人魚姫の淘汰
枕目
チャプター1
Ⅰ
目の前にある青い光の正体がしばらくわからなかった。
暗闇のなかの、青い、にじんだ光の粒。
マリンブルーのイクラみたいなものを想像していただければ、まあ近い。そんなものは想像できないというのなら、それでもべつにかまわない。
とにかく、青い光だ。
「なにあれ」
そんなひとり言を言ったような気がする。
わたしは完全に目を覚ましてはいなかった。まだ夢の中に片足をつっこんでいて、あいまいな青い光は、いかにもそのつづきのようだった。
見ていたのがどんな夢だったか、もはや覚えていない。思い出せるのは、夢の中に彼女が出てきたことだけ。ならいい夢だったことだろう。彼女が出てくるなら、それを十分条件としていい夢だ。夢の中で彼女に腹を刺されるとしても。
サイドテーブルを手探りし、眼鏡をかけた。近視は矯正され、幻想的にぼやけた青い光は、現実のセグメント表示された数字に変わる。
2:14
その青く光る数字は現在時刻を意味している。
発光ダイオードのデジタル時計だ。室内で光るものはその時計だけだったから、部屋のなかのものはみんな青く染まっていた。床の上でこんがらがったコードも、その合間の綿埃も。閉めっぱなしのカーテンも、ベッドのシーツも、その上に置かれたわたしの手も。
2:16
かなりのあいだ、その青い数字を睨んでいた。
なぜわたしの部屋にこんなものがある?
寝ぼけた頭で自問する。
こんなもの、あるはずがないのだが。
わたしは光に対して過敏な質だった。病的なレベルと言っていい。カーテンのすき間から月の光が差すだけで目が覚めてしまうこともあった。そのあと再度眠りにつくことができずに、ベッドの上でのたうち回ることになる。ようするにその種の不眠症だ。
本物の暗室で眠るためにはそれなりの努力が必要になる。単に電灯を消すぐらいでは足りない。エアコンの小さなLEDでさえ、絶縁テープを張って光らないようにする。カーテンはサメの皮みたいに厚くなければならないし、光が漏れる隙間は閉じなければならない。
だからして、つまり、部屋にこんな時計をわたしが置くはずがない。
2:17
ああ、そうだ。浅閒ふうろだ。
彼女がこの時計をくれた。だからこれがここにある。
意識がはっきりしてくるのを感じた。それはつまり、眠りが遠のいていくことを意味していた。きゅうに肌寒く感じて、くしゃみを二回した。もう目は冴えてしまっていて、眠りなおすことはあまり期待できなかった。
2:18
きのうまで、わたしの部屋に時計はなかった。
「ケイちゃん青い色好きでしょ」
そう言って、ふうろが時計を持ってきて、勝手に部屋に置いたのだ。
確かにわたしは青い色が好きだった。とはいえ、べつに熱狂的でもない。たんに、クレヨンの箱に入っているような色の中で、許容できるというか、ましだと思える色が青と黒なだけだ。ようするに消極的な意味での好きだった。
なんにせよ、ふうろに青い色が好きだと言ったことがある。
彼女はそれを覚えていて、時計をくれた。青く光る、黒い時計。
それは確かに、好みではあった。光らないでくれたらもっとよかったけれど。
2:35
もう少し眠りたかったが、いくら寝ころんでいても眠気はこなかった。
ただ行き場のない苛立ちに何度も身体をよじった。
こんな時計、すぐに電池を抜いて捨ててしまうところだ。
彼女がくれたのでなければ。
2:39
時計、というより時刻というものはきわめて社会的なものだ。
権力的と言ってもいい。土地に線を引いて支配するのと同じように、時間を区切り、他者をそれに従わせる。空間か時間かの違いにすぎないが、いずれにしてもそれは権力者の仕事に属する。中世では寺社の鐘が時間を知らせ、それに従って人々は農作業をした。産業化してそれが工場のチャイムに変わっても本質は変わらない。線引きをする者がいて、それに従う者がいる。古代ローマの皇帝の名がいまだに英語の暦に残っているのはその残響みたいなものだ。
このような論理に従って浅間ふうろは時計をよこしてきたのか。
というと……わからない。彼女はこんな小難しいことは考えないだろう。そんな気がする。だが、もっと直感に基づいて時計というプレゼントを選んだような気もする。少なくとも、わたしの生活に時間的秩序が欠けていたのは確かで、彼女はそれを与えようとしたのだろう。
なんにせよ、以上がこのデジタル時計に対するわたしの評論だ。
2:48
実際に社会性というものを喪失するとわかるが、あるラインを超えると時間がどんどんどうでもよくなってくる。わたしの場合、大学を中退し、講義の時間に合わせて起きる必要がなくなったあたりからそれが始まった。
自分のペースで寝起きするようになってくると、生活は体内時計に従うようになる。体内時計の周期は25時間なので、体外時計の周期に対して常にずれる。通常なら日光と生活上の義務によって補正されるその差分は修正の機会を失い、体内時計と対外時計はまどかとほむらのようにすれ違うようになり、睡眠に支障をきたす。
これが医療用語で言うところの概日リズム睡眠障害だ。
ここで誤解を避けるため注記しておきたい。こう書くとまるでこの病気の人間が全員わたしみたいな社会生活不適合者のようだが、そうではないと言っておく。わたしの場合はわたしの場合にすぎない。社会性にあふれた模範的市民でもなる時はなる。夜勤者や忙しい屋内労働者にもよくある病気だし、ついでに言えば南極探検隊員の職業病でもある。世界の終わりに太陽が暗くなったら全員そうなるだろう。そうなればいいのに。以上、但し書き終わり。
話を戻す。要するにこれはふたつの時間周期があることになるのだが、現実的にはどちらの時計にも従わない不愉快な生活を送ることになる。身体はひとつしかないからだ。テレビ番組の時間に合わせてテレビを点けるということがどれほど社会的な行為か、当たり前にできる者にはわからない。わたしはできない。
3:03
まだ眠くならなかったので、オンラインゲームを立ちあげた。
たまたま同時にログインしていた北米のフレンドを誘って、一緒にモンスターと戦った。フレンドと言っても、オンラインゲームで知り合っただけの関係だから、おたがい顔も本名も知らない。ゲームエンジンのシステム上で、彼がフレンド申請のボタンを押し、わたしが承認のボタンを押したというだけの関係だ。気楽でよろしい。
おたがい性別も知らないから、彼(たぶん)はわたしを男だと思っている。これも気楽でよろしい。男だと思われる方が楽だ。
ゲームの中で触手の生えたドラゴンと戦いながら、わたしは彼にチャットで話しかけた。自分としては珍しいことだった。ふだんは、ゲームの攻略のために必要なこと以外、ほかのプレイヤーとやり取りはしない。ならどうしてオンラインゲームをやるのか、と言われてもうまく説明できない。
なんにせよ、そのときは、なんとなくその地球の裏側の友人に話しかけてみたくなった。なんでもいいから話したかった。だれでもいいから。その行動は自分の中では気の迷いに属する。
>ああ、知ってるよ。ヒキコモリってやつだろ
わたしが自分の生活について簡単に述べると、彼はそう言った。
ヒキコモリは日本語のままだった。引きこもりという言葉はもはや国際語らしい。
>日本の風土病だってな
風土病かどうかはともかく、彼は引きこもりという概念についてはおおむね理解をしていた。彼の述べた引きこもりの性質はそのままわたしの性質だった。
>家から出られないのか?
>その言葉が何を意味するのかによる。正確には、出ることはできるが、それに意味がないというのが近いと思う。
>どうして?
>さあ、わからない。理由は。
>その理由がわかったら、何か変わるだろうか?
彼のその問いかけに、キーボードを打つ手がしばらく止まった。
>誤解しないでくれ、君の生活を批判する気はない。
>俺だって毎日ほとんど家から出やしないんだ。君と変わらないよ。そういうやつはこっちにもたくさんいる。似たような奴は
>おかげで話し相手が得られたわけだ
>お互いね。けっきょく、誰もがみんな病んでる。多かれ少なかれ。病気に名前がついているかどうかの違いだ
彼のその言葉はちょっと印象深かった。
ありきたりな言葉かもしれなかったが、妙に心に残るというか、刺さった。わたしはそれを自分にしか聞こえない程度に復唱した。誰もがみんな病んでる。病気に名前がついているかどうかの違いで。
>きみは体重150キロで毎日コーラばっかり飲んでたりするの?
>なぜそう思うんだ?
>アメリカ人だから
>それはステレオタイプだな。アメリカ人のナードだってみんなデブってわけじゃない。俺の体重は250ポンドちょっとしかないし、コーラなんて不健康なものは飲まない。オレンジサイダーを飲む
ゲームの中で彼のキャラがおどけたジェスチャをする。
オレゴンに住んでいるという彼は、わたしと同じような暮らしをしているという。とくに生活には困っていなくて、通信販売で買いだめしたサイダーを毎日飲んでいるという。
わたしはちょっと安心した。うそじゃないといいな。
5:26
ようやく眠気が来た。寝る。
目に光が入らないように、顔にタオルをかけた。
15:23
海の底にいる夢を見ていた。
わたしの身体は海底に横たわっていて、少しも動かない。感覚もない。身体そのものがなくなってしまったみたいに。死んだのかもしれなかった。
動かないわたしの上に、ゆっくりと泥が降り積もっていく。海の浅いところから、白い泥の粒がいくらでも降ってくる。マリンスノーと呼ばれているものだ。呼び名は風流だが、プランクトンの死骸やら何やらで構成されている。それは細かな死者の群れだ。
泥はわたしの死骸を覆って、古墳を思わせるささやかな土塊に変える。その小山さえも泥にうずもれていく。泥と泥でないものを一緒くたにしながら、すべては同じようになっていく。この暗い海の底ではすべてがフェアだ。
数万年ぐらいそうしている。
やがて泥は地層に変わっていく。泥は自身の重みによって、その最下層を石に変えていく。そんな夢だった。
とても安らかで幸せな夢だ。
「はい! 起きましょうね!」
ふいに誰かが両手をつかむ。わたしの身体は宙に浮き、泥の中から引っぱり出される。
浅間ふうろが眠っているわたしの両手をつかんで、引っぱり起こしたのだと理解するまで、数秒かかったと思う。彼女はそのままわたしの手をゆすっていた。
「目、覚めましたか?」
幸福な石の中から引っぱり出されたわたしが、彼女の質問に答えるまで、さらに何秒だか十と何秒だかかかった。そのあいだ、彼女はわたしの手を引いて支え続けた。
「目は覚めたよ」
わたしがそう答えると、彼女は手を離した。わたしの身体はこてんと倒れる。
「おはようございます」
ふうろがわたしを見下ろしている。メガネをかける前で彼女の表情はわからないが、彼女がこういう時にどういう表情をするかは知っている。
「おはよう」
「今何時何分でしょうか?」
「さあ」
「時計を見るといいのです。親切なお友達が時計を買ってあげました」
わたしは眼鏡をかけ、青い発光ダイオードが十五時二十三分を示しているのを認めた。
「ダメ人間じゃないすか」
ふうろはそうわたしを責める。と言っても口調は柔らかく、字面ほどの毒気はない。
「せっかく時計をあげたのに」
「そう言われても。部屋に時計があるぐらいで睡眠リズムがまともになるんだったら苦労しない」
「目覚まし機能を使ってくださいってこと」
彼女は机の上に置いてあった時計のマニュアルを目ざとく見つけ、四カ国語で書かれた説明に文句を言いながら、時計の設定を始めた。日本語の説明文は翻訳がひどくでたらめだったので、わたしが英語の部分を読んで訳した。
「何時に起きたい?」
「そう言われても」
わたしはしばし唸ってから、そう答えた。起きたい時間などない。起きなければいけない時間もない。毎日、ベッドから出たくなったら起きるという生活をしている。いや、違うかな。ベッドの中にいるのに耐えがたくなったら起きるという方が近いかもしれない。もちろんずっとそうして生きてきたわけではない。中学はふつうに通っていたし、高校もいくらか不登校気味ではあったけれど、おおむね朝起きて学校に行くという習慣を維持していた。大学においてもそうだった。退学するまでは。
そんなようなことを考えていると、ふうろはしびれを切らしたようで、目覚まし時計のアラームを勝手に朝八時に設定した。破壊的な時間設定だ。朝八時? それって早朝じゃないか。まだ日の出前で暗いんじゃないか?
「それ……冗談だよね」
「いちおうそのつもりなんだけど」
ふうろはほっとしたように。
「真顔で言われたから。一瞬、そこまでぶっ壊れてるのかと」
わたしの冗談は通じないことが多い。
15:32
「まず部屋に光を入れましょうよ」
ふうろはカーテンを開けた。
午後の日差しが部屋の中に入り込んできて、思わず目を細めた。溜まった埃が光りながら散るのが見えた。日光を浴びるのは本当に久しぶりで、肌に熱を感じたほどだった。このカーテンが開いたのは一ヶ月ぐらいぶりだろうか。いやもっとかも。覚えていない。
「まぶしいから、ちょっとづつ開けてよ」
「そんなに日差し強くないでしょ」
と言いつつ、ふうろは全開にしたカーテンを半分だけ戻してくれる。
「灰になるかと思った」
ふうろは笑う。今度は冗談が通じたので、少し気を良くした。
16:04
キッチンの壁にかかっているスヌーピーの時計を眺めながらコーラを飲んだ。
べつだんコーラが好きなわけでもない。普段はコーヒーを飲むのだがこの日は切らしていて、とりあえずカフェインが入っているものならなんでも良かった。わたしは重度のカフェイン中毒者だ。カフェインの血中半減期は約四時間だ。つまりわたしの血には常にカフェインが混じっていることになる。
「どこに行くの?」
ふうろの背中に話しかけた。彼女はいつの間にか着替えていて、スエード地の小ぶりなリュックを肩にかけたところだった。童話の主人公が背負っていそうなデザインのやつだった。
「バイトの面接ですが」
「あ、そうなの」
「こないだ話したんですけど」
「そうかもしれない」
「……夕飯は何がいいすか?」
「コーヒー買ってきて」
「質問の答えになってなくない?」
「エビのチリソース」
わたしがそう答え直すと、ふうろはため息をついて出ていった。
ふうろが不機嫌な理由についてコーラの残りを飲みながら考えた。
わたしが今飲んでいるコーラは彼女の飲みかけのやつだが、これが原因だろうか? たぶん。部分的にはそうだ。長いつきあいからの経験上、それだけではあそこまで怒らないことがわかっている。合計10ポイントで彼女があれぐらい怒るとスケーリングすると、彼女のコーラを勝手に飲むのはせいぜい3ポイントぐらいだ。残りの7ポイントの原因が不明だ。
17:20
たぶんカフェインが足りないんだと思う。集中できない。
ゲームでもしようかと思ったが、面倒になってすぐに終了した。本でも読もうと思ったがどれを読んでも目が滑る。ベッドに寝ころがって残りの7ポイントについてモヤモヤ考えていた。今日の昼に起きてからの彼女とのやり取りが何度も思い出されてきた。こういうルーチンに思考がはまるとなかなか抜け出せない。カフェインが足りないせいだと思う。
半開きになったカーテンから外が見えた。オレンジ色になりかけた空と、輪郭が金色に光る雲が見える。さしこんだ日差しがベッドを斜めに切るように照らしていた。
そこに猫がいた。
茶色い猫だった。オレンジの首輪をつけている。仮に彼女とするが、彼女は窓の手すりの上を歩いてきた。猫特有の見回りのような散歩の途中だったのかもしれない。彼女はカーテンの開いたところで足をとめて、わたしの部屋の中をのぞき込んできた。
いつも閉まっているカーテンが開いていたから不思議に思ったのかもしれない。猫はずいぶん長く部屋の中を見ていて、わたしと目を合わせるとしばらくおたがいに見つめ合っていた。悪い気はしなかった。べつだん猫が熱狂的に好きなわけではないが。
猫がふいと立ち去ったあと、うとうとして、玄関のドアが閉まる音で目がさめた。ふうろが帰ってきたらしい。
17:56
「エビチリと簡単に言いますが、作る手間というものをご理解いただけているでしょうか?」
「あんまり考えずに言った」
「でしょうねえ」
エビのチリソースと卵のスープ、それから炊きたてのごはんがテーブルの上に並んでいる。彼女は出かける前に炊飯器のタイマーをセットしていたらしかった。気が付かなかったが。
「食べないんですか? お嬢様」
「い、いただきます」
ふうろの口調は皮肉たっぷりだったが、これは彼女の不機嫌が回復していることを意味している。たぶん、だいたい10ポイント中の4ポイントぐらいは回復してきている。
しばらく気まずい雰囲気で食事をすることになったが、おかずが半分になったぐらいで、彼女の機嫌もさらにもう少し回復した。
「一人だったらエビチリなんか作んないんですよ。チリソースって材料が多くて面倒なので」
ごはんのお代わりをしゃもじでぽんぽん叩きながら、ふうろが言う。
18:06
「ああ、あの猫? ずっと前から来てますよ」
食後のころあいを見て、わたしはさっき見た猫の話題を出した。
「そうなんだ」
「ケイちゃんが知らなかっただけです」
「ずっとカーテン閉めてたからね」
「だいたい決まった時間に来ますね、あの猫は」
「猫のくせに規則正しいんだ」
「飼い主がちゃんとしてるんじゃないですかね。よく飼い主に似るって言うし。同じ時間にエサをあげてれば、猫だって同じ時間に帰ってくるようになるものです」
「サラリーマンみたいな猫だね」
「人間も見習わないといけませんが?」
彼女は食器を片付けはじめた。わたしも慌てて手伝う。といっても、洗浄機に入れるだけだ。食器洗浄機はわたしが買ったものだった。以前、わたしが食器を洗わないという件でふうろが怒り出したので、クレジットカードで買ったのだった。わたしのごく短い大学生活の一番の成果はクレジットカードを作ったことだ。今だったら絶対作れない。
それはいいとして、片付けているとき、部屋のすみに見慣れないダンボール箱があるのが目に止まった。ちょっとした家電ぐらいのサイズがある。
「あれ、これ何?」
「さっき、ちょっと空気悪くなっちゃったので」
ふうろはちょっと口ごもる。
「まあその。プレゼントです。ケイちゃん、こういうの好きでしょ」
その時点では箱の中身がなんなのかわたしには分からなかったが「こういうの好きでしょ」という言葉は時計を買ってくれたときと同じで、少し嫌な予感をさせるのに充分だった。
じっさい。それはわたしの生活に割り込んできた。
そして観察が始まる。
そう、これは観察日記だ。少なくとも基本的にはそうだ。主人公はわたしではなく、彼女でもない。ここにやってきた小さなものたちだ。あれらはこの世のどの生き物より堕落していたし、信じられないぐらいに脆弱で、無意味で、美しかった。彼らの一連の系譜だ。これに価値はない。読んで得られるものもない。別にただひとりも読んでくれなくたっていいんだ。ただ、わたしが書かないと彼らがいたことがどこにも残らないから。
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