第11話 訪問!オタクに優しい黒ギャルのお部屋

「麗ちゃん、わが部屋にようこそー」

「うわあ…ごちゃごちゃしてますわね…」

ゲーム機複数台、スマホ、タブレット、パソコンとモニター

コンセントと電源コードが入り乱れたあたしの部屋を見て、麗ちゃんが呟く

これでも、麗ちゃんを自分の部屋に呼ぶから、頑張って掃除したんだけどね

やはりお嬢様には、このサイバー機能美はわからないか…


「そお?あたしの部屋なんてまだまだだよ」

「誰と比較してますの…?」

複数モニターでゲームしてるオタクさんとか、カッコいいよね!

あたしもいずれはあの域に到達したい


「ごめんなさいねー、この子ったら片付けもできなくて」

お母さんにも言われてしまった


「もー、お母さんまで。これはこれで理想の配置なのっ」

ま、まあ、もうちょっと配線は、考えた方がいい気はするけど

この前、コードに足ひっかけて頭打ったからなあ…


あたしのお母さんはちょっとおっとりしてて、足元まで届きそうな長い髪が特徴だ

切らないの?と聞いたら『お、お父さん、この長さが好きだから…』と返された

…仲いいなぁ、うちの両親!


今は自作のラスクと紅茶を持ってきてくれている

お母さんのラスクは美味しいので、あたし大好き


「けどまさか、連れてくるお友達が、小学生の子だなんてねぇ」

麗ちゃんの頭をなでなでするお母さん

やっぱりみんな、麗ちゃんなでなでの魅力には勝てないんだなぁ


「…いや、同じクラスなんだけどね」

「え、本当に…?」

「すみません、申し遅れました。わたくし、美遊様と同じクラスの来知麗ですわ」

「あ、えっと、美遊の母の夢渡月読です

 ごめんなさい、私てっきり…」

お母さんも誤解するし、やっぱ小学生なんじゃ?


「い、いえ、わたくしの方こそごめんなさいですわ」

「そ、それじゃあ、ゆっくりしていってね」

お母さんは決まりが悪くなったのか、お菓子を置いてそそくさと台所に戻ってしまった

そんな気にしなくてもいいんじゃないかな…


「さて、それじゃあ例のゲームやってこうか」

「わたくしの世界の事が記されているゲーム…気になりますわね」

そう、今日はプリサガのシナリオを、麗ちゃんに直接見せる予定なのだ

プリンセスがどうなったのか、あたしの言葉よりゲームで感じでもらった方がいいだろうし


いつもの手順を繰り返す


まずはハードを出してきて…

…メモカBを用意して、Aのデータを全部移して…

Bは抜いて…ソフト入れて、オープニングは飛ばして…

画面にでっかく映る『プリンセス・ユグドラシルサーガ』の文字


「んで…コンティニュー…と…」

データのロードに失敗しましたの文字


「うげ、失敗した!」

最近は調子よかったんだけどなぁ

仕方ない、もう一度同じ手順を


…メモカBを用意して、Aのデータを全部移して…

Bは抜いて…ソフト入れて、オープニングは飛ばして…


「んでコンティニュー……よし!」

成功しましたの文字


「何の儀式やってますの?」

「このゲーム、ちょいちょいロードに失敗するんだけど

 失敗した時に、メモカの全データが破壊されるんじゃん」

「???」

「あー、うんまあ、わかんないかぁ」

普段ゲームやらない人間には暗号みたいなもんだよね、ゲーム用語って


「特定の手順を踏まないと燃えてしまう、特殊な魔術書みたいなもんだと思って」

「なるほど…セキュリティ万全ですわね!」

「絶対、意図してつけたセキュリティでは無いと思うけどね」

じゃあとりあえず、この前作った悪役令嬢退場シーンから…

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