一石二鳥どころではない
武器ができるまでに3ヶ月。義勇兵たちの装備を整えたり、当面の資金を考えると圧倒的に心許ない。俺はため息をつく。
義賢「このままでは黄巾党と戦う前に金が尽きます。働かざる者食うべからずです。ということで皆で稼ぎますよ」
劉備「丁、稼ぐと言ってもどうするというのだ」
俺が名前を思い出してから兄上は俺のことを丁と呼ぶようになった。
義賢「うっ」
この感じはまたか?頭の中に声が響く。
『張飛殿は、肉屋をやっていた当時は人気店で繁盛していました。商才があります。逆に関羽殿は、毎日算盤を持ち歩くぐらい算術が得意です。簡雍殿は、弁舌が得意です。田豫殿は、商隊の護衛任務を任せるのが良いでしょう』
劉備「丁、大丈夫か?」
義賢「兄上、心配をおかけして申し訳ございません。張飛殿は、肉屋をやってもらいます。関羽殿は、得意の算盤を使ってお金の管理をお願いします。簡雍殿は、金持ちから引き続きお金を引き出させてください。田豫殿は、練兵も兼ねて商隊の護衛任務を請け負ってください。兄上と俺は、練兵も兼ねて狩りに行きますよ」
張飛「肉屋をやってくれっていうならやるけどよ。流石に牛刀包丁とかねぇと捌けねぇぜ」
バラバラバラと肉屋で使う道具を取り出す。
義賢「これでどうですか?」
張飛「お前これ全部俺の愛用してたやつじゃねぇか。どうやって?」
義賢「質屋に理由を話して、取り戻しました」
張飛「まぁ深くは聞かねぇよ。ありがとな」
関羽「某がお金の管理とは納得できませぬな。商隊の護衛任務を請け負いましょうぞ」
義賢「いえ、ダメです。今このメンバーの中でお金の管理ができるのは数字に強い関羽殿だけなのです。これは、兄上の今後のために必要なことです。よくならなかった場合は俺の首をかけましょう」
関羽「そこまで言われて無碍にもできませぬな。心得ましたぞ」
簡雍「この前引き出させた豪族はもう無理だろうし、他当たってみるとするかな」
義賢「よろしくお願いします」
田豫「商隊の護衛任務しかと承った」
義賢「よろしくお願いします」
劉備「丁、我らも向かうとしよう」
義賢「兄上、かしこまりました」
劉備殿と共に近くの森に張飛殿の店で扱う肉の調達にやってきた。
劉備「皆の者、ここには鹿に兎に猪と獲物は多い。練兵も兼ねて、狩るぞ」
義勇兵たち「オーーーーーーーー」
先ずは鹿を警戒されないように息を潜めて、弓で射抜く。兎も同じように射抜く。問題は猪だ。仕留めきれないとこっちに突撃してくる。
劉備「猪が突撃してくるぞ。盾で防いだ後、剣で刺すのだ」
傷が多いと毛皮の質が落ちるがこちらが怪我をするよりは幾分かマシだ。
義賢「兄上、これぐらい確保できれば取り敢えず良いかと」
劉備「わかった。皆の者かえるぞ」
張飛殿の店に鹿を2頭、兎を5羽、猪を2頭引き渡した。
張飛「こりゃあ上等だな。解体にもうでがなるぜ」
張飛殿はテキパキと解体していく、血抜きをして、毛皮を剥ぎ、肉を下し、骨だけにする。
張飛「毛皮は売るんだったな。ほらよ。肉はうちで売るとして、骨は処分で良いか?」
義賢「いえ、骨も売ります」
張飛「いやいやこんな無駄なもん買うやついねぇぞ」
義賢「骨は煮込んだりすればスープのいいアクセントになるんですよ。ラーメン屋とか買い取ってくれると思います」
張飛「へぇー最近流行りのラーメンにねぇ。ほらよ」
張飛殿は納得したらしく骨も渡してくれた。毛皮と骨を持ち、取引をしてくるのは俺の役目だ。防具屋の前を通ると声をかけられる。
防具屋「おぅ、坊主。その毛皮どうするんだい?」
義賢「売ろうと思いまして」
防具屋「じゃあ、うちで売ってってくれ」
義賢「買い取ってくださるんですか?」
防具屋「おぅ」
義賢「ありがとうございます。義勇兵を結成することになり、こうやって自分たちの防具の素材となるものを集めていまして、宜しければここで300人分の防具の発注をお願いすることはできますか?」
防具屋「可能だがその数じゃ全然たらねぇぞ」
義賢「定期的に狩って持ってきます」
防具屋「良し、なら毛皮の代金で防具を作ってやる。所謂物物取引でどうだ」
義賢「助かります。よろしくお願いします」
防具屋「おぅ。じゃあ発注書を書いてってくれ」
俺は発注書を書き、渡した後控えを受け取る。
防具屋「これで契約成立だな」
義賢「はい」
俺は、防具屋を後にして、ラーメン屋に向かう。
拉麺屋「いらっしゃい。食っていくか?」
義賢「この骨を買って頂きたいのですが」
拉麺屋「うーん。こんなもん買うやついなぁと思うぞ」
義賢「そうですか。肉の旨みが染み込んだ美味しいスープになると思うんですがね。他を当たります」
拉麺屋「ちょっと待ってくれ、骨を煮込む。そんな発想は無かった。そのアイデアと骨、買わせてくれ」
義賢「良いんですか?」
拉麺屋「男に二言はねぇ」
義賢「毎度ありがとうございます」
骨が思った以上に高く売れたが後日この拉麺屋は毎日人が並ぶほどの有名店となる。鹿骨ラーメンや猪骨ラーメンなどの人気メニューが飛ぶように売れる。定期的に骨が欲しいと3ヶ月の間、結構な金銭収入を得たのだった。受け取ったお金を持ち馬屋に向かう。
馬屋「いらっしゃい。馬をお求めで」
義賢「あぁ。良いのはいるか?」
馬屋「鹿毛、栗毛、芦毛、青毛と扱っています。どれぐらい入用で」
義賢「30頭から50頭は欲しい」
馬屋「ふむふむ。では毛色8種類をそれぞれ6頭づつと残りの2頭なんですが是非オススメしたい馬が他にいるのですが」
案内されたところには綺麗な馬が2頭繋がれていた。
義賢「これは見事な馬ですね」
馬屋「えぇ、ですがこっちの馬は的盧と言いまして、乗る人間を殺すという凶馬なのです」
義賢「白と黒でまるで兄弟のようですね。そんな噂があっても気にしませんとても気に入りました。買わせてください」
馬屋「良いんですか?」
義賢「えぇ」
馬屋「お客さんのこと、気にいりました。この2頭の馬はタダで構いません」
義賢「そんな、お言葉に甘えさせてもらいます」
馬屋「ハハハ。3ヶ月後引き取りですね。かしこまりました」
俺は良い買い物をしたと2頭の馬だけを連れて、兄上の元に戻ったのだった。
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