彼女契約結んでみました

えとはん

彼女ができました?

第1話 断りたかっただけなのに・・・①


「分かった、いいよ。でもお前が俺と付き合ってくれるなら……だけどな」


俺はかっこつけるかのように、目の前の美少女に向かってそう言ってやった。

自分としても、人生で一回でもこんなひねくれたオラオラ系の告白みたいなことをするなんて思ってもみなかった。

その上、相手はほとんど会話したことなんてない、美少女ときたものだ。

誰から見ても、俺の行動は常軌を逸していると言えるだろう。

普通ならこの後、彼女が俺に向かってグーパンをかました後、俺の非常識なその行動を周りに言いふらすことにより、俺が冷たい目で見られるという未来が容易に想像できる。


しかしみなさん、俺の言い分だって聞いてほしい。

俺だっていつもそんな何でもかんでもやりたい放題しているわけではない。

これについては、今までの俺の生活環境を見ていく必要があるのだ。


早速だが、俺の名は浅倉健司。

外見だけで見れば普通の高校生一年生だ。

髪を染めているわけでもなく、自分で言うのもなんだがイケメンでもブサイクでもない、特に目立った特徴のないただのモブである。


しかし、実は俺には決定的な欠点が存在する。

実を言うと、現在俺はその欠点によって大きく悩まされている最中なのだ。

この欠点は、それだけでふつうの高校生のイメージから遠ざかってしまうほどの重大で、非常に悲しいものである。


そんな重要な欠点、それは…俺に友達が一人もいないという点である。


自分としても、なんでこんな悲しいことを言わなければならないのだと思ってしまってはいるが、当然と言えば当然であった。

なぜなら現在高校一年生の俺は、今月入学式を終えたばかりで、新しい友達を作っている最中なのだ。

その上、現在通っている高校は、自分の卒業した中学からかなり遠く、わざわざここに通おうなんて同級生はほとんどいなかった。


そう、だから現在俺に友達がいないのは仕方がないことなのだ!


と、言い訳をしたかった、したかったんです。


はいはい、そうですよ、もともと俺には友達なんてほとんどいませんよ。

高校なんて関係なしに、中学校の時点で人間関係はうまくいっていませんよ。

高校選びだって、この高校に行きたかったからじゃなく、ここに行けば中学の同級生と会わなくて済んで、新しく高校デビューができると思ったからここにしたのに、見てよこの状況。

高校デビューどころか友達一人作れていませんよ。

悲しいったらありゃしない!


そして、現在俺の目の前にいる人をご紹介しよう。


こいつは俺と同じクラスの仁志川あゆみ。

なんやかんやで俺とは小中学校が一緒だった彼女は、いつも学校の人気者だった。

茶色のショートヘアーは、いつ見てもさらさらできれいな印象を持たせ、肌も白く美しい。

その上、顔はぱっちりとした二重まぶたに、整った鼻筋をしており、そんな彼女の顔からにっこり笑顔でもプラスすれば、どんな男も彼女の姿に目を向けてしまうだろう。


そして悲しいことに、そんな彼女が俺の唯一のオナ中である。

当然、仲良くなれる気などほとんどしない。


しかし、面白いことに現在俺の目の前にいるのがそんなあゆみなのだ。

つまり、俺は彼女にあの訳の分からない発言をしてしまったのだ。

正直、なぜこんなことになっているか今でも謎である。


まぁこれだけだと、なんであんなことをしたのかの理由にはなっていないのだが、とりあえずこれを踏まえたうえで事件の話を聞いてほしい。


とある日の放課後のことだ。

みんなが席を立って家に帰ったり、部活に行ったりして各々の時間を過ごしているそんな時、俺はというと、ただ席に座って頬杖をつきながらぼーっとしていた。


先ほど述べたように、友達など一人も作れない俺は、当然部活といったコミュニティに参加する勇気もなく、現在帰宅部を貫いている。


今日もこのままぼーっとしながらゆっくり家に帰ろうかなどと考えていると、俺の後ろの席からいつもは聞こえてくるはずのない足音が俺の方に近づいてきた。


はたから見れば、何でもないことかのように思えるが、何もすることがなく周りの音に敏感になってしまっていた俺はこの状況に非常に緊張してしまっていた。


そして、そんな足音はちょうど俺の真後ろで止む。

この時点で俺の心臓はバクバクであった。


正直、この時の俺は誰でもいいからそのまま俺に話しかけて友達になってくれないかな~、と淡い期待を抱いていた。

まぁそんな他力本願だから今まで友達いなかったんだよと言われればそれまでであり、ぐうの音の出ない。


しかし、そんな俺の希望は変な形で叶うことになる。


俺は内心ドキドキしながら平然を貫いていると、後ろから


「ちょっといい?」


と、本当に俺に向かって話しかけてきたのだ。











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