Klasse4 稽古
「あーよく寝た」
「お、おはよう、京さん」
「おはようさん。桐生は真面目に受けてたんだな」
「当たり前だよー! あの先生の出すテストの問題難しいんだから」
「ふーん。あれでか?」
受けたのは何という事はない内容。コイツらには難しく見えるらしい。オペレーターが暇つぶしに出してくる問題と比べたら簡単すぎるんだがなぁ。まぁいいや、次は実技だし。
「実技行こうぜ、桐生」
「う、うん」
さてさて、練習場いきますか。
——練習場
「やっ、はっ」
桐生が素振りをしてるのをボーっと見る。何でも私に見てほしいとのこと。
「どうかな? 京さん」
「悪かねぇ。だが無駄がある。桐生の流派は裏葵流だったな?」
「はい。裏葵流をひとしきりは修めていますが」
桐生は裏葵流をこの歳で皆伝している。まぁ確かに冴えてはいるが神凪よりは劣っている。別に悪い訳じゃないが神凪に比べると型を重視し過ぎて実用に欠けるんだよな、裏葵は。
「桐生、私の一撃を『葵流し』で受けてみろ」
「は、はぁ……」
桐生が構える。葵流しは裏葵の防御技の一つ。神凪の流水と似ているが最大の違いは……
「はあっ!」
「くぁっ! 間に合わなかった……!?」
「やっぱりな」
葵流しは出るのが遅い。防御力はあるが間に合わなければ意味はない。
「まだ鍛錬が足りないのかな……」
「いんや、桐生の腕前は確かだぜ。悪いのは技そのものだ」
「そのもの?」
「ああ。葵流しをこのまま使い続けてもさっきの私の一撃はいつまでも防げない。お前さんの腕前を以てしてもな。だから葵流しを改造してやる」
「ええっ!?」
「型重視の裏葵なら思いつかんだろうぜ。改造は至って単純だ。構えの二段目を抜け」
「そ、それだけですか?」
「それだけさ。まぁ、難しいだろうが。やってみな」
構え直して撃ち込み続ける。さぁ、桐生は「手抜き」ができるかな?
——一時間後
「はぁっ、はぁっ……」
「ふーむ、やっぱいきなりは無理か」
「どうしてできない? 抜くだけなのに……!」
「それも単純さ。お前さんには葵流しを使う型が無意識レベルで刷り込まれてる。イヤでも動く心臓を止めろって言ってる様なモンなんだよ」
刷り込まれたモンを抜くのは意外と大変なのさ。人間にとってはな。
「桐生、私に撃ってこい。葵流しの抜いてるやつを見せてやるよ」
「! でも京さんは裏葵流じゃなくて神凪流なんじゃ?」
「ん? 私がいつ神凪流しか使えんなんて言ったか? 裏葵も使えるぜ。てか私に流派なんか無いようなモンさ。強いて言うなら我流だな」
呆気に取られる桐生。それもそうだ。神凪流は表立たないし、裏葵流も裏とついているだけあって人口は少ない。そんなのを二つ使ってるってんだから人間は驚くだろうな。
「では……はっ!」
「そおれっ、と」
——キンッ
「嘘……ホントに抜けてる……」
「まぁ、見るだけならわからぁ。後はそれを身体に叩き込むだけだ」
見るだけ見れるのも相当ったら相当だ。手抜きしちゃいるが私の技を見切ってるんだからよ。さてさて、この桐生……人間はどこまでやれるか?
——
「はーっ、はーっ。ぐう……」
「ここいらで今日は終わりにしとこう。いい感じだぜ、桐生」
「そう……かな……」
——バタンッ!
あーあ、倒れちまった。なかなかハードにやったからなぁ。とりあえず背負って保健室行きだな。
今日もあんまり冴えてない一日だったなぁ。
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