第6話 親父襲来


「なんで日本に?」

 俺はスマホでダンジョンの検索を始めた。


 調べてみるとちょうど一年前辺りにダンジョンと呼ばれる存在が政府から発表された。しかも全国一斉にだ。それまで秘密裏に動いていたギルドなるものの発表、そして民間人への説明や所属の方法などがこの一年の間に素早く成されていた。いまは一般市民もギルドを通せばダンジョンに入ることができ、異世界と一緒でドロップ品を換金できるようになっていた。


「うそだろ?帰ってきたのに」

 いや、これで俺が少しくらい若返っていたって不思議ではなくなったのか?

 と言うかこれ、異世界は関係ないよな?

「て、転移」


 目の前にはいつも通りのデカい家。

「ルー!!いるか?」

 ドアを開け、ルーを呼ぶと、

「なんだい!うるさいねぇ!」

「おまっ!また下着でウロウロと」

「それよりなんだい?もう恋しくなったのかい?」

「違う!日本にダンジョンが!」

「あぁ、帰ってきたのかい。ダンジョンねぇ」

 ルーは椅子に座るとタバコに火をつける。


「ダンジョンは前からあったのさ。それを発表しただけだろ?」

「んじゃこっちの世界とは関係ないのか?」

「んー、それは知らないわ。でも昔からあるからそんなに気にすることはないんじゃない?妖怪なんかもモンスターだし、ダンジョンを偶然みつけた人間が語ったものでしょうよ」


 そう言われればオーガなんかは鬼だし、ゴブリンは餓鬼か。

「知ってたんなら教えてくれよ」

「私もこの前知ったもの。教える暇なんかなかったさ」

 タバコを燻らせそっぽを向く。


「はぁ、分かった。突然来て悪かったよ」

「いいのよ、それより十五歳で帰って大丈夫だったの?」

「まぁ、なんとかなるだろ」

「なんとかねぇ、まぁ気をつけるこったね。モンスターより人間の方がよっぽど厄介だから」

「だな。それは肝に銘じとくよ」

「それじゃあね」

「じゃあな」


「転移」


 自室に帰って来てからは、ビールを片付けてパソコンを開く。

「こんなに沢山ダンジョンがあるのか」

 ダンジョンマップと言うサイトで見ると、一県に三つから五つほどダンジョンがある。

 そしてダンジョンブレイクと言う魔物の氾濫が一回起きていた。死傷者は六百人程。


「俺がいない間に」

 いや、俺がいても何もできなかったが、今の俺なら……いや、一人では厳しいな。だが、ダンジョンに潜る専門の人達もいるし、ニュースでやってた、Aランクなる人達もいるのだからそこまで緊急ではないのだろう。


 さて、とりあえず調べ物もしたし、さっき片付けたビールを開け喉に流し込む。

「クゥーっ!考えても分からんな」

 俺もこちらでギルド登録しておくか。


「ふあぁあぁ、よく寝た」

 久しぶりに飲んだ翌朝は二日酔いも無く快調だ。歯を磨き、シャワー浴びてサッパリすると、軽くストレッチしながら考える。

 昨日調べたところによるとギルド登録はマイナンバーがいるらしい、あるにはあるが今の顔からかけ離れている。せめて二十歳くらいにならないといけないな。ルナディアだと十分の一で時間が過ぎるからあっちで五年過ごせばこっちだと半月ほどだな。


「親父になんて言うかだな」

 お袋は早くに亡くなっていて家族は親父が一人。あと半年待ってもらうか。

“ドンドンドンッ”

『小太郎!開けんかコラっ!』

「げっ!早すぎるやろ、いま開けるわ」

 玄関を開けると親父が涙を流して立っていた。

「……」

「……」

「誰じゃ?」

「おい!俺は小太郎だ!」

「ん?よく見ると小太郎じゃが、お前若くなったんか?」

「そうよ、いまは十五歳くらいになった」

「はぁ??」

 そりゃ信じられないわな。

「まぁ、上がらんね」

「お、おう。お邪魔します」


 そして、懇々といままで起きたことを語る。

「なんじゃそりゃ?」

「だろ?俺も最初はなんじゃそりゃっておもったわけよ」

 ビールを開けつつ親父と笑い話になった。

「しかし歳を吸い取る魔女ねぇ、ワシの歳も吸い取ってくれんかのぉ」

「は?ふざけんな!親父と穴兄弟になりたくないわ!」

「ブッ!こ、こっちだってそれはいやじゃ」

「「だーはっはっは」」

 二人で笑い転げる、親父にわかってもらえて良かった。


「んで小太郎はこれからどうするんだ?」

「あっちの世界に半年いるつもりだ。そしたら二十歳くらいになれる」

「ほう、時間が違うんか?」

「そうだ。そうすればこっちとそこまで差がなくなるからな」

「ほっか、ならきぃつけろや。死んだら許さんぞ」

「分かっとる。これでも強いんだぜ?」

「なーにを馬鹿いっとる、強くても死ぬときゃ死ぬ。だから絶対生きて帰って来い!」

 親父に背中を叩かれ気合が入る。

「おう!親父もな!」

「それじゃなくてもちょくちょく帰ってきたらええ」


 親父は朝一で来て、昼過ぎには帰って行った。アパートの方はお願いしといたから大丈夫だ。


「んじゃこっちの物をアイテムボックスに入れてから行こうかね」

 アイテムボックスは時間が停止している為腐らない。ルナディアの飯も不味くはないがいまいちなんだよな。やっぱり米がないのもキツい。

 俺は銀行に行って貯金から百万を下ろすと、百均や牛丼屋、ハンバーガー屋を巡り、スーパーで米、味噌、醤油を買い込んだ。


「ま、足りなくなったらまた来ればいいだろ」

 

 そしてルナディアに転移した。

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