第一章 オスロンとパイ

#1

題「お腹がぐうっとなりました」

作・絵:テッサ・コルサ


昔々、とある国の山奥深くに、人を食べる悪魔が住んでいました。その悪魔は、真っ黒で、大きな卵のような姿をしており、時々山に入ってくる村人や山賊を襲って食べて暮らしていました。

ある時、山に入ってくる人間達を食べるのに飽きた悪魔は、もっと美味しい人間を食べたいと思い、山を降りることにしました。


「ああ、お腹が空いたなぁ」

「どこかに美味しそうな人間はいないかなぁ」


そう言いながら、山の麓の森の中を歩いていると、木々の間に一軒の小さな白い家を見つけました。

悪魔が窓から中を覗くと、1人の痩せた女の子がベッドの上で泣いていました。

悪魔は女の子を食べたことがなかったので、この子を食べようと思いました。

トントントン。トントントン。

悪魔は家の入り口のドアをノックしました。

すると、ドアが開き、女の子が出てきました。

女の子は悪魔を見てびっくりしました。


「貴方はだあれ?」

「僕は悪魔だよ」

「悪魔さん?」

「そうさ。君を食べに来たんだ」

「それは困るわ。お母さんが悲しむから」

「君のお母さんは?」

「街に食べ物を買いに行ってるわ」


その時、女の子のお腹がぐうっとなりました。


「お腹が空いているのかい?」

「ええ、あんまり食べてなくて」


女の子は元気のない声で言いました。

悪魔は家の中をぐるっと見渡しましたが、どの棚にも食べ物はありません。

ふむふむ。悪魔は考えました。

お腹がぺこぺこの女の子を食べても、美味しくないに違いない。

もっと太らせて、美味しそうになってから食べよう。


「よし、一緒に食べ物を探しに行こう。まずは君がお腹いっぱい食べて、ふっくら美味しそうに太ること。君を食べるのはその後だ」


そう言って悪魔は、台所からよく切れるナイフと、大きな鍋とマッチを持ってきて、女の子を家の外に連れ出しました。

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