第1話 Unmemory World へ

「外部への配信連携をONにして、カメラ設定は自動追尾でいいかな」

配信用のオプションを調整していく。

配信自体を公式でサポートしているだけあって便利そうな設定がいっぱいある。

早速、ここでの初配信を開始しよう。


―― 配信を開始します……


「こんばんわ~ん、ぬいぐるみ系VTuber、猫乃わん太わん」


◯[ばんわーん]

◎〚おおきい?〛

❤〚え、え?〛


「なんとなんと、今回は企業案件でフルダイブVRMMOの中から配信なのです」


◇[うらやま。ベータテスター外れたんだよな]

◯[配信標準実装だっけ?]

◎〚初企業案件おめでとー〛

❤〚わんたきゅんがメジャーになっていくー〛


「ベータテスターの応募はしてないけど、なぜか当選通知と共にヘッドセットが送られてきたんだよね」


❤〚ふぁっ、それ大丈夫?〛

◯[いやいやいや、なんで応募せずにあたってるの]


そう言われても送りつけ詐欺かと思ったらちゃんと本物だった。

欲しい物リスト公開なんかはしていないはずだけど、なんでか時々いろんな物が届くんだよね。


◎〚けど、企業案件って取るのむずかしいんじゃ〛

◇[しかも、アンメモの会社だよね]


「当たったヘッドセットだけど、ボクには大きすぎて入らなかったんだよね。

それで、問い合わせてみた時に『配信どうですか?』って」

ついでに、種族もちょっと修正してもらって今の姿になった。

「ちなみに、このアバターは獣人の種族の一つで、パウリ族になるらしいです」

サイズが1メートル弱と3倍ぐらいに大きくなったけど、それ意外は現実リアルとほとんど変わらない姿だ。

現実リアルのボクの姿を気に入ったデザイナーが新しい種族の一つとして実装してしまった。


「では、そろそろこの世界について見ていくよ」

そう言って、ボクの周り360度が見渡せるようにカメラを動かした。


◯[なにもない]

❤〚なにもないね〛

◎〚草w〛

◇[確かに、何もない草原が広がってるだけだ]


リスナーの言う通り、周囲は見渡す限りの草原が広がっている。

一応、山並みも見えるがかなり遠そうだ。

「スタート位置は始まりの街かランダムか選べて、ランダムにしたんだ。

ランダムだと、開拓者セットというアイテムがもらえるみたいだったしね。

そして、ランダムだと、何と世界のどこかから始まります」


◎〚おー]

◇[ランダムえらんだのかぁ、多分、今ランダム選んだ人はほぼいないっぽい]

◯[開拓者セットは……ないと困るらしいよ〛


「ちょっ、なんだがとっても不安なんですけど。

まあ、そこは配信者としてはオンリーワンを目指していくよ」


◯[ちなみに、世界の広さはリアルと同じくらいと謳われてる]

◇[陸地の広さが約1億5千万平方キロかな]

◯[ベータの募集人数1万人だから、誰かに会うには最低100キロ……〛


「あー、世界って広いね……」

地平線の向こうに沈みゆく夕日を見ながら、ちょっとたそがれた。


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