第3話  ヴォルカの森へ

つつじは、街の人々の声から、フェランの現状を把握した。悔しいが、サクラ兄さん、サクラ公爵はやはりチェリーに操られている。チェリーを捕まえなければ。このフェランを穏やかな幸せな世界に戻すためにも。「さつき、チェリーとの戦い、手伝ってくれるかい?」さつきは即答「いいよ。つつじ。こう見えて私、結構運動神経あるし強いわよ。」「それは頼もしい。」「その前にヴォルカの森に行く。そこには僕の魔法の師匠がいる。彼女はとても強い。」「へえー、強いんだ。良かったじゃない。そんな強い師匠がいて。」「まあ、そうだな。」僕らは魔法の風で飛び立つ準備中。広場の店主たちが集まり、「つつじ公爵、帰還してくれて、ありがとう。ほんとに心強いです。サクラ祭りは3日後です。どうか助けてください。」「大丈夫だ。僕に任せてください。」店主たちの中にルチェがいた。「おーい、ルチェ。」「おーい、つつじ。帰ってきたんだな。僕のためにすまなかった。つつじが人間界に飛ばされて、きていたから心配してたんだ。人間につつじが食べられてしまってるんじゃないかってね。」「なに、言ってるんだ。僕は、ほらこんなに元気さ。それに人間の友達もできた。」横からさつきが顔をだし、ぺこっと頭をさげた。「はじめまして、さつきです。」ルチェもつつじに負けないくらいイケメンの青年だ。さつきは変な対抗心を燃やした。”私も負けてない。”すかさず、つつじが「さつき、そんなに緊張しなくていいよ。ルチェは見かけは置いといて、中身は小さな子供だかね。お菓子も大好きだしな。」「つつじ、それは秘密だろう。一応、これでも立派な魔法道具の職人だぞ。」「ごめん、ごめん。そうだった。」「全く変わらないなつつじは。」さつきはこのイケメン青年二人の小学生のノリの会話が、心地よかった。「ルチェ、サクラ兄さんは、チェリーに操られている。僕は彼女と戦う。もちろん、サクラ兄さんとも戦うことになる。頼みがあるんだ。ルチェ、あの魔法の光の粉を急ぎ作ってもらいたい。スペシャルオーダーだ。サクラ祭りまであと3日。」「3日か。大丈夫だ。何とかする。」「頼む。僕はこれから、ヴォルカの森へ行く。バルミ師匠に会う。」「そうか、じゃ、またな。つつじ。」魔法の風発動。「待ってくれー。」ハチのビータの声。「つつじ、だめだぞ。僕を忘れているなんて。」「だって、ビータ、羽根がぬれるーって消えたじゃないか。」「僕は雨に弱いんだ。」「しかし、よくフェランに帰還できたな。」「つつじと、さつきの姿が見えてフェランの魔法の光、魔法の風が発動したのが見えたからギリギリでその風に乗ったんだ。だけど飛ばされて、やっと街に今、着いたところさ。」つつじは、そのビータを自分の肩にのせて、片手を上げ「じゃ、みんな。行ってきます。」魔法の風で空間移動。ヴォルカの森へ飛んだ。移動中「ねえ、つつじ、彼は誰?ハチに見えるけど?」ハチのビータが「僕はハチの精霊。ハチのビータ。つつじが人間界に追放になったとき、こっそり一緒に人間界についていったのさ。つつじのポケットに入って。つつじは、あー見えて結構寂しがり屋だから、知らない世界に一人行かせられない。これでも保護者のつもりさ。」さつきは小さなビータをマジマジと見つめ、「ビータ、ビータの羽根とてもきれい。」さつきに褒められたことがうれしくてビータは「さつき、仕方ないな、さつきのお世話も僕がするよ。なーんでも、いてくれ。」「ありがとう。ビータ」そうして魔法の風でヴォルカの森へ。僕らはバルミ師匠の木の香りの漂うドアに着いた。木のドアが開いた。「バルミ師匠、お久しぶりでございます。つつじ、今、フェランに帰還しました。」さつきは、背筋をまっすぐにきれいな姿勢のつつじに驚いた。肩に乗ってるビータも背筋がピンっとしている。まるで貴族の・・・あっ、そうだった。つつじはフェランの貴族。公爵だった。さつきは横目でちらっと見て“まね”してみた。背中の真ん中が少し痛い。こんな時、思い出すのは、ママの口癖だ。『さつき、携帯ばかり見てると姿勢が悪くなるわよ。』猫背になってる?私、かっこ悪い?と思った。心を読まれたのか、バルミ師匠が『さつき、大丈夫ですよ。猫背になっていませんよ。」さつきは赤くなり、「ありがとうございます。」と返事をした。「ところで、つつじ人間界はどうですか?」「いたって平和そのものです。こうして友達もできました。」「それは、よかったです。異世界、人間界は良い経験になります。」さつきは、頑張って、“先に自分から”挨拶をした。「さつきです。人間界から来ました。」バルミ師匠は「よく来てくれました。ゆっくりと言いたいところですが今、フェランは少し大変なことになっています。サクラ公爵がおかしいようですね。私が正すのも変ですね。つつじ、これはあなたの役目ですね。」「はい、バルミ師匠。3日後にサクラ祭りがあります。それまでに私の魔法の力をスキルアップしたいのです。教えていただけますか?」「はい。いいでしょう。それにあなたの今の実力も見てみましょう。」「はい。お願いします。」バルミ師匠は続けて「さつき、あなたも戦うのでしょう。この魔法の弓矢を渡します。あの木の的にまっすぐ当たるように練習してください。ビータ、さつきのこと、みてあげて。では、つつじは私と実践練習です。」つつじとバルミ師匠はお互い激しく魔法の光を放ちあった。時々その光の光線が破壊的な攻撃で森の中にドッカン、ドッカンと音を出して衝撃を与えている。どれくらい経ったんだろう。二人とも疲れが見える。私は魔法の弓矢がようやく、木の的に当たるようになってきた。両手は豆だらけでひどく痛い。「痛っ。」師匠バルミは駆け寄り「さつき、大丈夫ですか。手を見せてごらん。」私は両手を広げて見せた。バルミ師匠は、人差し指から魔法の光の粉をだしながら、治癒魔法をかけてくれた。痛みも傷もなくなった。「ありがとうございます。バルミ師匠。」バルミ師匠は「つつじ、さつきも、よく頑張った。つつじ、これで大丈夫だ。これでサクラ公爵に勝てるだろう。しかし気を抜いてはいけないよ。つつじの兄サクラ公爵の力は強いぞ。それから、チェリーだが。彼女は人間だ。邪悪の魂が彼女の中に入り込んでいるようだ。チェリーは、さつきがその魔法の弓矢で打ち抜きなさい。同じ人間界から来た子です。さつき、できますね。」「はい。」さつきは元気よく答えた。「明日はサクラ祭りだ、いよいよだ。」僕はバルミ師匠にお礼を言ってフェラン戻ることにした。準備中。バルミ師匠が”キターー。”「お守りです。持っていきなさい。」またもや手作りの木の人形をくれた。この木の香りはとてもいい香りなんだけどね。人形の顔がへんてこなんだ。「ありがとうございます。」僕はポケットに人形を入れた。大きな風が動き出した。魔法の風発動。僕らは、フェランへ向けて移動を開始した。

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