第15話 息子 孝之の婚約者と対面

「お父さん? どうしたの」

「あ、いや。青空を見ていたら、こんな空の下で結婚式が出来たらいいなぁと思ってさ」

「え~! 私とおんなじ事を考えていたの? やっぱり親子だね」

 娘は嬉しそうに笑った。やがてホテルに着いた。時計を見たら約束の五分前だった。

 やや緊張しながらも、ホテルのロビーでレスランを予約してある事を告げた。

 席に案内されると既に息子と息子の婚約者が待っていた。


 孝之は俺達に気づいたのか席を立って会釈をした。

 それと同時に婚約者も、やや緊張気味であるが深々と頭を下げた。

 互いに会釈して席に着くと孝之が改めて紹介してくれた。

「陽子さん、父と妹の香織です」

「初めまして久留米陽子と申します。もっと早くご挨拶したかったのですが、遅くなり申し訳ありません」

「いいえ、遠い所をお出で下さいまして、孝之の父、洋輔と申します」

「私、妹の香織です。とてもお綺麗なお方で、兄には勿体無いくらいです」

 香織は思ったまま言ったつもりだったが、俺は相手の容姿を初対面で語るのに抵抗があった。

「おいおい香織、いきなりそんな言い方失礼だろう。まっ、宜しく頼みますよ」

「だって本当のことだもの。本当に綺麗なのだから」

 俺と娘のやりとりで少しは硬さも取れて来たのか、陽子の表情が柔らかくなった。

 孝之はこれから先の、結婚式の日取りまで予定について語った。

 陽子は緊張していたようで疲れただろう。孝之は気を使って簡単な挨拶だけで別れた。


 本来は結納してから結婚なのだが、最近はこの結納を省くことも多くなったようだ。

 そして仲人を立てないのも最近の結婚式だ。最近の若い者は結納や仲人って何に? と聞く。

 それと披露宴には、親戚も身近な者に限られ友人が大半を埋める式が多くなったのも時代の流れだろうか。

 俺の時は祖父祖母、叔父叔母は勿論、殆ど会った事もない親戚まで式に招待したものだ。


つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る