第5章 運命は突然に

第20話

 おばさんから里運がいなくなったことを告げられ、俺は走り回っていた。


「学校にもいねぇ、あの喫茶店にもいねぇ、ほんとにどこ行ったんだよ!」


 赤信号で立ち止まる。

 

 学校に戻ってみたが、門が閉められている状態で入れる状態じゃなかった。もしかしたらあの運動神経抜群なあいつのことだ、よじ登って入ったかもしれねぇが優等生なあいつがそんなことするわけがない。


 如月の家に居るかもしれないと思い電話してみたが、如月の家にもいないみたいだった。


「如月も探すって言ってたけど、電話こないしな」


 おばさんたちからも連絡来てないし、まだ見つけられていないってことだろう。


「……まさか誘拐とかじゃないよな」


 運命、運命言っているあいつのことだ。

 誘拐されて「運命だよ」とか言っている姿は想像に難くないが。


「まさかな」


 信号が青に変わり、横断歩道を歩く。

 外はもうすでに暗くなってきていた。


「当てもなく探したって見つかる気がしねぇ。ひとまずは電話した方がいいか」


 横断歩道を渡り終えた俺はポケットに入れていた携帯を取り出し、如月に電話をかけた。


「如月、里運は見つかったか?」

「まだだよ、どこにもいない!」

「……やっぱりか。お前だったらどこにいるのか知らねぇのか? 俺よりもお前の方が付き合い長いだろ」

「……そうだけど、昔好きだったため池の近くとか、公園とか探したけど全然見つかんないの!」

「……まいったな、おばさんたちからも連絡来てないしよ」

「そうだよね」


 あいつが行きそうな場所は全員が探してる。

 それでも見つからないって、どこ行ったんだよ。


「悪い如月、邪魔したな。また見つかったら――」


 あれ、さっき如月なんて言ってた?

 公園?

 そういえばあいつ保健室で、ラッキーアイテムが公園にあるとか何とか言ってた気がする。


「おい如月、お前が行った公園ってどこにある!」

「え? 学校の近くのところだけど。探せるところは探したよ?」

「わかった、ありがとう」


 俺は電話を切って、すぐにスマホのマップを開いた。

 如月が行ったのはこの公園ってことだよな。

 だったら、もうここしかないってことか。

 マップ上には学校周辺にもう一つ公園があった。


「頼む、そこにいてくれよ!」

 

「やっぱここか」


 そこには体操座りで蹲っている里運がいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る