七人のキリスト

第8話――混沌の中で（性的表現あり）

　階段（かいだん）を上がり切ると、リーダーは少女（しょうじょ）の手を引っ張りながら、その真っ直ぐに伸びた木製の廊下（ろうか）を歩き始めた。

　左側のドアが開けっ放しにされており、リーダーはその前で足を止めた。

　左手に銃を持ったまま、彼は少女を部屋の中へと連れ込んだ。

　少女（しょうじょ）の目が見開く。

　狭い物置小屋の床（ゆか）には、頭から血を流した老夫（ろうふ）が動かないまま、仰向（あお）けに倒れ、ぐったりとしていた。

　見る限り、瞳孔（どうこう）が開いている。

　リーダーは表情を変えず、その隣を見た。

　と同時に、ロープで体を縛り付けられ猿ぐつわをされたエプロン姿の中年女性が、両目を開きながら呻（うめ）き声を上げた。

　リーダーは、その姿を見下ろすと女性から視線を逸（そ）らし、すぐ傍（そば）の床の上にある解（ほど）かれた状態のロープに目を遣（や）った。

「縛（しば）り方が、緩（ゆる）かったな」

　澄（す）ました表情のままそう言うと、少女の方を向いた。

「ごめんなさい！」

　少女が即座に怯（おび）えるように謝（あやま）ると、

「別に怒っちゃいない。ただ、次は失敗するな」

　そう言って少し強めに肩を掴（つか）むと、少女は失態（しったい）を許された事にホッとしたように声を弾（はず）ませた。

「はい！」

　すると、リーダーはすぐ右にある壁（かべ）に目を遣（や）りながら少女に向かって言った。

「壁（かべ）に手（て）をついて」

「はい！」

　健気（けなげ）に返事を上げると、彼女は言われるがまま煤（すす）で汚れた肌色のクロスが張られたその壁（かべ）に両手をついた。

　間髪（かんぱつ）入れないように、リーダーは少女（しょうじょ）のデニムを下着ごと勢いよくずり下ろしたかと思うと、自身のベルトを緩（ゆる）め、ズボンのジッパーを下げてそれを脱ぎ切らないまま、我慢できないように中年女性（ちゅうねんじょせい）の目の前で、そのまま少女（しょうじょ）の中へと挿入（そうにゅう）した。

　手をついた少女は、背後から腰を揺らす彼の動きに、ただただ身をまかせ、卑猥（ひわい）な喘（あえ）ぎ声を漏（も）らし続ける―――

　恐怖で息を震（ふる）わせる中年女性（ちゅうねんじょせい）を横目で眺（なが）めながら、さらに興奮（こうふん）するように彼（かれ）は腰の動きをさらに激しくしていった。

　ピストン運動が最高潮（さいこうちょう）に達した時、リーダーは、少しの呻（うめ）き声とともに、そのまま少女の中へと発射（はっしゃ）した。

　両者ともに、ビクンビクンと緩やかな痙攣（けいれん）を繰り返すと、リーダーはその臀部（でんぶ）を鷲掴（わしづか）んだまま、ゆっくりと彼女自身から離れた。

　発作（ほっさ）を終えたようにスッキリとした表情でズボンを上げベルトを締めると、今度は縛られた中年女性（ちゅうねんじょせい）の前に、リーダーはしゃがみ込んだ。

　拘束（こうそく）されたたままの女性は、悲鳴を押し殺しながら怯（おび）えるように仰（の）け反（ぞ）った。

　彼は澄（す）ました表情のまま、語りかけた。

「……金塊（きんかい）の場所を、言う気になりましたか？」

　その問いに対し、女性は震（ふる）えながら必死に首を横に振った。

　自分は一切知らないと、必死に訴えかけるように両目を見開きながら。

　女性の顔をジッと見つめると、リーダーは、その頬（ほほ）にそっと片手を触れて、

「なるほど。本当に知らないのなら、もう、特に用はないですね」

　そう言い放つと、左手に持っていた銃（じゅう）を女性の眉間（みけん）に突き付けた。

　思わず女性が瞑目（めいもく）し、その閉じられた両目から涙が滲（にじ）んだ。

　恐怖を必死に押し殺すような息遣（いきづか）いだけが室内に流れ続けた。

　女性の表情は、絶望でくしゃくしゃに歪（ゆが）んだままだ。

　死（し）までの瞬間が、とてつもなく長く感じられるがごとく。

　すると、リーダーは銃口（じゅうこう）を女性の額からゆっくりと離した。

「私が次に戻ってくるまでに、わかりやすくプレゼンできるようにしておいてください」

　そして、手に持っているオートマティック銃の弾倉（だんそう）を、カチャッという音とともに入れ替えると、言い添えた。

「それが、最後のチャンスです」

　突然、携帯（けいたい）の着信音が鳴り、リーダーはジャンパーのポケットからスマホを取り出した。

　面倒くさそうに耳に当てると、途端にその表情が訝（いぶか）しげなものに変わった。

　リーダーの耳奥で、電話の向こうにいる部下（ぶか）の声が響きわたった。

『通報（つうほう）された。今すぐ来てくれ』