキル利用して自前の知識で美味しいもの作って繁盛するやつですわーーーーー!!!!!

 レイヤー・チュウは。

性別は伏せておこう。とりあえず。女でも男でも、コスの世界は化粧は、色々とこしらえることは、無限大だ。涙袋なんてよく考えられたものだ。胸を潰すという怖い言葉もあるが叶姉妹を見てみよ。

 さて。赤い着物の少女の解答は。

「異世界はですね!わたしが14歳で向かうはずの!たまゆらの世界です!」

「たまゆらの世界?」

「はい!もう、14は過ぎてしまいましたがどうやら日程や限界オタクや撮影はご遠慮くださいが分からない人がいるからと!」

「待って、え?ねえ、待って?夢デートの方ですよね?」

そこでやっと、チュウが現代の自身へと帰ってきた。

「あああああ!」

もう色んな感動で少女は鳴く。

なんとも艶っぽく、近くに発情期の人間がいそうものなら全てが振り返る、というかこの集会に集う全ての者がすべからく振り向いて少女を見た。

 そんな色っぽい声が少女から発せられたのだから。そして。

「今の声、Vtuberの」

「え、TikTokの」

「?YouTubeの」


いろは?

つむぎ?

あすか?


何が起こっているのか?


少女は言う。

「あのう、それ、全部、わたし、ひとりです!」

ある日、自宅のかまどから音が配信されてまして!

薪を焚いて私も配信してみたんですよ!

そしたら見事に!!!!!

「炎上して。」

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