第3話 それは偶然というより必然と言えるだろう……褐色ロリエルフきちゃぁ! それは水に餓えていた私達にとって最大の幸運であり、また新たな時代の幕開け……の予感がした筈だ……

サイド ???

「それにしても、不思議なダンジョンだな……これといった罠やモンスターが少ない、いや、居ない。どういう事だ?」

サ…サ…と、周囲を警戒しながら音を立てずに進む少女は困惑していた。

何故ならここまで来る間、本来有るはずの罠やモンスターが居なかったからだ。どんなダンジョンでも3つ以上の罠、5匹以上のモンスターが居ると決まっているからである。

それがないとなると、スタンピードが起こった後か、ただ単にダンジョンマスターと呼ばれる存在が作成に失敗してダンジョンであるか……


嫌な予感にひやりと汗が背筋を滑る中、最大限の警戒をしながら、少女はダンジョンボスが待ち構える、ダンジョンの最奥にあるボス部屋の前の扉に辿り着いた。

「もうダンジョンボスの前か?一体このダンジョンはどうなっているのだ……」

ぶつくさと疑問を吐きながらも、少しでも消耗した集中力を高めようと深呼吸をする少女。

数分が経った後、意を決してその扉を開くと……


「なっ!こ、これは宝箱?成る程、ここは生まれたてのダンジョンだったか……しかし、これでは中身に期待できないな…、」

何も生息していない洞窟に宝箱となれば、それは生まれたてで防衛能力のないダンジョンが慈悲を媚びているといわれ、その中身は大抵が何にもならないゴミだと言われていた。

本来、宝箱とは深ければ深い程、ダンジョンに出てくるモンスターが強ければ強い程高価な物が得られるのである。更には宝箱にも等級があり……それは至って普通の最低レアな木の宝箱であった。少女はがっかりしながらもそれを開けた。

すると中に入っていたのは宝石と金で無駄に装飾され、他の金属部分が錆びた壺だった。


「何だこれは……」

そう言って持ち上げると少しだけキラリと光った気がした。


サイド 幸運の壺

______________________ 

種族 幸運の壺(笑) Lv.7 Rank2

ステータス

耐久 777/777

魔力276/∞

信仰0/∞

幸運777

ご利益

水 苔 ダンジョン製の良いナイフ 回復ポーション 解毒ポーション 転移魔法陣 吹矢トラップ 毒霧トラップ 土 結界 魔力の籠もった銅剣 パン 鉄くず

加護

無病息災(低)

______________________

う〜ん、何もする事が無い。それに手に入る?吸収する?モノのレア度も段々低くなってる気がするし……加護とか付いてるけど、無病息災って壺の俺には関係ないしなぁ……

てか何時まで待機すればいいんだ?退屈は神をも殺すってじっちゃが言ってたぞ?多分……

って、おお!親方!空に切れ目が!!って、親方なんて居ないんですけどね?


真っ暗な空間に一文字に入る亀裂、それは穏やかな光を宝箱の中に入れながらゆっくりと開けた人物を魅せる。

目深に被ったフードの隙間から見える銀髪、そこからちらりと見える尖った耳。鋭い碧の眼に、幼さの残る顔立ち、忍者の様に隠した口元。日に焼けた褐色の肌。その全てが彼女を幼いながらも蠱惑的な雰囲気のあるミステリアスさを生み出していた。


俺は何時の間にか彼女の虜になっていた。

例えそれが人恋しさというベール越しだったとしても……「何だこれは」と少し嫌そうに歪めた顔で見られていたとして、壺は気づかなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る