ネピルの日記



とんでもないことが起きた。ステラがつかまり立ちをしたのだ。

 それは、僕とプナキアが談笑している時だった。急に無邪気な笑い声が聞こえたので振り返ると、なんとガラクタに手を付いて立っているステラがいた。

 冷静になって思えば、僕たちは相当な親バカである。プナキアは全力で喜びをかみしめ、ステラを褒め称えていて、僕はその横で、しみじみと感動を味わっていた。 分別のあるロボットのはずなのに恥ずかしい。

 でも、ステラは1歩成長したのだ。 親が喜ばないわけがない。 今晩はシチューで祝う事にした。


 ガラクタの中から人間の発明品、カメラというものを発見する。 さすがにもう使えないだろうと思ったが、試しにいじってみると、なんとまだ撮れる。 早速ワクワクしながらステラの写真を一枚撮ると、すぐに本体から写真がにゅっと印刷されて出てきた。

 何枚か撮った。 使いきるのももったいないので、ここまで、と思ったが、結局ステラの写真は一枚、また一枚と増えていき、それはついに僕の両手に乗りきらないほどの量になってしまった。 やはり相当な親バカだ。

 一枚だけ、三人で写真を撮った。

 最近一日が非常に早く過ぎる。 仕事をしつつ、交代でステラの世話をし、夜は談笑したりしながら時間を過ごすのは変わらない。 なのに、なぜこんなに早いのだろう。

 

《日記の56ページ目》


 とうとうステラは自分で立てるようになった。何も持たずに、だ。僕たちは前のようなあからさまな喜びを現すのをこらえ、影からそっとステラを見守っていた。 まあ、成功したときは喜びを隠しきれていなかったが、仕方ない。そこでふと気づいた。以前よりステラの身長が伸びているのだ。

 古典的だが、僕たちは洞窟の最奥の、ガラクタをどかした岩壁にステラを立たせ、頭上ピッタリのところで、拾ったペンで線を引いた。これは、昔とある国でよく取られた手法らしい。これからステラが、歳を重ねていくごとにここで身長を刻むのだ。

 余談だが、僕たちの仕事は給料が出るわけではない。捨てられた衣服のポケットから少しばかり失敬したり(富裕層は警戒心が薄く、しかもすぐものを捨てる) 製品の中のレアメタルを市場の宝石屋に売ったりしたお金を貯めておいて、必要に応じて使う。 ほぼ全部、ステラを育てるために使う。決して無駄遣いではない。

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