お姉ちゃんは強引

「美葉、もう寝る?」


 眠たくて頭をこっくりこっくりしていた私に、お姉ちゃんがそう聞いてきた。

 

「うん……もう寝るけど、一人で寝る」

「だめ。一緒に寝るわよ」

「んぅ……一人で寝るから」


 そう言って立とうとしたら、お姉ちゃんにお姫様抱っこをされた。

 びっくりして、少し目が覚めてしまった。


「お姉ちゃん、何やってるの。下ろして」


 そう言いながら、下ろしてもらおうと少しじたばたする。


「美葉、暴れたら危ないでしょ?」

「うっ……だ、だったら、お姉ちゃんがこんなことしなきゃいいじゃん」

「こうでもしないと、一人で自分の部屋に行っちゃいそうだったから、ついね?」


 ……私が自分の部屋で寝ようとしたら、お姉ちゃんも着いてくるくせに。


「……嘘つき。私をこうしたかっただけでしょ?」


 私はお姉ちゃんに向かってそう言う。

 いつもお姉ちゃんは強引だから、これで少しでも恥ずかしがってくれたらちょっとした仕返しになる。


「ええ、よく分かったわね」


 そう思って言ったのに、お姉ちゃんは全然応える様子を見せなかった。


「ほら、私の部屋に行くから、落ちないように手を後ろにまわしなさい」

「……自分で歩けるから」

「手を後ろに回さないならこのまま行くわよ」


 そう言ってお姉ちゃんはほんとに歩き出そうとしたので、私は慌ててお姉ちゃんの後ろに手を回して、落ちないように抱きしめるようにした。


「……お姉ちゃんのばかぁ」


 お姉ちゃんは笑を零しながら、自分の部屋に私を連れて入っていった。

 部屋に入ると私はすぐにベッドに下ろされ、布団をかけてもらった。


「……お姉ちゃんは入らないの?」

「一人で寝たいんじゃなかったの?」

「……もうお姉ちゃんの部屋に連れてこられちゃったから諦めただけだし」

「それなら、そういうことにしといてあげるわ。……それと、明日の準備をしたらすぐに私も入るわよ」


 絶対お姉ちゃんが勘違いしてる。……ほんとに諦めただけなのに。

 もういいや。私はさっさと寝よ。


 ……やっぱりお姉ちゃんが布団に入ってくるまでは起きてようかな。……お姉ちゃんが入ってくる時に起きちゃいそうだし、そもそもまだ電気がついてて明るいし。





 それからしばらくして、お姉ちゃんが布団に入ってきた。


「お姉ちゃん、おやすみ」

「わざわざそれを言うために待ってたの?」

「……違うから」

「美葉、おやすみ」

「……うん」

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