第8話 サバオとサツキちゃん

「ただいまぁ……あ、サバオ!」

 私は通学用のリュックを玄関の脇に置いて、すり寄ってきたサバオのふさふさした体を撫でる。

 うん。いつも通りの柔らかさとあたたかさだ。

「にゃーん」

「今日学校にさ、変なおっさんが来たんだよ……あんたの名を語る、変なおっさんでさぁ……」

 私はサバオを抱き上げて、自分の部屋に移動しながら、部活動中に起きた珍事件をサバオに話して聞かせた。

「でも先生、結局そのおっさんを捕まえられなかったんだよねぇ……先生が警察に連絡したって言ってたから、今度来たら間違いなく捕まるな、あのおっさん……うん、間違いない」

 サバオを見ると、黙ったまま明後日の方向を見ている。

「……私さ、そのおっさん見て、なぜかサバオを思い出しちゃったんだよね! ……私のこと、大好き! なんて言っちゃってさぁ」

 私は頬を赤く染めたおっさんの顔を思い出した。

「あのおっさん、顔は悪くなかったんだよね……いや、それどころか、けっこう好みだったかも……あーあ、あれがおっさんじゃなくて、同級生タメか先輩だったら良かったのにな……」

 私はサバオと目線の高さを合わせて、じっとサバオの瞳を見つめた。

「私も、サバオのこと大好きだよ!」

「にゃーん」

 気のせいかな……サバオの表情かおが一瞬、照れたように赤く見えたのは。

 ふふ……かわいい奴め。

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