21.vsミアカ

 自身をSRランク冒険者だというミアカ。

 目的は、コスモと友達になることだと言っている。


「私と友達に?」

「うん!」

「それで私を探しに?」

「うん!」


 わざわざコスモと友達になる為だけに、あんなにフラフラになっていたとは……。


「他になんかないの? 使命とか」

「使命? う~ん?」


 ミアカは難しい顔をして考える。

 だが、すぐにニコリと笑う。


「多分無かった気がする!」

「多分って……」


 SRランク冒険者は王都を拠点としているという。

 となれば、随分と歩かせてしまったものだ。


(絶対他になんかあったよね)


 と、コスモは思った。


「でさー! コスモちゃんって、凄い強いんだよね? 剣聖だっけ?」

「そうだけど……王都でも有名なんだね」

「うん! クロスちゃんに勝ったってことも噂になってるよ!」

「なるほど」


 やはり、SRランク冒険者に勝つと有名になるらしい。

 だが、クロスは一般人であるヨシムラ以下の実力で、正直あまり強くなかった。

 というのが、コスモの感想であった。


「で! 私もコスモちゃんと戦ってみたいんだけど! いいかな!?」

「え!?」


 試合を申し込まれてしまった。


(どうしよう)


 コスモは1つ訊いてみることにした。


「これって殺し合いじゃないよね?」

「もちろん! 私、結構強い人と戦ってみたい主義なんだよねー!」


 殺し合いではないらしい。

 今までが殺意の高い相手ばかりだったが、まぁこれなら……。


「ねー! やろうよ!!」


 ミアカがコスモに接近する。


「じゃ、じゃあやろうかな。ただし、今日は遅いから明日ね?」

「やったー! わーい!」


 その日は、ミアカが持って来たドラゴンの肉を食べて、寝た。

 そして次の日。


「よーし! 私、がんばっちゃうぞー!」


 相手は短時間でドラゴンを討伐した人物だ。

 油断はできない。


「コスモさん、死なないでくださいね……?」

「大丈夫だよ! ユリは危ないから下がってた方がいい!」


 コスモがそう言うと、ユリは下がった。


「へぇ、武器は剣なんだねー! クロスちゃんと一緒だー!」

「ミアカは素手なの?」


 素手で戦える程、強いスキルを持っているということなのだろうか?


「違うよー! 私の武器は、これ!!」


 ミアカがそう言うと、ミアカの右側の空間に穴が開いた。

 丁度腕1本が入りそうな穴で、中は黒い。


 ミアカはそこに右手を突っ込むと、すぐに腕を引く。

 空間に開いた穴は閉じる。


「ハンマー!?」


 異空間から取り出したのは、渋い感じの赤色で、ゴツイハンマーであった。

 ミアカの体と同じくらいか、少し大きいくらいの大きさだ。

 だが、ミアカは実に軽そうに振り回している。


(いや、確かにミアカの怪力にも驚いたけど……)


 空間に穴を開けたのが、驚きであった。

 ユリのシールドリングにも収納機能があったが、それとは少し違うような気がする。

 とにかく、要注意だ。


「私の武器はハンマー! 冒険者で使っている人はあんまりいないんだけど、私は火力があって好きだなー!」


 ハンマーは攻撃力が高いが、動きが遅くなる。

 なので、冒険者でも使う人が少ないのだろう。

 だが、ミアカは軽々と持っている。

 流石、SRランク冒険者と言った所であろうか。


「じゃあ、試合スタートだよ!」


 そう言うと、ミアカがハンマーで襲い掛かって来た。

 スピードは、クロスより少し遅いくらいだ。


「おお! やるねー! というか、そんなに簡単にかわされると、私も本気出したくなっちゃうな!」


 次は本気らしい。

 クロスと同じくらいのスピードでコスモを攻撃するが、軽々と受け止めた。


「ええ!? 今の攻撃に反応できるだなんて、もしかしなくても、やっぱり凄いんだね!!」

(本気……?)


 やはり、一般人であるヨシムラより、遅い。

 クロスの時もそうだった。

 だから実はSR冒険者が実際は大したことないのだろうと、クロス戦後のコスモは思っていた。

 だが、こうしてドラゴンを倒した実力者のミアカも同じくらいのスピードだ。


 となると……。


(今まで私は、大きな勘違いをしていたのかもしれない)


 コスモが出した結論……「実はヨシムラは一般人レベルの強さではない」。

 自身のアクセサリーなどにより、SRランク冒険者を超えた身体能力を身に着けていたのだろう。

 100万光年先から来た地球人とは、本当に何者なのだろうか?

 もっと詳しく聞いておけば良かった。


 そして、そんなヨシムラより強い、【剣聖】スキル……。


(私の想像よりも……大分化物なのかもしれない)


 考え事をしながら、ミアカの攻撃を魔剣で全て防いだ。


「凄いよ!! 本当に凄いよ!! こうなったら、奥の手だよ!!」


 ミアカが目を見開きコスモに集中する。

 何かをするつもりだろうか?

 コスモは身構える。


「ていやーっ!」


 ミアカが叫ぶと、コスモの背後の木が倒れてきた。


「外しちゃったかー! やっぱり、まだまだ実用性はないね! 私の負けだよ!」


 こうして、コスモはミアカに勝利した。


「お見事です!」


 ユリは試合が終了すると、コスモの元へと駆け寄り、拍手を送った。


「それにしても、最後何しようとしたの? 外しちゃったって言ってたけど」

「えーと、空間を切り裂こうと思った!」

「空間を!?」

「うん! スキルの効果を応用してね! 上手くいけば、コスモちゃんにヒットしてたんだけど、外しちゃったんだよ!」

「え?」


 当たったら、どうなっていたのだろうか?


「今度はもっと修行するからね! またいつか試合をしよう!」

「うん。後、あんまり殺意が高い技は試合では使わないでね?」

「コスモちゃん強いから大丈夫だよ! じゃあねー! いやー楽しかったー! じゃ、これから修行するから、またねー!」


 そう言うと、ミアカは山に走っていった。

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