第27話 2人の母殺害犯人は一体誰?




 スホは育ての親詩織を14年も前に殺害されて、今度は実母までも失ってショックの余り、暫くは仕事も手が付かない状態が続いた。


 愛する母親久美子を殺害したのは、やはりハユン妃と伯父一派の仕業なのか?


 それとも北朝鮮高官のトップで、この国の人脈、実力№1と目されている星日の姉婿パク・ドユン一派が、目障りな久美子を亡き者にしたのか?


「ナナナ何をする————!ハッ ハハ離せ————っ!ナナ何故だ————?」


「あなたが……あなたが悪いのです。私達がどんな目に合ったか???許せない!」


「ギャ————————!!」そして久美子は紐で首を絞められ殺害された。



 ******


 久美子は、北朝鮮ウォンサン北西側にある、もう何年も放置されている忘れ去られた特閣(別荘)に身を隠している。


「ウフフフ!ウフフ!ジウよ!私を亡き者にしよう等、絶対に許せぬ!お前は!お前と言うやつは————!とうとうシッポを出しやがったな!あやつを生かしておけぬ————!」


 エエエエ————?久美子は既に殺害されていたのでは???


 じゃ~?この久美子を名乗る久美子に生き写しの女は誰なのか?



 ◆▽

 戦国時代には相手を欺くために、何人もの影武者が居た。


 権力者や武将などが、敵を欺いたり味方を掌握するため、自分とよく似た風貌や服装の人物を身代わりとさせていた。日本の戦国時代には、武将が身代わりの人物、影武者を使っていた事例も多々あった。


 日本や韓国、更には中国、あらゆる国に北朝鮮のスパイは潜んでいる。


 成り済ましの久美子に似た体系の女性を他国で整形させる事も出来る。

 まあ~?その経緯は分からないが?


 まさか最高指導者満正の妻ジウが、久美子暗殺の片棒を担いでいたとは到底許されぬ事。内密にその情報は満正に知らされた。


「妻のジウが、大切な母殺害の片棒を担いでいたとは許せぬ!」満正は怒り狂っている。


 一体何故?満正の妻ジウが、愛する夫の母で可愛い息子正優のおばあちゃん久美子を、殺害しなくてはならなかったのか?


 そこには驚愕の真実が隠されていた。


 あの優しそうなジウの両親には、実はとんでも無い裏の顔が有った。


 果たして満正はジウを許せるのか?それとも愛する母を死に追いやった不届き者ジウを、謀反の罪で死刑にするのか……?


 妻のジウに命の危機が……。



 ☆☆☆☆☆☆☆

 一方のスホのマンションに侵入して来た男は誰だったのか?物騒にも程が有る。


 あんな白昼堂々と他人のマンションに、いとも容易く侵入して物色するなど到底許されぬ事。


 調べで分かって来たのだが、そう言えばロアの元愛人で詩織(幸子)に執拗に付きまとって、金と身体を好き放題にむさぼっていたとんでもない男で、女を自由自在に操るあのジゴロ(日本名岩田忠士)ドハが、日本での功績を認められて北朝鮮に戻り着実に出世して行ったのだが、反逆罪の罪をかけられ韓国に脱北していた。


 着実に任務を遂行して以前から在籍中だった秘密警察(国家保衛省)に所属。幹部にまで上り詰めていたのだが、星日亡き後反逆の罪で粛清された一派との関係を取りざたされて、危機的状況に追い込まれたドハは、命辛々韓国に脱北していた。


 そのドハとロアの姿が最近頻繫に目撃されている。


 ロアも全く変わり身の早い、スホが出て行った後直ぐに、また昔の男を加え込んでるのだろうか……。


 それでも……あのイケメンドハも、とっくの昔に日本を出払って、仕事の付き合い輸入雑貨からも手を引いている身、接点などとっくにない筈、それなのに何故今更……。


 もう60歳を優に越した中年のおじさん、もう魅力などとうに失われている筈。


 そんなドハは未だ独り身、この年で韓国に脱北して頼れる者など皆無。そのため昔懇意にしていたロアを頼るしかなかったのだ。


 この初老の男に、こんな知らない他国に来て、おいそれとは仕事は見つからない。そこでヤリ手社長ロアの下僕として、一番人がやりたくない仕事をやらされているのか?


 

 じゃ~?やっぱりあの白昼堂々と、スホのマンションに侵入していた男は、ドハなのだろうか?


 それでも…オートロックのマンションに侵入する事など到底叶わぬ事。


 あの時……ロアには行き先も伝えずに、逃げるようにロアのマンションから出た身、マンションに侵入する為の暗証番号など到底分る筈など無い。


 それから60歳を優に超えた男が俊敏に動ける筈ももなく、スホが見た人物はフード付きジャケットにマスク姿の男で、目が若干見える程度の人物特定が非常に難しい状態だった。


 チラッと見た感じでは、今までに見た事の無い顔で、どう見ても雰囲気や体付きから、20代にしか見えなかったとの事なのだ。






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