ある秘密組織の闇に非力ながらに挑む若者たちの姿

女子高校生の「あたし」(愛美)が小学6年生の男の子に一目惚れをするところから物語は始まる。ラノベタッチの軽い読み物かと思って読み進むうちに、いつの間にか事態は深刻さを増し、人間社会の隠された闇の中を作者とともに歩んでいることに気づく。読者を飽きさせず、迷路に引き込んでいく作者の手法は見事である。

私たちの日常に及ぼす力といえば、会社や役所、せいぜい国家のそれであろう。そして私たちは、それらの力が法のコントロールの下に執行されるものであるとナイーブに信じている。しかしこの小説は、ほとんどあらゆる権力が、私たちの想像の埒外にある無法な力によって操られていることを知らしめてくれる。

しかも特筆すべきは、この小説が作者の日記をもとに構成されているという点である。従って、どんなにハードボイルド風の描写が多かったとしても、そのかなりの部分が作者の体験した事実を色濃く反映していると見ることができる。そこがまたこの小説の類まれな魅力となっている。