第6話 赤いゴーレム

「もの? 私は人手不足の話をしてたんだけど」


 当然、ミオはそこに引っかかったようだが、パシャは慌てる素振りも見せない。


「やっぱりあれは人では無いと思うんですよね。ええと……ゴーレム。わかります?」

「え? ええと、戦争の時に使われたって聞いたことはあるけど。実物は見たことないなぁ」


 ゴーレムと言えば人型で兵士の代わりに戦う機械のことだ。

 人手不足の代わりにゴーレムを使うということなら、全く的外れではないような気もするが……


 ミオが首を捻るのは、ゴーレムが戦うための機械であるという点だ。


「いえいえ。そんな大きなもではなくてですね。実際に見て貰った方が早いですね。お~い」


 パシャが呼びかけると、例の地下室からぞろぞろと赤い体のゴーレムが現れてくる。

 その数は五体。全身が赤いのだが、高さは子供ほどしかなく横幅が大人ほど。


 ずんぐりむっくりな体型だ。

 あまり素早そうには見えない。つまりは背の高さも含めて、あまり戦いに役立ちそうには見えなかった。


「こいつらで店内の清掃と給仕は大丈夫です」

「え? 給仕も出来るの? って言うか喋れるの?」

「オマカセクダサイ」


 先頭のゴーレムがミオの疑問を解消して見せた。

 確かにこれなら、なんとかなるかもしれないが……


「……これもお父さんが残してくれたものなの?」

「あ、こいつらは違います。タレを保存していた箱があるでしょ?」


 ミオの疑問に答えるように、パシャは笑みを見せる。


「う、うん」

「基本的には、あの仕組みをちょっと応用したんです。地下室にまだまだ奥がありましたから」

「そうだったっけ?」


 ミオは首を捻るが、思い出してみると確かにまだ奥があったような気がした。

 だから奥に何かがあったことは納得出来るにしても――


「あの箱と、このゴーレムが“同じ”っていうのはよくわからない」

「動かすための仕組みが同じってことですよ」


 パシャは悠々と、わかったようなわからないようなことを言う。

 だがとにかく、パシャは何かをどうにかして、このゴーレムを作ったということだ。


 ミオとしては、父親がゴーレムを作っていた、と言われるよりは納得しやすいことは間違いない。

 ミオは腕を組んで、


「ま、いっか」


 と、ゴーレムを受け入れることにした。


 それは常連客も同じだったようで、ゴーレムの物珍しさもあるのだろう。いつの間にかゴーレム達を受け入れて、残る問題はミオの焼き加減だけになったわけである。

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