52.失礼しまーす!

 あれからまた3日が経過した。

 だが、いまだにヨシムラは見つからない。


「ヨシムラさん、一体どこにいるんでしょうね……?」


 本当にどこにいるのだろうか?

 ちなみに冒険者達は、指名手配されているヨシムラを一生懸命探している。


 いや、冒険者だけではない。

 商人などもヨシムラを探しているようだ。


 なんといっても、賞金1000万円だ。

 そんな大金が出るのであれば、探すに決まっている。


「!? コスモさん!!」

「えっ?」


 今、コスモとユリは自分達の家にいる。

 ユリが指を指した個所の空間に、歪みができる。


「失礼しまーす!」


 なんと、その空間の中から人が出てきたではないか。


「こんにちは♪」

「ヨシムラさん!?」


 そう、指名手配されているヨシムラが出てきたのだ。

 一体どうやって……?


「いやぁ、転移クリスタルって高い上に使うと壊れちゃうからさ、空間に穴をあけてそこを移動すれば、安上がりだなって思って実験していたんだよん♪ なんとか上手くいったねん♪」

「なんで出口が私の家なんですか!?」

「たまたまだよ♪ 嘘だけど♪」


「嘘って……あ! それより今、ヨシムラさん指名手配されてるんですよ!? 今までどこにいたんですか!!」

「指名手配……? 私なにも悪いことしてないよ!!」

「実はヨシムラさんの力が必要で……」


 悪いことをしてはいないが、どうしてもヨシムラの力が必要なので指名手配されている。

 いや、コスモとユリに最初の頃、襲い掛かっていたような……。


 どちらにせよ、装備のおかげで帳消しではあるが。


「私がここに来られたのも、私が提供した装備に、特性の発信機が取り付けられてたおかげなんだから、むしろ感謝して欲しいくらいだよ!!」

「発信機?」

「簡単に言うと、私があげた装備持ってると、私に場所が丸分かりなんだよん♪」


 そんなものが取り付けられていたとは……。


「他にも、装備を通して、色々とデータを収集させて貰ったからねん♪ おかげで研究もはかどるはかどる♪」


 ユリの予想通り、情報収集に使われていたようだ。

 ただ、どんな理由があろうとも、今ヨシムラの力が必要なのは事実だ。


 それに、ヨシムラはコスモの恩人でもあるのだ。


「それにしても、よくこの指名手配の騒ぎに気が付きませんでしたね。

 アトリエに引きこもってたんですか?」


「違う違う! 空間と空間の間……異空間に閉じ込められて、数日間出られなかったんだよん♪」

「そ、そうですか」


 よく食料が持ったものだ。

 おまけにそんな状況下に数日間おかれたというのに、精神状態も良好そうであった。


「あの中にいると、眠くもならないし、食欲もわかなかったんだよねん♪ 不思議!」

「な、なるほど」


 たくましい人である。


「とりあえず……ヨシムラさん、今話大丈夫ですか?」

「大丈夫だよん♪ いやぁ! それにしても、久しぶりに異空間の外に出たけど、やっぱりこっちの方が安心できるなぁ!」

(だろうね)


 コスモとユリは、ヨシムラに魔王のことを話した。


「やっぱりそうなっちゃうよねん……」

「やっぱり……? どういうことですか?」


 なにやら、深い訳がありそうだ。


「ふふふふふふふふふふ」

「?」

「ついに明かす時が来たね! 私の正体をぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 ヨシムラの正体……?

 まさか、魔王の仲間だとでも言うのだろうか?


「っとごめんごめん♪ テンション上がっちゃってねん♪」

「ちょっと! びっくりしましたよ!」


 人騒がせな人である。


 ヨシムラはいつもの調子で話す。


「私さ、魔王が乗っ取ろうとしている惑星から来たんだよん♪」

「「ええええええええええええええええ!?」」


 っていうことは、ヨシムラは恐竜ということだろうか?

 恐竜って言うくらいだ、コスモ的にはドラゴンのようなイメージをしていたが、まさか人間と変わらない外見をしていたとは……。


「ヨシムラさんって恐竜なんですか!? なんか、かっこいいかも」

「どうしてそうなるのん♪ 恐竜は大昔に滅びたよん♪」


 どういうことだ?

 恐竜は、大昔に滅びた……?


「魔王の情報が間違っていたってことですね!」


 ユリが言った。


 なるほど、魔王の情報が間違っていて、実際は別な生物が住んでいたということか。

 確かに、ヨシムラは恐竜という名前の雰囲気の見た目ではない。


「いんや、魔王の言っていることは当たっているよん♪」

「えっと……?」


 すると、ヨシムラは珍しくニヤニヤしていない真面目な表情で、コスモ達に言う。


「私、未来から来たって言ったら、君達、笑う?」

「「え?」」


 コスモとユリが驚くと、すぐにヨシムラはニヤニヤし始める。


「なーんてね♪ 面白かった?」

「は?」

「いやさぁ、一度言ってみたかったんだよねん♪ って、君達! その態度はひどくない!?」


 どうやら決め台詞だったらしい。


「んもおおおおおおおお!! 君達!! 映画とか見ないのん!!??」

「映画ってなんですか?」

「そ、そうだったねん……!! くっ……地球だったら、きっと大受け間違いなしだったのにん!!」


 ヨシムラがかつてコスモ達に見せたことのないような、悔しそうな表情を浮かべていた。

 余程悔しかったのだろう。


「大受けって……ふざけてたんですか?」


「滅茶苦茶☆ふざけてた♪」


「ちょっと! 真面目に教えてくださいよ! 本当はどうなんですか?」


「さっき言ったよん♪」


「だってふざけてたって……!」


「いやいや! なりきっただけで、内容自体は真面目だよん♪

 私は未来の地球から来たのん♪ 

 恐竜が絶滅してから、ずーっと先の地球からねん♪」

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