第3話 時は金なり③

その化け物たちは女性と装備を洞窟の奥に連れていき外には誰も残っていなかった


悪臭にも慣れた頃、俺は木と葉っぱを集め始めた


よく密室で起こる一酸化炭素中毒の事故を模して、戦わずに中の化け物を殺そうと試みた


それだけでなく、切れ木と落とし穴を使った古典的なトラップやベトナム戦争で使用されていた罠をいくつか見よう見まねで作ってみた


幸い水だけには困らずなんとか生きれていたが、ほぼ2日が限界と身体が察していた


それまでにあいつらを殺してもらえるものをすべてもらおうと思った


そしてその夜はすぐにやってきた


あの化け物も夜になると静まり返り多くが休息をとっているのだろうか


泥だらけの服に破れまくったズボン


そんな状況でもいまから生物を殺すという予感に心がワクワクした


中にいるであろう人間らしき人たちには申し訳ないが死んでもらう


あのまま生きているよりはましだろう


洞窟を出たあたりに仕掛けたトラップは20個ほど自分でもかかりそうで怖い


それくらいよくできている


上手くいかなかったらもうしらん


その時は死んでもいい


もう元の世界に戻れなくても、俺は失うものがない


そう決意し、洞窟の入り口で火を起こした


すでに洞窟の入り口不覚を大量の木で塞いでおり、今は6列目の木で壁を作っている


自分の身の安全が確保できてからさらに2個目の焚火を用意した


最初の焚火から時間はかなり立っているはずだが、変化はない


もしかすると出入口はここだけじゃない可能性が濃厚だったのかと焦り始める


だがそれはほんの数分後に安心に変わった


例の化け物が一目散にこちらに走ってくるのが見えた


「よかった」


気付くと安堵してそいつらが来るのを待っていた


出口に近づいて異変に気付いた化け物は必死に木をどかそうとしているが


無駄な労力だ


動けば動くほど呼吸も早くなる


その分この煙を多く吸うことになる


化け物たちは俺に必死に何かを言っているが、俺は無視して木の壁を作り続けた


だがそこで一匹の化け物が火をどこからか起こし、それを木壁に放った


「……その手があったか」


冷静になればわかったことをおれは注視できていなかった


何も食べていない疲労からだろうか


あのネカフェで何か食っていればよかった


そう後悔し、洞窟から走り去って罠が仕掛けられた森に逃げ込む


化け物たちは一斉に洞窟から出てきたが4割くらいはもうよろよろと走ることもなかった


十分に動くことのできるやつらはなんと鼻が利いて真っ先に俺の方に向かってきた


「そこも考えてなかった...」


落胆と同時に地面に座り込む


轟々と燃える洞窟の入り口を見てふと思った



「あれ?俺ってあの焚火にどうやって火をつけたんだ?」



よくよく考えれば火をおこした瞬間が記憶にない


自分の手をじっと見つめる


もう化け物はすぐそこまで迫っていた時


俺の右手に見たこともない紋章のようなものが赤く光っているのに気付いた


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