第5話 純白の翼

「ヤバい...」私、水戸みと れいはこれまでにないくらい焦っていた。なぜか?それは、私の翼が出たからだ。私は特異体質で、翼が背中から生える。この5年間は、制御できるようになっていたから、余計に焦っている。

この白い翼をどれだけ嫌ったか。とりあえずどこかに隠れなければ。ああ、ちょうどいい裏路地があった。ここなら有刺鉄線も貼られているし、誰も、いや、猫さえも来ないだろう。早く消さなければいけない。このまま家に帰る訳にも行かないし。いや、家なら安全だ、でも移動中に見つかる可能性がある。ここで一時的に消すしかない。そう決め、私は翼を全部広げた。

羽根が舞い散ってしまうが多少は仕方がない。広げてから、折りたたむ。そして消す。イメージ、イメージが大事。

足音が聞こえる。案の定、誰か来てしまった。やばいやばいやばい。このままでは見つかってしまう。抑えるしかない!

強く思った私は、うっかり翼を広げてしまい、雪かと思えるほどの沢山の羽根が舞い降りていった。ああ、とうとう見つかったか。

「なっ...」驚く中学生。制服とバッジですぐに気がついた。この人、同じ学校の同級生だ。口を半開きにしながら棒立ちする中学生に、私は振り返りながら優しく微笑んだ。「見ちゃったのか、君」

驚くほど冷静に、優しく言葉を放つ私に自分でも驚いた。


私の翼は夕日の光が反射して、真っ赤に染まり上がっていた。

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