第20話 中学生とは危険なことに惹かれるお年頃

 高校生になって最初の期末テストを乗り越えみんな大好き夏休みがやってきた。


「それではこれより夏の予定を決める会議を始める!」


「「わー!わー!」」


 いつもの如く脈絡なしに呼び出されたかと思えば出迎えたのは仁王立ちで先の宣言をするバカと後ろで賑やかしなロリ二人。


「………」


「あはは…」


 同じく呼び出されたらしい氷上は呆れ、吉崎も苦笑している。


「さて、それじゃあ何か意見はないか?」


「そのまま進めるのかよ」


 俺達の反応に触れることなく司会を続ける夏川。メンタル強ぇ。


「ハイッ!海に行きたい!」


「私はキャンプをしてみたいのです!」


「心霊スポット巡り。肝試しでも可」


 上から順に彩音、小唄ちゃん、氷上。置いてけぼりな俺達とは違って各々意見を出していた。ちゃっかり氷上が順応している。


「というかなんで心霊スポット巡り?そんな趣味あったっけ?」


「単に昨日テレビでホラー特集を見たので。たまにはそんなのもいいかと」


 夏って心霊番組多いよね。全部ヤラセだろって思う俺は夢がない。それはそれで楽しめるけど。


「吉崎やハルはなんかないのか?出来れば夏らしいことで」


「夏らしいことねー?天体観測とか?満天の星空とか天の川を見てみたいかな」


「んー?花火?今年はまだやってないし」


 こうして考えてみると夏らしいことって結構あるものだな。他の季節でもやることあるのも混じってるけど。


「花火って家庭用のやつですか?お祭りとかで見る打ち上げ花火もいいですけど家庭用は風情がありますし落ち着けていいですよね。線香花火とか」


 俺が適当に出した案に氷上が食いついてきた。氷上が一人で線香花火をしている寂しい絵面が思い浮んだがそれはさておき、落ち着く?


「確かに線香花火は落ち着くかもしれないが他のはそんなことないだろ。むしろ家庭用の花火なんかすれば興奮しっぱなしだと思うんだが?なあ夏川?」


「そうだな!騒ぎまくって落ち着く要素なんか皆無だよな!」


「……ハル達ってどんな風に花火をしてたの?」


 何か食い違いがあるのに気付いた吉崎が訝しむように聞いてくる。どんなってそりゃあ…。


「手持ち花火をライトセイバーに見立ててス○ーウォーズごっこしたり?」


「辺り一面にネズミ花火ぶち撒けて逃げ惑う奴らを見てゲラゲラ笑ったり?」


「ロケット花火や打ち上げ花火を相手に向かって飛ばしたり、噴出花火を手榴弾よろしくぶん投げてFPSごっこしたり?」


 良い子はマネしないで下さい。


「相変わらずロクでもないですね…」


 氷上の言葉が俺と夏川に刺さる。相変わらずってなんだ。吉崎や彩音、小唄ちゃんも呆れ顔だ。


 ネズミ花火が大地を駆け回り、ロケット花火や打ち上げ花火が飛び交う中で手持ち花火でチャンバラ。もちろん火事にならないように水を用意し、広いグランドの真ん中で行ったが実に盛り上がった。線香花火?地面に置いといたら引火して知らぬ間に燃え尽きてた。


 なお火傷しないように長袖を着て肌を隠していたが、服が焦げて説教くらった。


 良い子はマネしないでね!


「何その地獄絵図。危ないでしょ!」


「ふっ、危険なことに惹かれる年頃だったのさ…」


「文字通り火遊びしてたんですね…」


 氷上がうまいこと言った。大なり小なり危ないことに惹かれる年頃とはいえ文字通り火を使って遊ぶ奴らはそうそういないだろう。


「男子ってみんなそんなにバカなのです?」


「思春期の男子なんてバカばっかりだぞ」


 自分で言うのもアレだけど。


「ま、まあ過去の所業は置いといて今年の夏の話だ!こんなものか?他にやりたいことはないか?」


 夏川が話を元に戻す。そういや夏休みに何するかって話だったな。その後に少し話し合ったが他に意見はないようだ。


「ふむ、海にキャンプに肝試しに天体観測に花火か…」


 出た意見を口にして何かを考えていた夏川だが少しして口を開いた。


「よし!場所は俺に任せろ!何泊かすることになると思うから各自都合の良い日を教えてくれ!」


「まあ近場じゃ花火くらいしか出来ないだろうし泊まりになるだろうが何からやるんだ?」


 当然のことながら海に行くのとキャンプに行くのとでは持っていく物が変わってくる。だから何からやるのか聞いたのだが夏川はニヤリと笑って答えた。


「全部だ!」

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