恋に恋する乙女たち ～恋する小学生とじゅうななさいの聖女～

第7話 恋する街角【愛してる】

せっかく商店街まで来たのです。いつもの喫茶店に立ち寄りましょうか。

美味しい日本茶を出していただけるお気に入りのお店があるのです。

ちょっと奥まった場所にある昔ながらの店構え

風格のあるドアを引くとベルが「ちりん」

「音無さん　いらっしゃい」

「こんにちは　おじさま」

「お友達が来ていますよ」

誰でしょうか。

「おゆきせんぱぁい　こっちですよぉ」

あなたでしたか・・・

もう少し静かにしましょうね。

後輩のアリスさん

服装も含めて『不思議の国のアリス』な雰囲気なのですが騙されてはいけません。

『無敵のアリスちゃん』の異名を持つ天真爛漫な後輩です。

ある意味、不思議なアリスちゃんではありますが・・・

私を『ぽんこつさん』と平気で評する後輩です。

彼女の武勇伝はまた語る機会があるかと存じます。

引きずられるようにして相席させていただくことになりました。

アリスさん以外に女性がおふたり　活発そうな方と大人しそうな方

初めましてですね。

苦笑いしているところを見るとアリスさんをよくご存じのようです。

テーブルには小さめの急須と湯呑が三つずつ

このお店は自分で煎れることを楽しめます。

今日の茶菓子は羽二重餅のようですね。

「掛川の良い茶葉が入りましたよ」

私の好きな銘柄をよくご存じです。おじさまのお勧めであれば間違いないでしょう。

「それでは掛川の茶葉で煎茶セットをひとつお願いいます」

注文してようやくお話ができそうです。

◇

「先週、劇を見に行ったんですよ」

アリスさん　話題より先にお友達を紹介していただけませんか。

戸惑う雰囲気を読んで自己紹介いただきました。

ふたりともご趣味で演劇をなさっているとのこと。

先週は発表会だったそうです。

「音無先輩のお話はアリスさんからよく聞いています」

・・・不安しかないのですが

私が殿方に対して冷たいからと「絶対零度のお嬢様」の二つ名を流布しようとした張本人です。

全力で阻止させていただきました。

私は冷たいのではないのです。緊張してうまく話せないだけです。

「『あの』音無先輩と会えるなんて光栄です」

アリスさん　やはり良からぬ事をお話ししていますね。

怖い先輩ではないですよと弁明させていただきました。

どれだけ信じていただけたでしょうか。不安だけが残ります。

演劇をされているからでしょうか。

耳馴染みの良い澄んだ声をされています。羨ましいですね。

「そうなんです。　声が美人なんですよ」

いえいえ普通に美人さんだと思いますよ。

アリスさん他意は無いとわかっていますが、もう少し言の葉を選んで発言しましょうね。

◇

発表会にて観劇の後、反省会という打ち上げ会にも参加させていただいたようです。

うちのアリスがご迷惑をおかけしております。

その反省会にて興味深い催しがあったようです。

私たち付近でも時折行われる『愛してるゲーム』

ご存じの方も多いと思いますが、あえてご説明

ふたり一組になり、お互いに視線を合わせます。

そして交互に「愛してる」と呼び合う簡単なお遊びでございます。照れたり視線をそらしたら負けです。

ちなみに私は現在連敗中です。また対戦相手が殿方とは限りません。

それ以上の質問はお互いのためになりません。やめておきましょう。ふっ（悲しい目）

このお遊びの中の出来事です。事件です。

普段から大人しい殿方とモデルのような華やか美人さんの対決

目を合わせ交互に「愛してる」を繰り返します。

「愛してる」「愛してる」

「愛してる」「愛してる」

「愛してる」「愛してる」

・・・・

通常、男女で行いますと数回で勝敗が付くのですが、今回は様相が違ったようです。

演劇魂に火が付いたのでしょうか。

「心から愛してる」「俺の方が愛している」

「ずっと前から愛してる」「今まで言えなかったけど愛してる」

「嬉しくて涙が出そうだけどもう一度言わせて愛してる」「何度でも伝えるよ愛してる」

　・・・・

セリフにアドリブが付き延々と盛り上がるふたり

お遊びではない甘い雰囲気に耐えられなくなった周りが止めて引き分けとなりました。

周りが耐えられなくなるほどの甘さをぶつけ合うお姿

たしかに目の前で見せつけられたら何かが折れそうです。

それ以降、宴の雰囲気も微妙な甘さを残しておりまして

「そう言うことなのですよね」「ここは大人の対応を・・・」

となんとなくふたりきりになるよう仕向けて散会の流れとなりました。

そして後日どのような結果となったのか興味津々で詰め寄ったのですが

喫茶店にて「盛り上がったね」「楽しかったね」で解散したそうです。

え～～～～～っ　

そこはお付き合いする流れでしょうとアリスさんは憤慨しておりました。

私も同感です。ラブコメの神様はきちんとお仕事してください。

お約束はきっちりと回収してこそ神様のお仕事なのです。

今からでも遅くありません。

「実はみんなには隠していたけれど・・・」と言う流れでお願いします。

友人の恋は蜜の味

恋に恋する乙女の大好物です。

この日、恋バナのできる友人がふたり増えました。