第9話

 学園が終わってからの放課後。

 僕とリスタのいるお店へとレゼがやってきていた。


「……?」

 

 何故うちのお店にレゼがいるのか……そんな疑問をその表情にありありと浮かべるリスタはそんな疑問を内に抱えたまま彼女へと紅茶を出す。


「……本当に地下が広いのね。表のお店とはまるで違うわ」


「まぁね」

 

 お店の地下。

 そこに広がる地下空間の中の一室である会議室に腰を下ろすレゼの言葉に僕は頷く。


「表の方にバカデカい建物を作ったら他のお店とかとのアクセスが最悪になるからね。僕は普通に街で買い物もするし、飲食店に行ったりもするから大きな施設はむしろ邪魔になるんだよ。とはいえ、狭いのは狭いので不便。地下に作るのが一番都合が良かったんだよね」


「なるほどね……」

 

 僕の言葉にレゼが頷く。


「リスタ、紅茶だけでなくお菓子もお願い」


「わかりました」

 

 僕の言葉にリスタが頷き、お菓子の方を手に入れる。


「なんか……本当に雑用なのね。あの子」


「まぁ、そのために雇っているからね。僕が上げた特許のおかげであの子は学園で成績を伸ばし、強くなれたんだからこれくらいはしてもらわないと。性的行為の強制をしてないんだからね」


「えっ……?してないの?」


「してないね。彼女は黄金の魔力の持ち主。本当に重要なのはここだよ」


「なるほど……確か、黄金の魔力は呪文研究者が喉から手が出るほどに欲しているという話を聞いたことがあるわね」


「そーいうこと。んで、だ。そろそろ話戻そうか」


「あっ、そうね」


「よっと」

 

 僕は魔法を発動し、空中にホログラムを投影させる。


「えっ?なにこれ」


 そして、そのホログラムを操作して僕の知っている情報を書き出していく。


「僕の知っている情報はこれくらい……レゼも知っている情報を教えて?」


「えっ、えっと……」


「あぁ。音声入力可能だから、そのまま口に出して言ってもらっていいよ」


「音声……入力?」


「あぁ……要は口頭で知っている情報を教えてくれればいいよ。メモは勝手にされるから」


「な、なるほど?」 

 

 魔法で持ってかなり先の文明的な生活を送っている呪文研究者たちが使うツールに慣れていないレゼを無理やり納得させ、知っている情報を話すよう促したのだった。

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