闘病しているわけでもないけど、別に争ってもいない人の独り言。

西木 草成

プロローグというよりも、前書き

 私は、うつ病患者である。


 それ以上でもなければ、それ以下でもない。どこにでもいるような、精神疾患を患ったただの二十四歳の男性である。


 以前にも、たびたび近況ノートやら勢いで書いたもので名前を出しているため、私の近辺で知っている人がいるのかもしれない。なので、こうやって詳しく、事細かにそして公で自分自身のことを赤裸々に話す機会というのは、今回が初めてなのかもしれない。


 さて、繰り返すようだが、私はうつ病患者である。


 障害手帳は二級。これがどのようなものなのかというと「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」ということらしい。自分に当てはまっているのかと言われれば、確かに当てはまっているのかもしれないし、ところどころ大袈裟なんじゃないかと思うこともある。


 だが、確かに言えることは。自分はもう、まともな人間には戻れないということである。


 今、このエッセイを近くのスターバックスカフェでホワイトモカシロップを追加したバニラクリームフラペチーノ、トールサイズを片手に、美人な店員に勧められるがままにアメリカンワッフルを頬張りながら書いているわけだが。自分の周りで喋っている人、何かパソコンに向き合っている人、受験勉強と称して友人と茶を飲んでいる若い高校生たち。そのどれもが、みんなまともで、私一人がまともじゃないのである。


 今、こうしてパソコンと向き合っている時間ですら、休みなく頭の中で希死念慮という魔物がトグロを巻いてこちらを睨みつけているのである。


 なぜ、自分がこうなってしまったのだろう。


 頭の中では、そんなことを考えるばかりである。周りの友人は、つい先日製薬会社の研修で東京に向かったし、かたや別の人間はドーナツ屋で一人頑張って一つの店を任されながら一生懸命に働いている。みんな、周りは立派で、本当に拝みたくなるくらい素晴らしいのに、それを当たり前のことと言って成し遂げている。


 それに比べ、自分といえば。


 朝、まともに起きることさえできない。掃除も洗濯も、炊事すらまともにできない。できることといえば、無駄に増やした本で自分を生き埋めにすることと、駄文を吐き出すのみ。最近はそれすらできていないのだから余計にタチが悪い。


 就活はしているが、こんな自分を雇ってくれる会社などありはしないだろう。障害者雇用を利用してはいるものの、果たしてうまく行くかわかりはしない。


 家族からは疎ましく思われてる。当然の話だ、死にかけの虫を見かけたら邪魔に思うのと同じように、死にかけの死に損ないがそこにいれば気分のいいものではないだろう。


 どこにも居場所がない。


 いっそ、鏡石の公園で首を括って死ねたらどれだけ良かったのだろうかと常々思う。


 だが、そんな自分にも最後に取り残された居場所がここ。『カクヨム』『小説家になろう』だった。自分の元の名前よりも、『西木 草成』でいれば、少しは息がしやすく感じる。


 そんな最後に残った砦で喚く、最後の足掻き。


 これは誰がなんと言おうと『作家』の『西木 草成』の書く、出来損ないの自分を書く最初で最後のエッセイである。

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