裏切られて人間不信になった私は二度と裏切られないようにスキル『キャラメイク』で絶対に裏切らない美少女を作りまくるはずが最初にキャラメイクした子がヤンデレすぎて作らせてくれない

シャルねる

出会い

 約五か月前、私は15歳になりスキルを授かった。

 そのスキルは人を作れるスキルだった。……私は危ないと思った。こんなスキルをもし国や貴族様に知られたら、戦争が起きると思った。だから、私の恋人である人と、家族、親友にしか話していなかった。


 最初はスキル至上主義のこの世界でスキルを隠して生きていけるのか不安だった。……でも、そんな不安はすぐに消し飛んだ。

 楽しかった。幸せだった。……ただ、その幸せは偽りだった。

 

 ある日突然私は、街の衛兵に取り押さえられた。

 そしてそのまま領主様の家に連れられると、私の恋人と家族、そして親友だったはずの人達がいた。

 そいつらは私のことを確認すると、私本人であると証言をし、金を貰って領主の家から出て行った。

 理解が出来なかった。何が起きてるのか分からなかった。……ただ、そんなものは嫌々でも理解させられた。

 領主が私のスキルを知っていた。

 あいつらしか知らない私のスキルを知っていた。……すぐに理解した。売られたんだ。金に目が眩んだ奴らに売られたんだ。

 私の心は何かの間違いかもしれない、と訴えかけてくる。でも、私の理性はそれは間違いなんかじゃないと確信している。……だって、あいつらは私の顔を見て、金を貰った瞬間、笑っていたんだから。


「お前は人を作るスキルを持っている、間違いないか?」


 領主にそんなことを聞かれる。……ただ、私は何も答えない。……答える気力がない。


「おい、領主様の質問に答えないか!」

「……よい。神官を呼んでこい。そうすればすぐに分かる。……それまでは牢にでも入れておけ」

「はっ」


 私はそんな領主の命令で、領主のそばに控えていた騎士によって地下に連れていかれ牢屋に放り込まれた。

 私を牢屋に放り込んだ騎士はすぐに地下から出て行った。


 地面が固くて痛い。腕が痛い。……何より心が痛い。


 これから、どうしよう。……このままじゃだめなことは分かる。……このままじゃ奴隷のように使い潰されて死ぬ未来しかないから。ここから逃げなくちゃだめだ。

 でも、どうやって? 私のスキルは強力だとは思うけど、戦闘系のスキルじゃないし、そもそも使ったことがないからどんな人を生み出せるのかも知らない。


 ……今、生み出してみる? いや、それでもし弱かったら? ここから脱出できるほどの力がなかったら? 私の力がバレるだけだ。……あぁ、でも神官に聞きに行くとか言ってたから、バレるのは時間の問題なのか。……だったら、一か八か、ここで掛けるしかないのか。


 最悪、生み出した存在が弱かったら、殺してもらおう。……使い潰されて死ぬよりは100%ましだ。


「スキル、キャラメイク」


 強くて、私を第一に考えてくれて、私以外はどうでも良くて、私をこの場から助けてくれて、絶対に私を裏切らない……そんなイメージをしながら、私はそう呟いた。

 イメージに意味があるかは知らない。だってスキルを使ったのなんて初めてだから。……だから、ただの気休めでしかない。


 すると、私の目の前に光が集まり始め、その光は私と同じくらいの身長の人型となり、銀髪で、赤い瞳を宿した美少女が生まれた。


 私は絶望した。こんな子じゃここから脱出なんて出来るわけが無いと思ったから。


「マスター? 大丈夫ですか?」

「……ここから出して」


 無理だと分かってる。

 それでも、そう願わずにはいられなかった。

 だから、私は思わずそうつぶいた。……それはその子に向かって言った言葉じゃなかった。……ただ、その子は自分に向けられた言葉だと思ったのか、私に許可を求めてきた。


「マスターの願いならば、叶えるのは当然です。ただ、血を貰ってもよろしいでしょうか?」

「……血?」

「はい」


 ……スキルは精神状態に依存するって聞いたことがある。

 私の精神状態が今こんなんだから、スキル、キャラメイクが失敗して、この子も残念な子になっちゃったんだな。

 そう思った私は今すぐこの子に謝りたかった。

 だって、私が勝手に生み出して、役に立たないと分かったら、勝手に絶望するって……最低だ、私。


「好きにして」


 せめてもの償いとして、私はそう言った。


「はい、ありがとうございます」


 その子は笑顔でお礼を言うと、私の手を取り、指に噛み付いてきて、血を吸い始めた。不思議と痛みはなかった。

 そして暫く血を吸うと、段々とその子の白い肌に赤みを帯び始めてくる。

 

「……ねぇ」

「は、はい!」


 私がそう声をかけると、その子は驚いたようで、血を吸うのを一気にやめ、大きい声を上げた。地下室だから、その声は反響した。


 私が声をかけた理由としては、なんかこの子が興奮してるように見えたから。……でも、さすがに気のせいだと思う。……というか思いたい。だってこんな状況だし、いくら私が作り出した存在とはいえ、この状況で興奮されるのはちょっと……


 いや、でもこの子のおかげで少しは気が楽になってきた。

 だから、私がその子にお礼を言おうとしたところで大きい音と同時に、牢屋の鉄格子が綺麗に吹き飛んでいた。


「え?」

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