第15話
僕がこの王国で最も著名で最も多くの特許を売る呪文研究者『小悪魔』であることが学園中に知れ渡って一週間。
貴族をも超える特急の特権階級、国の縛りをも受けぬ呪文研究者の中でも上澄みの上澄みである僕に喧嘩を売れるものなどがいるわけがなく、僕並びにその愛人であるリスタへと突っかかるものは誰もいなくなり、快適かつ楽しい学園ライフを過ごすことが今のところ出来ていた。
「はいはーい!特許屋さんだよぉー!」
そして、何より大きいのが顧客の増加である。
基本的に呪文研究者は恐れられるものかつ忌避されるような人間である。
だからこそ僕の店に来る人の数も少なく、顧客の絶対数も少なかったのだが、この学園に来て僕がいろんな人と交流を持ったことで顧客の数も増加してくれた。
特に生活を快適にさせる非戦闘向けの魔法の需要が増加し、今では学園の女子どころか王国中の金を持った女性に身だしなみ系の魔法の特許や生理を軽くする魔法の特許が売れている。
僕の懐はがっぽがっぽである。
「頼む!一日特許権を売ってくれ!売っているのは龍系のだけか!?」
仮で学園の中庭に作った僕の出張店に客が一人。
「だけですね」
「そうか……あれだけか」
龍系の魔法は全て高威力の魔法となっており、どれもが必殺級の魔法である。
これだけを買っても戦闘することは出来ないだろう。
ジャブになる魔法も必要なのだ。
「いや、だが龍系だけでも良い!これを売ってくれ」
「はい。金貨1枚です」
「おう」
僕は金貨1枚を受け取り、代わりに特許用紙を渡す。
「ありがとう!これで今日の決闘も……」
「ん?決闘に使うのですか?」
「ん?いや、そうだが……」
「大丈夫ですか?龍系魔法の操作は難しく、素人が操ろうとしても暴発しますが」
「待て!?そうなのか!?」
「はい。ですから、こうして皆さんは学園に来て魔法の使い方を学ぶのでしょう?呪文だけでなく技量も必要なのが魔法です」
「ま、ま、ま、待て待て待て待て」
「あっ、ここに龍系魔法の操作を補助する魔法の呪文が」
「買ったぁ!」
「一ヶ月金貨5枚です」
「……い、一日は?」
「ないです」
「売っては……?」
「あげません」
「……」
「どうしますか?」
「あぁー!!!クソ、買いだァ!」
「まいどありぃ!」
僕は目の前の男子生徒の言葉を受け、満面の笑みを浮かべる。
「くそぅ……詐欺師め」
「勉強量です。それがあれば勝てるでしょうし、頑張ってくださいね?」
「おうよ!ここまで来たら完璧に勝ってやらァ!」
僕は金貨6枚を今日のために注いだ、決闘へと向かう男の背中を見送った。
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