高天原ノ章 第一・五

「ここに皆々を集めたのは件の通り、葦原中国で起きた事である……」


 この場を司る者が、この発言をもってこの議の幕を開けた。


「なぜ、我々を集めるか? 人の世は人が治め対処するべきであろう!」


「人の世では、治められる出来事ではないという事だ。」


 この議の長がある者の意見をなだめる。


「それは如何いかになにようであるか!」


「結論を申し上げるに……」

 

 とある者が述べる。


「じらすな! 何が起きたということか。」


「……が……動いたかもしれない……」


 その集まった者たちがぞっわと深刻な顔色し、震撼する。


「ふざけたことを申すな! 奴は件の官によって対処したと聞いておるぞ!! 根拠のない戯言を申すのではないぞ!」


「一体、どういうことであるか、動き出したとしても早すぎるぞ。」


「あ~、恐ろしぞ、恐ろしぞ」


「根拠は、根拠はどこにあるのだ!」


「根拠は……」


 言いづらそうな雰囲気を漂わせる。


「早よ申せ!」


 とある者が言う。


「えっ、ハイ、申します。摂津国にて起きた事であります。状況を申しますと、約二万人がほぼ同時刻に死亡しております。」


「左様なこと、葦原中国では、何であろうと多々起きておるぞ。」


「何が原因だ。人が起こした事ではないか? 」


「違います。人が起こすものとは、今回の事は規模が桁違いです。」


「では、なんだ?」


「詳細を述べますと、ある地点から半径約十町程度の範囲で以上の事が起こっています。そして、建物損傷が全く見られません。」


「ガス攻撃ではないか。これなら、この程度の範囲なら、二万人も容易いぞ。」


「最後までお聞いてください。ある地点が重要なのです。」


 集まった者たちが騒ぎ出す。


「ある地点についてですが、ある一人の女性を中心に被害が見られるため、その人が原因だと思われる。」


 皆が首を傾げる。


「では、その女性一人が引き起こしたものか?」


「わかりません。」


 この場が凍り付く。


「どういうことだ、わからないとは。」


 ある者が激しく怒鳴った。


「わからないのです。しかし、現在、その女性は存命しております。」


「生きてるのならば、夢枕を行い、事情を聴くことができるであろう。これで、今回の事は万事解決ではない。」


「試みましたが、できません。」


 再び、この場が凍り付き、困惑しはじめる。


「どういうことだ?」


「説明申し上げます。我々は、その女性に夢枕を行うため、彼女の精神へと接触を試みました。しかし、彼女の精神に接触した瞬間、闇が出現し、夢枕を妨害、我々は撤退を余儀なくされました。皆様もご存知だと思われますが、夢枕を行う際、この様な事は起きません。以上の事が起きるという事は、の関与が疑われ、何らかの接点があったことは明白です。」


「闇の対処は、上が決め、対処する問題であろう。上には報告を挙げておるのか?」


「報告は挙げておりますが…… 未だ返答は返っていません……」


 皆はため息をいた。その一間があって、とある者は続けて語る。


「結論を申しますと、この女性を放置することは、危険であるという事です。」


「では、どうする? 」


 ある者が疑問を投げかける。


「我らが対処するしかないだろう。」


 ある者が胸を張って述べる。


「どうやってだ?」


 ある者がそれについて聞く。


「我々が降り立ち、対処するしかなかろう……」


 ある者がボソッと述べる。


 そして、とある者が皆に語り掛けた。


「現時点で、その女性が闇化した報告はありません。また、闇が出現したのは、夢枕のみであり、我々の使者をそちらに派遣し、対処することは可能である……」


 それを聞き、この議に集まる者たちは覚悟を決め、この場を司る者はこう述べる。

 

「『闇』は世の安寧に由々しき事態をもたらす奴である。」


「では、決まりだな。」


 続けて、この議の長が述べる。


「これより、高天原及び葦原中国の安寧のため、葦原中国摂津国において使者を派遣し、かの女性の対処を行うこととする。」


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