43.vsメア

「強い? やはり、私を馬鹿にしているな。

国王様、ここは分からせてあげましょう」


 国王は悩んだ挙句、言う。


「では、絶対に負けるでないぞ?」

「勿論です。そもそも降参させますので」


 こうして、コスモとユリは、国王とメアに連れられ、地下へと向かった。


「この王宮の地下にある闘技場だ。ここで私と英雄の試合を行う」


 まさか、王宮にこんな地下闘技場があったとは。


 天井までの距離も、かなりある。

 ここなら、コスモ達が大きくジャンプしても大丈夫そうだ。

 だが、地下にこんなに広い闘技場があるのでは、この王宮は中々に複雑な構造となっているのかもしれない。


「では、ルールを説明する。先に降参か戦闘不能になった方が負けだ」

「戦闘不能の判断は、私がしよう。いいか? 言ったからには絶対に負けるんじゃないぞ? 負けは許さない」

「はい。勿論です」


 国王が審判の代わりをつとめるようだ。


 コスモとメアは指定の位置につき、向き合うように立つ。


「後悔するなよ?」

「そっちこそね! ってあれ?」


 メアが握っていたのは木刀であった。

 腰につけている剣は使わないのだろうか?


「その木刀でやるの!?」

「当たり前だ。【剣聖】があれば、英雄ごとき、これで十分だ」


 かなりの自信があるようだった。


 そして、試合がスタートする。


「どこからでも来るがいい」


 メアがそう言ったので、魔剣で木刀を叩きにかかった。


「ぬぅ!?」


 メアはとっさに、木刀でガードをした。

 【剣聖】の効果の1つにより、折れはしないものの、かなりの衝撃のようであった。


「流石はオリジナル!!」

「ぐ……なんだこの力はっ……!」


 メアはすぎに距離を取る。

 そして……。


「気が変わった。一方的な攻撃で、すぐに終わらせる」


 メアがそう言うと、木刀による連撃を、コスモに仕掛ける。

 何回も何回も、木刀で叩く。

 だが、コスモはそれらを全て、魔剣で防御する。


「言いたくないけど本当に凄い。まるで、私と全く同じ力を持っているみたいだ」

「ありがとう! メアちゃんも凄いね!」


 実際同じ力なのだが。

 だが、それでもやはり、修行をしてきたメアの方が素早く、力強い一撃を放つ。

 気は抜けない戦いだ。


「メア! なにをしている! 負けは許さんぞ!」


 国王が言った。

 なにやら焦っている様子だった。

 対してメアはニヤリとし、木刀をその辺に捨てた。


「安心してください。むしろ、久しぶりに本気を出せそうで、嬉しい誤算です」


 メアは腰の剣を抜く。

 そこから出てきたのは、神々しい剣であった。

 常に光を放っているのかと、錯覚しそうになる程だ。


「綺麗だね」

「これは王族に代々伝わる聖剣だ。本当なら、こんな試合で使うものじゃない」


 魔剣がコスモの脳内で言う。


『あれが聖剣……! 凄まじいパワーを感じるぞ!』

『知ってるの!?』


 魔剣と聖剣……もしかすると、因縁があるのかもしれない。


『噂で聞いたことがあるぞ!』

『なるほど』


 そんなものは、なかったようだ。


(けど、まずいね)


 向こうの方が修行をしている分、力が上回っている。

 木刀で互角だったので、王族に伝わる武器なんて使われたら、危ないかもしれない。

 いや……。


(だったら、こっちも力を増せばいいだけだね!)


 コスモはチョーカーに付いている緑色のボタンを押す。


(メタルアーム、展開!)


 銀色の巨大な腕が出現。

 そして、それはコスモの腕をおおうように、装着される。

 コスモの体の大きさには合わないような、巨大な腕であった。


「よし!」


 コスモの動きに合わせて、メタルアームも動く。

 テストとして、手をにぎにぎしてみると、それも同じ動きをした。

 コスモは、自身の手ではなく、それで魔剣を握りしめた。


「なっ!? どこから出した!?」

「秘密!」

「くっ、きっと、見た目がゴツイだけ」


 メアは聖剣でコスモに襲い掛かる。

 だが、コスモは魔剣を用いて、余裕で受け止めた。

 倒れてきた物干し竿を受け止めているくらいの衝撃であった。

 メタルアームは見掛け倒しではなかったということだ。


「聖剣での攻撃を防いでいるだと!?

しかも、なんだ、その折れない剣は!!

折れない……その剣自体が特別なのか、それとも君が【剣聖】と同じような能力を持っているのか……?」


 当たりだ。


 メアは再び距離を取った。


「だったらこれを使うまで」

「おい! それはよせ! おおやけにしていいものではない!」


 メアは袖をまくって、オレンジ色の腕輪を見せつけてきた。


「マスターバングル」

「マスターバングル?」


 メアが説明を始めると、国王がため息をついた。

 だが、メアは続ける。


「そうだ。このマスターバングルは国のお金を莫大に投資し、100年以上かけて宮廷の技術職の人達が作り上げた装備だ。皆の想いが詰まっている。それを託された私は皆に期待されている。だから、私は負けられない」


 メアが力強い眼差しで、コスモを見る。

 そして、メアは言う。


「マスターバングル……起動」


 すると、メアは浮かび上がった。

 そして、自由自在に空中を移動した。


「飛んだ!?」

「驚いただろう? 本来そういったスキルがなければ、飛行など不可能だからな。だが、驚くのは、まだ早い!」


 メアが右手をコスモに向ける。


「ファイアボール!」


 火の玉が飛んで来た。


(これは……魔法!?)


「驚いた? そう、マスターバングルによって、人間でも魔法が使えるようになった」

「クロスみたいな感じだね」


 もしこんなものが量産されてしまったら、クロスはさぞ、がっかりするだろう。


「手加減はしない!! 更なる機能発動! 魔力にブーストをかけ、更に攻撃力を上昇させる!! はあああああああああああああああああああああ!!」


 メアは両手を使い、ファイアボールを次々に、何発も何発も打ち込むのであった。

 そして、フィールドは土煙に包まれた。

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