第十三話 事情共有

「ユキヤ、実は……」


 次の日の昼休み。俺はユキヤを校舎裏に誘った。

 この間はユキヤが俺を校舎裏に呼んだのに、今日は俺がユキヤを校舎裏に呼んでるなんて、立場がまるで逆だ。


「ユキヤ、実はな。俺、昨日ハルさんっていう人と遊園地に行ったんだ」


 俺はユキヤに早速話しはじめた。


「ハルさん……? 誰、あんたの友達?」


 ユキヤは俺に聞いた。


「いや、友達というかなんというか……。一応、友達、でいいのかな」


 そう言葉を濁した俺を特に気に留めることもせずにユキヤは言った。


「で、そのハルさんがどうかしたの?」

「えーと、ハルさんも俺やお前と同じなんだ」


 うーん、やっぱり今のは説明が足りなさすぎたかもしれないな。ユキヤにはどうにかして伝わってほしいところだが……


「は? 僕達と同じ……?」


 しかしユキヤは首をかしげて、頭の上に疑問符を浮かべるだけだった。

 さすがに今のだけじゃ伝わらないか。俺ってこんなに説明下手だったっけ?

 それともパニクってるという可能性も捨てがたいけど。


「つまりは、俺達と同じってこと。ハルさんも、俺とお前みたいに元の世界から

この世界に来ちゃったんだよ」


 俺はユキヤに説明した。


「えっ、ハルさんも、僕達と同じ⁉︎」


 流石に、ユキヤも今の俺の発言には驚いたようだ。


「そういうこと。理解はしただろ?」

「まさか、僕達と同じような人がサクラさん以外にもいたとはね……」


 ユキヤが半ば呆れ気味に言った。


「明らかにおかしいよ、こんなの……」

「そうだな、とりあえず一旦今できることを––––」


 シュンと肩を落としたユキヤに、俺が言葉をかけようとした瞬間


 キーンコーンカーンコーン……


 丁度予鈴のチャイムが鳴った。


「予鈴だ。教室に戻らないと」


 ユキヤが言う。


「……なんか、俺たちいつも肝心なところで解散している気がする……」


 俺がそう呟いていると、ユキヤはもう教室に戻るところだった。


「じゃあ、僕はもう行くね」

「おい待てよ! まだこの世界についての理解をあんまり深めてないだろ!」


 俺がユキヤを止めると、ユキヤは振り向いて静かに言う。


「……じゃあ、この世界についての理解とかは、今日の放課後に改めて

話し合うことにしよう。いいよね、それで?」


 俺は今日の放課後、特に予定はなかったはず。


「ああ、分かったよ」


 俺はユキヤの提案を了承した。


 さて、じゃあ放課後に改めて集合することにするか。

 それにしても、なんか物事が進んでるようで進んでないような……?


 まぁ、いいや。とりあえずは放課後を待つとするか。


 俺は元の世界に帰れるのかというモヤモヤを一瞬抱いたが、

それを払拭するように教室へと歩き始めた。

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