第23話 眉間に三日月型の傷の男の正体





 あの日殺害された詩織とすみれに百合を最後に見た父雄介が、殺害現場で最後に見た眉間に三日月形の傷跡の男の正体が暴かれて来た。


 それがあの有名俳優で稀に見る稀有な存在の芸能界の重鎮、村田哲ではないかと言われているのだ。


 全くのデマなのか?それとも真実なのか?


 余りの演技力の高さに、今尚一線で活躍する名優に対するやっかみ、嫉妬が生んだ噂話なのか?それとも……日本アカデミー賞助演男優賞候補常連の村田を陥れる為に、今は忘れ去られ、落ちぶれ果てた一部の俳優仲間達が、妬んでデマを流しているのか?


 また何故?そんな名優がAV男優などをやっていたのか?


 全くとんでもない話。


 人の噂では俳優を目指していた村田哲は、父親がヤクザの組長でその愛人との間に出来た息子だという事なのだ。


 昔は今と違ってヤクザが大手を振って闊歩していた時代。羽振りも良く何人もの愛人を抱え込んでいたヤクザの組長も多かった。


 古女房はゴミクズのように簡単に捨てれるが、こんな半端もんでも血の繋がった息子だけは可愛くて仕方がない。


 正妻の息子も沢山いる身の上だから跡継ぎには出来ない。その為、息の掛かった芸能事務所に頼み込んで何とか村田も所属する事が出来た。


 村田は体格は立派でスタイル抜群なのだが、ルックスが厳ついというか、何というか、鋭い目付きで決して綺麗な優男ではない。


 事務所も大親分の血を分けた息子を全力でサポートしているが、一向に目が出ない。そんな時に、1975年キャバレ―襲撃事件で村田の父で村田組の組長が銃弾に倒れた。


 今までは親分の顔色伺いで事務所総出で村田の売り込みに協力していたが、何の取り柄もない後ろ盾を失った村田には、エキストラ役ばかりで仕事などない。アルバイトも掛け持ちで働いて、食べて行くのにやっとの状態だ。


「もう芸能の仕事は諦めよう」


 そんな時にAV出演の話が舞い込んできた。それでも……(こんな裏社会稼業は絶対にイヤ!)そう思い、1980年代に数本のAVに出演しただけらしい。


 在日2世で、幸子(詩織)の2歳年上の男で、幸子がAV女優をしていた時の共演男優である事は間違いないらしのだが……?



 ◆▽

 カク・ヨヌという眉間に三日月形の傷のある北朝鮮出身の男なのかは、ハッキリしないのだが、確かに村田哲も在日2世で韓国出身となっているが……どうも北朝鮮出身らしい。


 第一眉間に三日月形の傷跡など無いし、朝鮮名もカク・ユノだし?まあ~?名前が『ヨヌ』と『ユノ』だから、似ているっちゃ~似ているが?それで話に尾ひれが付いて、こんなとんでもない何から何まで出鱈目な話になったのだろうか……。


 一体誰がこんな卑劣な噂を流しているのか?村田哲も憤りを隠せない。


「酷い話だ。俺があの有名な事件の首謀者だなんて……とんでもない話だ。パチンコ大手『キシマル』の家族になる筈だった婚約者の幸子さんと、2人のお嬢さんを殺したなんて絶対あり得ません。もう30年以上も前にAVで共演しただけの相手を、何故殺害しなくてはならないのですか?あり得ません!」

 

 警察の取り調べにも臆する事無く、当時の状況を話している。それでも警察の方も当時の関係者からの情報を入手している。


「イヤ!当時のAV関係者の話では、水商売の事務員さん募集という事で募集しておいて、実は募集した中で一際グラマラスで美人だった幸子さんを何としてもビデオに収めたい。目的は美しい幸子さんのセックスをビデオに収めて売る事が目的だったんだろう?上手い話であの当時では破格の3000円の時給で釣って置いて、そこで唐突にアダルトビデオの撮影をさせてくれと言っても、素人のお嬢さんがそう易々とはやらせてくれないので、感情のコントロールが出来ない状況、羞恥心より欲望が勝る状態に持って行く事だった。ましてやあの頃はAVビデオの出回った頃で、おいそれとは上玉がそんな話に乗る筈がない。そこで幸子さんに覚せい剤を最初は飲み物に混ぜて飲ませていたが、疲れると言うのでビタミン剤だと言ってカプセルで飲ませ完全に、薬物中毒にさせてヤク無しでは生きて行けない身体にして、そこに男優と絡ませあちこち触らせ、最初は何事が起っているのか不安な表情で抵抗したが?アダルトビデオを撮らせてくれたら20万円払うと言ったら、羞恥心など何処へやら欲望の塊となった幸子さんは身体中興奮状態で自分から衣服を脱ぎだしたんだろ?それは働き口の無い父に代わって一家を支えなければならないから20万円も貰えるし、薬物の威力で身体中が興奮してムラムラガが抑えられない状態の為、セックスも躊躇せずに自分から積極的に求めて来たんだ、そこでそれはそれは卑猥な男性の欲望を満たすには余りある上物の画像が撮影出来たらしいじゃないか?撮影中にヤクが切れると凄い脱力感、疲労感、倦怠感が襲って来て仕事にならないので、「又あの飲み物を飲ませて!」とせがむので「飲ませる代わりに又男と楽しんでくれるかい」「お金が貰えるのなら幾らでも!」更にはもっと卑猥な過激な画像を!それを繰り返していたら幸子さんも酷い状態の廃人同然になってしまって、それを知った親が暴れ込んで来て『娘を殺す気か!娘が薬物中毒になったのはお前らのせいだ!訴えてやる!証拠もあるんだ!娘に覚せい剤だと言わずにこんな薬物中毒の廃人同然の身体にしやがって!』そしてその薬物の出所が村田組だったという事も分かっている。村田組の組長はあなたの義兄で村田武。覚醒剤を北朝鮮から密輸して暴力団の資金源となっている事も分かっている。幸子さんがどうしてそれに気付いたかって?それは「ビタミン剤だと言って飲まされるカプセルを飲むと、興奮状態になり何か極端に倦怠感が襲ってくるの」と言うので親も心配になりコッソリ持ち帰らせたという事だ。それを調べて貰ったら覚せい剤だと分ったんだ。薬物の流れはまだはっきり裏は取れていないが?」


 やはりもっと深い闇がありそうだ!村田哲も何か怪しい?


 一体何が有ったのか……?



 

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