第5話 ラ・フィユ・マル・ガルデ La Fille mal gardée

バレエ『ラ・フィユ・マル・ガルデ』

La Fille mal gardée

曲:フランスの民族舞踊など

フェルディナン・エロルドなど

振付:ジャン・ドーベルヴァル

初演:ボルドー大劇場 一七八九年


登場人物

リーズ(農家の一人娘)

コーラス(リーズの恋人)

シモーヌ(リーズの母親)

アラン(裕福な農家の息子)

トーマス(アランの父親)


この作品は「ラ・フィユ・マル・ガルデ」のほかに

「リーズの結婚」、「リゼット」、「無益な用心」……

など、国により、上演されるバレエ団により、

いろいろな作品名で上演されます。


(物語)

第一幕

 穏やかな農家の朝。ニワトリたちが朝を告げます。

 さわやかな朝日の中リーズが飛び出してきてリボンを木の枝にかけます。恋人のコーラスへの合図です。コーラスがやってきて二人は楽しく踊るのですが、リーズの母親シモーヌに邪魔されてしまいます。

 シモーヌは未亡人であり、貧しいコーラスではなく、裕福な農家の息子アランとリーズが結婚することを望んでいます。

 アランの父親トーマスもきれいなリーズと息子のアランが結婚をすることを望んでいます。

 しかしアランは周囲の人たちを呆れさせるほどテンポがずれた青年。リーズは「無理ですぅ」という感じです。


 今日はトーマスが息子のアランを連れてきてやってくる日です。

 トーマスの「アランとリーズを結婚させてほしい」という申し出にシモーヌは大喜びです。二人の縁談をまとめようとします。

 リーズは「無理無理無理無理、絶対無理!」ということを聞こうとしません。

ひとます一行は収穫で忙しい畑に出かけます。


 畑では農夫たちが楽しく収穫作業をしています。母親の目を盗みリーズはコーラスと会います。村のみんなはリーズとコーラス、母親やトーマス、アランとのことなどもよく知っています。そして村の人たちは皆リーズとコーラスのことを応援してくれています。農夫たちにごまかされたり、村娘たちの「木靴の踊り」が披露されたり、シモーヌはリーズとコーラスの間に入ることができません。

 そこへ嵐がやってきて、お気に入りの赤い傘を持ったアランは吹き飛ばされてしまいます。


第二幕

シモーヌの家

 雨にぬれながら家にかけこんでくる母シモーヌとリーズ。リーズはまたコーラスに会いに行こうとします。それを止めようと扉に鍵をかけ、その鍵を自分のポケットに入れリーズに糸巻を手伝わせます。やがて母シモーヌは寝てしまいます。

 シモーヌが目覚めると農夫たちが収穫した大きな麦の束を運んできます。それを確認したシモーヌはリーズとアランの結婚を強引に進めるためにリーズを家に閉じ込めてアラン親子と公証人のところへ向かいます。

 家に閉じ込められたリーズはたいへん落ち込みます。しかし先ほど運ばれてきた麦の束の中にコーラスが隠れており、飛び出してきたコーラスにリーズは驚きますが喜びます。二人が愛を誓ったところへ、母のシモーヌが帰ってきます。

 リーズは自分の部屋にコーラスを隠れさせます。リーズの行動に不信感を持ったシモーヌはリーズを部屋に閉じ込め、結婚式の準備のために公証人と近所の農夫たちを呼んできます。そしてアランとアランの父親トーマスもやってきます。

それはそれは無理やりな感じです。

 みんながそろったところでリーズの部屋を開けると、花嫁衣装を着たリーズとコーラスが手を取り合って出てきたので、もう大変な騒ぎです。

呆然とする母シモーヌ。

「なんだこりゃあ!」となり激怒するアランの父親。

二人を盛大に祝う近所の農夫たち。

まったく状況がわかっていないアラン。

 状況を理解した公証人は母シモーヌにリーズとコーラスの結婚を認めてあげるよう諭します。

 村中から祝福されてリーズとコーラスは結婚します。


 ひとりアランは失くしてしまったと思ったお気に入りの赤い傘を見つけて嬉しそうに去っていきます。


 fin



~~~~~~

「ラ・フィユ・マル・ガルデ」というバレエ

 バレエには鳥の踊りがいくつかあります。

「白鳥の湖」の白鳥、「眠り」のブルーバード、「火の鳥」の火の鳥……

そして、わすれてはいけないのが「ラ・フィユ」のニワトリ。


 私は「ラ・フィユ」の全体に流れる雰囲気が好きです。なんだろうこれは……ミュージカル的、でもブロードウェイ的ではなくムーランルージュ的というか……そんな感じ。


 なんだろう……このバレエ作品は……初めて見た時、何か今まで見たバレエとは全く違う世界観に触れた気がしました。

 バレリーナ、バレエダンサーたちが麦わら帽子をかぶり、草刈りガマをもったり、藁の束を持ったり……

 それは「白鳥」や「眠り」の王子やお姫様の世界とはまったく異なり、民衆が主役と言ってもリーズの雰囲気は他のバレエ作品とまったく違う。

「ドンキ」のキトリではなく、「ノートル=ダム」のエスメラルダでもない。

村娘のジゼルも「村娘」の中に貴族を超える「純粋さ」という気品がある。


リーズに対抗できるのは「コッペリア」のスワニルダ様ぐらいだろうか……

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