第40話



「テオドール様、今日はありがとうございました。」



 王城からの帰りの馬車でクラウディアはお礼を伝えた。清々しい彼女の顔を見て、テオドールも目を細めた。



「クラウディアの父上のおかげで丸く収まったんだ。俺は何にもしていない。」



「ですが、テオドール様の言葉……とっても嬉しかったです。」



 ふわりと微笑むクラウディアの手に、テオドールは自分の手を重ね、意を決したように口を開いた。



「クラウディア……。」



「テオドール様……?」



「俺は……今すぐにでもクラウディアと籍を入れたいと思っている。それは、今日のような馬鹿げた話から君を守るためでもあるが……それが無くとも、俺が生涯君といたいからだ。どうか俺と結婚して欲しい。」




 重ねられた手は震えていた。「……君の気持ちを聴かせてくれないか?」と不安そうに尋ねられ、クラウディアはテオドールの手を両手でギュッと握ると綻ぶような笑顔を見せた。




「私もテオドール様と同じ気持ちです……初めてお会いしてから今日までずっとテオドール様だけをお慕いしておりました。」



 力強くテオドールに引き寄せられる。抱きしめ合った後、顔と顔を近付ける。テオドールの躊躇う仕草を見て、クラウディアは彼の顔に手を添えるとそのまま唇を奪った。




「ディア……。」


 唇を離すと頬を赤く染め、目の潤んだクラウディアが恥ずかしそうに俯いた。



「……ごめんなさい。もう我慢できなくて……それに。」



「……それに?」



「そろそろ本気でジョアンナに怒られますわ。」



「……っ、ああ。」



 二人の応援団の声はしっかりと届いていたようだ。「……次はテオドール様からしてくださいますか?」と愛しい婚約者に強請られたら、もう躊躇うことはできない。テオドールは慣れない手付きで、クラウディアの頬に手を添えて口付けた。


 まだまだ男女の触れ合いには慣れない二人だが、気持ちを確かめ合うように甘い時間は続いた。




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