第21話
一応この街に住んでいるので、大体何がどこにあるのかは把握している。
そのためまずはコンビニを中心に歩き回るつもりだったのだが……。
「……ボロボロだな」
「そう、だね」
遠目から見ても分かるくらいに、ガラスや扉が壊されていて、中が激しく荒らされていることが分かる。
あれはモンスターの仕業なのか、それとも人間によるものなのか。
「ちょっとここで待っててくれ。俺が様子を見てくるから」
「うん、気をつけてね」
俺がコンビニへと近づいて中を詳しく確認しに行く。
「……根こそぎやられてんなぁ」
何も無い……ということじゃないが、食料や飲料水はほとんど見当たらない。
それなりに見つかるのは日用品や雑貨だ。
しかも商品棚が倒れたりしているので、まるで台風でも通ったあとのようだ。
それに破壊の跡だってそこかしこに見つかる。
店員か客か、モンスターになって暴れたのだろう。そしてしばらくして、食料を確保するために多くの人間がここへ詰め寄って奪っていった。恐らくはそんな感じだ。
「おっと、まだ残ってるもんもあったな」
棚をどけてみれば、床に幾つかの食料品が落ちていたのでゲットしておく。
ついでにカウンター奥に入って何か無いか確認する。
「こんな状況でも金を奪う奴はいるんだな」
レジが破壊されていて、中身がすっからかんだ。この世界で金に価値があるとは思えないが、何を思っ奪っていったのか。
「煙草もかなりいかれてるけど、そこそこ残ってるな。……もらっておくか」
俺や阿川は当然吸わないが、煙草は交渉品として使えるかもしれないからだ。そのためリュックに幾らかストックしておくことにした。
次にバックヤードに向かうが、やはり他の連中も探っていたようで、目ぼしいものは見当たらなかったので、そのままコンビニを後にした。
「お帰り、ツキオ。どうだった?」
「幾つかのレトルト食品とカップ食品をゲットした。それと……煙草」
「え……何で煙草?」
俺は後に大人に対する交渉品として使うことを説明した。
「なるほど! さすが頭良いね、ツキオ!」
狡賢いというのかもしれないがな。
そして次にも何店かコンビニを巡ってみたが、この一週間でやはり多くの人間たちの被害に遭っているようで、大量ゲットというわけにはいかなかった。
それでも少しずつ得られるものはあったので徒労に終わったわけではない。
しかしこの流れでいくと、きっとショッピングモールやデパートなども、すでに他の連中の手が入っている可能性が高い。
一応様子を見に行くことになったので向かう。
ただこれから向かうショッピングモールは、俺とひまるにとっての始まりの場所ともいえる駅前の広場の近くにある。
あそこは今でもモンスターがウヨウヨしているかもしれないので、気を引き締めて行くことにした。
「……案の定ってか」
駅前に入るが、やはりそこには多くのモンスターが闊歩している。それに血のニオイが結構キツイ。
それもそのはずだ。周囲には人間のものであろう血液や、身体の部位などが落ちている。さすがにこの光景をひまるには見せたくない。
広場を通るのではなく、迂回して細い路地を利用してモールへと近づくことにした。
幾つかある入口のうち、自転車置き場のある西側へと回った俺たちだったが……。
「そりゃここにもモンスターはいるわな」
でも広場側にある中央入口と比べるとまだ少ない。
「ゴブリンが三体にオークが二体……か。阿川、援護頼めるか?」
「もちろんだよ!」
俺はその場にリュックを下ろすと、サバイバルナイフを持って走り出した。
かなり上がったパラメーターのお蔭で、俺の敏捷は十メートルの距離を瞬く間に詰めるくらいにまでの速度になっている。
俺に背を向いて、まだ接近に気づいていないゴブリン一体に迫り、そのまま首目掛けてナイフを一閃。
たった一撃で綺麗にその首を刈り落とすことできた。
しかし当然異常事態に他のモンスターたちは気づき、俺へと殺意を持って走って来る。
そこへ上空から次々と羽ダーツがモンスターたちの身体に突き刺さっていく。
中には心臓を射抜かれ、そのまま絶命したゴブリンもいる。
俺は阿川の援護で動きを止めているモンスターたちに詰め寄り、一撃のもとに屠っていく。
俺の攻撃力は、すでに一撃でオークすらも簡単に殺せるくらいになっている。援護も必要ないだろうが、それでも念には念を入れているのだ。
あっという間に五体のモンスターを瞬殺し、周囲にモンスターの気配がないことを確認してから、俺は隠れている阿川に向けて手招きをした。
俺のリュックを持って、阿川とひまるがやってくる。
「ナイス、阿川」
「ツキオこそ! もうゴブリンやオークくらいなら問題なく倒せるね!」
「ああ、でも油断は禁物だ。相手が弱くても慎重にな」
阿川も自分の手でモンスターを倒すようにもなった。当然その時は顔色も悪かったが、いつまでも俺ばかりに背負わせたくないということで、彼は勇気を振り絞って自らの手を汚したのである。
今では俺の最も頼りになる相棒ってところだ。
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