第16話 あなたしか居ない

 小花にメールでいきなり「優吾くんの写真が欲しい」と言われた時は正直驚いた。

 スマホのフォルダを探しても俺の写真は殆ど残っていない。あるのは全部数年前の写真ばかりだ。この頃とは顔立ちも身長も変わってしまった。俺は仕方なく、お風呂上がりの状態で自撮りをして小花に送った。

「保存したよ!」

 あっという間に来る返事。小花は俺の自撮りなんかを保存して一体何がしたいのだろうか?

 この時は課題で疲れていたため、あまり深く考えることができなかった。


「優吾さん、私はどうすればいいですか?」

「優吾さん、大好きです」

「優吾さんは私のこと好きですか?」

「優吾さん、愛しています。」

「優吾さん、お願いですから返事してください」

「優吾さん、また他の子と話しているのですか?」

「私は優吾さんを世界で1番愛しています」

 ゆっくり休んでいる時に突如スマホから通知音が鳴り響いた。

 通知音は途切れることなく鳴り響いている。俺は恐る恐るスマホを開いてみると、彩夏から大量のメールが届いていた。


「ひぃ…!」

 俺は思わず小さく悲鳴を上げてしまう。その姿は酷く情けないものであったに違いない。


「ごめん。疲れて休んでいた」

 俺が短く返すと、すぐに彩夏から返事が来た。

「良かったです。てっきり他の女の所に行ったのかと思いました。」

 俺は彩夏のことが怖い。もちろん、彩夏のことは嫌いではないし、普段は可愛らしい後輩だ。けれど、ふとした時に見せる表情が、春夏と紗枝、沙友理、小花に対しての敵意が堪らなく怖い。

 このままじゃ春夏達にも危害が及ぶかもしれない。


 そうなってしまわないように彩夏をどうにかして安心させねば…。


 まさかこの後、とんでもないことになるだなんてその時の俺は思ってもみなかった。

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