魔女の弟子ー童貞を捨てた三歳児、異世界と日本を行ったり来たりー

あに

第1話 童貞と一緒に


「じゃあ」



「あぁ」


 雨が止まず、傘を持ったまま会った俺は彼女の顔もまともに見れずにフラれた。

 何がいけなかった?急になんで?

 頭の中を駆け巡るのは楽しかった時の思い出だけ。


 嫌だと縋って泣いて繋ぎ止めとけば良かったのだろうか。


 

「こんなもんか……」


 大学からの付き合いだった。


 笑った顔が好きだった。


 嘘が下手くそなのに今度は嘘じゃなかった。


 

 一人残された俺は……。



 …………


 ……


 …



「ん……いてて、頭が痛い」

 昨日はやけ酒飲んで……酒が無くなったから買いに行って……。


「えっ……」


 横には見知らぬ、いや、知ってる顔だ。昨日コンビニの帰りに……。


「……はぁ、おはよう」

「あ、おはようございます?あれ?声が」

 俺の声が高い?と言うか幼く感じる。


「あはは、ちょっと吸いすぎたね」

「吸いすぎ……あれ?なんでおっぱ…い」

 隣の女性は裸だった。

「あれ、覚えてないのかい?『俺はまだ童貞だぁ』って叫んでたのはどこの男だったっけ?」



 ……思い出して来た。


 コンビニで酒を買った俺は公園のベンチで酒に酔っていた。

「お兄さんは飲み過ぎかな?」

 俺の目の前には黒髪でつり目気味の美女、いや、美魔女かな?が俺の顔を覗き込んでいた。

「私にも頂戴よ」

「んぁ?いいよー!さぁ飲みたいだけ飲んでくれ!」

 酔った俺はそんなことを言いながら横に座った美魔女に酒を渡し、愚痴り始めたんだ。


「じゃあその女に未練はないんだね?」

 妖艶な視線で俺に語りかける美魔女。

「んなこたぁない!俺はいまだに童貞・・だぁー!」

 

 …………


 ……


 …


 と、大声で叫んだ…んだった。

「つまり俺は貴女と」

「昨日は激しかったわ」

 鳥肌が立つような仕草で裸の美魔女……じゃなく美女?

「あれ?昨日より」

「あぁ、若返ったわよ」

「ああ、やっぱり。え!なんで?」

「君の若さを貰ったからよ」


「えぇえぇぇぇ!って、俺……なんかおかしいと思ったら手が小さいし、声も、身体も」

「んー、三歳児くらいかな?」

「吸いすぎぃーーー!」

「あら、あっちの方も可愛くなっちゃって」

「見んなよ!」

 掛け布団に包まると服を探す、が着れるわけがない。

 辺りを見回すと見慣れない部屋だ。


「まぁ、こんなところで騒いでもしょうがないじゃない。コーヒーでもいれるわ、ミルクが良いかしら?」

 裸の美女は下着を着けると立ち上がる。

「ば、馬鹿にすんなよ!それよりどーすんだよこれ!」

「さぁ?コーヒーでいいのね」

 スタスタと歩いて行く女。

 俺はTシャツを探して着るが、ブカブカ。

「くそっ!これしかないか」

 Tシャツの裾をもってベッドから降りると女の後を追った。


 トテトテという足音に違和感を感じる。見るもの全てが大きく見える。

「なぁ!元に戻せよ」

 下着姿で煙草を吸い、ヤカンに火をかけている美女。

「無理よ。それより可愛いのが見えてるわよ」

「ん!」

 たくし上げていたTシャツを下ろすともう一度言う。

「戻せよ!これどーすんだよ?!」

 頭の中はハテナがいっぱいで聞きたいことだらけだが、これが一番問題だ。

「っフゥー、まぁそこに座んなさいな。まずはお互い自己紹介といこうじゃないか」

「ーーはぁ、分かった」

「そう、良い子ね」


 俺も落ち着こうと指さされた椅子によじ登り座る。周りをしっかり確認すると思ったよりデカい部屋だな?

「さて、コーヒーだよ」

「お、おう」

 テーブルに置かれたコーヒーを見ると、向かい側に自分のコーヒーを置いて座る女。


「私はルー、貴方の名前は?」

 自分の事をルーと呼ぶこの女は灰皿に煙草を押し当て、カップに口をつける。

「俺は風真小太郎カザマコタロウ、二十二歳!」

「ならコタローね」

 三歳になったとか知らんし!と言うか年齢はスルーですか、そうですか。


「コタローね。それで、あなたの身体は若返った。私も若返った。Win-Winな関係よね」

 フッと笑うルーは美しいかった。

「いやって、納得いくかよ!俺はまだ若かった!」

「フフフッ、昨日吸いすぎたからしょうがないか、私の魔法は時間を使うからね、コタローの時間と私の時間を同時に消しあったから元に戻すのは無理。だからコタローが一人前になるまで面倒見るわよ」

 

 一応、真面目に聞くとルーは魔女らしく、若返る為に本当は年寄りを探していたらしい。が、そんな時俺があまりにも不憫にみえてやらかしてしまったらしい。

「いや、魔女?やらかした?いやいや、現代日本で魔女とか……ないよな?」

「あるわよ」


 あるらしい。

「そなんだ。……俺はこの後どうなる?一応会社とかも」

「無理よ、だってその身体だもの。しかもここは地球と違うし」


 俺は耳を疑った。地球じゃない?


「いやいや、じゃあどこなんだ?」

「地球で言ったら異世界かな」

 異世界?アニメであるやつか。それなりに見たことはあるが、こんな形でくるとは思わなかったな。


「異世界か……。もぉ、まじかよ!お腹いっぱいだわ!頭おかしくなるぞ!」

「慣れるわよ。フフフッ」

 俺は頭を抱えてしまった。


「で?どんな世界なんだ?」

「んー、一言で言えばファンタジー?魔法もあるし、モンスターやダンジョンもあるわよ」


「はぁ?」

 俺はどうなるんだ?


 

 

 

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