第36話 百合さんと世界樹の栞



百合さんも最高学年の六年生


そうなれば当然下級生も沢山できました。


百合さん 面倒見が良いのですよ。下級生からとても慕われております


――――


百合さんが仲良くなった下級生を連れて世界樹広場へ遊びに来てくれました。


「こんにちは しおりです。 二年生です」


きちんと挨拶できるのは素晴らしいですよ。

初めましてですね。しおりさん(仮名)


「本当にきてくれました。ふしぎです」


「本当でしょ 

 この椅子に座って『お話ししたいです』ってお願いすると会えるんだよ」


私に会わせたくて連れてきてくれたようです。

でもそんな『お願い』をしなくても普通に連絡してくださいな。

直接部屋に来てもらっても良いのですよ。


「でもいつも会えますよ。雪ねえさまはすべてわかっていますからね」


なんですか その謎の信頼は・・・



「私も雪ねえさまとよんでもいいですか」


もちろん良いですよ。確認するとは律儀な子ですね。



「今日は雪ねえさまにお願いがあって来ました」


お友達になって欲しいのですか 良いですよ。

お姉さんとお友達になりましょう。



「どうして分かったのですか」


お姉さんに声をかけるだけでも勇気を振り絞っていましたよね。

細かなことでも確認を取るのですから自分に自信が無いのでしょう。

顔色を伺いながら行動する子だと感じました。


どうして分かったのかなんて簡単です。聖女の・・ではなく


そんなことは二の次ですよ。



「お姉さんがお友達になりたかったからですよ」


しおりさん 固まってしまいましたね。



「しおりちゃんは人と話すのが苦手なの

 女子の中でもお友達を作れなくて困ってたから」


それで百合さんは助けたかったのですね。



「雪ねえさまのお友達になれば女子の人気者になれるの」


小学生女子の中では私も有名なようですからね。

そう言う話で有れば・・・少し待っていてくださいね。


安堵の表情を浮かべるふたりを待たせて自室へと急ぎます。

ちょうど良い物を作ったのですよ。


――――


おまたせしました。しおりさんにはこれを差し上げますね。


世界樹の葉から作った葉脈標本 それを加工して栞にしました。

『世界樹 祈りの葉』と文字も入れさせて頂きました。


「世界樹のしおりなんてもらっても良いんですか」


百合さんの方が驚いてどうするのですか


人見知りのしおりさんが百合さんのお友達になったのです。

本が好きで図書室で出会ったのでしょう。



栞 使って頂けますか


もちろん百合さんの栞もありますよ。

もともと百合さんにあげようと作りましたからね。



「お姉さんとおなじです。読書だいすきだからうれしいです」


喜んでもらえました。優しい百合お姉さんと一緒ですよ。

これを持っていれば私とお友達だって分かりますよ。



「雪ねえさま このしおりにもアミュレットみたいに・・・」


そう来ると思っていましたよ。大丈夫です。

エリザベス先輩の『祝福』を見て恥ずかしくない方法を考えました。


百合さんも初めて見る力ですよ。私だって初めてですからね。


栞をテーブルに置いて、手を組んで祈りの姿勢



  『世界樹のご加護がありますように』



どうでしょうか 祈るだけでしたが納得して頂けましたでしょうか

これなら恥ずかしくないです。羞恥心耐えられます。


聖女の力『加護』ですよ。この場合世界樹のご加護ですが・・・



「すごいです。雪ねえさま 聖女さまみたいです」


しおりさんから想定外の言の葉が・・・


もしかしてやっちゃいましたか・・・

百合さんの後輩で読書が好きだと言うことは・・・ あははは


全力でごまかしましょう。



「世界樹にお祈りしただけですよ」


「そうです。『聖女の術』とはちょっとちがいます。

 聖女さまとはちがうとおもいます」


百合さんの援護は・・・援護になっているのでしょうか



「お姉さんは『聖女の術』をしっているのですか」


ほら墓穴を掘りましたよ。助けなければいけません。


百合さんは異世界の物語を沢山読みましたからね。

『聖女の術』にとても詳しいのです。

百合お姉さんはすごいのですよ。



「お姉さん てんさいです」


何とかなりました。


聖女『ユキ・オトナシ』危ないところでございました。




数日後


世界樹広場にひーくんと女の子が一人


女の子は小学校低学年ですね。百合さんではありません。


浮気ですかっ 若い女の子が良いのですかっ


お姉さん許しませんよ。


まずはOHANASHIですね。



――――



「雪ねえさま 頼みがあってきたんだけど」


ひーくんが直接お願いに来るとは珍しいですね。


それよりも女の子の紹介をしてくださいな。

場合によってはひーくんにOHANASHIがございます。


「友達の妹のみどりちゃん」


ほぅ 友達の妹さんに手を出したのですね。

許しませんよ。

冗談ですけど・・・ 冗談ですよ。


みどりさん(仮名) 初めましてですね。

線が細く大人しそうな子

みどり色の髪留めが鮮やかです。


聞けば病弱であまり外で遊べなくて友達ができにくい女の子

ひーくんのそばでモジモジしています

きっと友達からも仲良くして貰えるようにお願いされているのでしょう。

ひーくんはそんな男の子ですよね。


みどりさん お姉さんとお友達になってくれませんか。



「どうしてわかったっ」


驚愕のひーくん ・・・ 既視感


友情を大切にし、後輩想いのひーくん 立派ですよ。



本当にもう・・・ 似たもの夫婦でございます。


協力いたしますよ。



―――



明日は休日ですね。


みどりさん 

明日、お姉さんのお部屋に遊びにいらっしゃい


本もいっぱいありますよ。

ひーくんお兄さんに連れてきてもらいなさい。



ひーくん 明日みどりさんを連れてきてね。


そしてこれが重要です。



『百合さんを誘って一緒に来てくださいな』


ひーくんからお誘いするのですよ。

みどりさんのこともお話するのですよ。


きっと良い事がありますからね。

みどりさんのためにがんばりなさい。


みどりさんのためですからね。



言葉にはならないけれど嬉しそうなみどりさん


さあ ひーくん頑張って



―――



百合さんのお母さま経由でご連絡

あえてでご連絡


ひーくんが素敵な提案をしてくれました。

しおりさんのお友達が増えるかも知れませんよ。


しおりさんと一緒にお部屋に遊びに来てくださいな。


詳しいことは『ひーくんからお誘いがある』と思いますのでそちらで聞いてくださいな。


可愛い後輩さんの為ですよ。


頑張りましょうね。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る