第5話 純白の翼
「ヤバい...」私、
この白い翼をどれだけ嫌ったか。とりあえずどこかに隠れなければ。ああ、ちょうどいい裏路地があった。ここなら有刺鉄線も貼られているし、誰も、いや、猫さえも来ないだろう。早く消さなければいけない。このまま家に帰る訳にも行かないし。いや、家なら安全だ、でも移動中に見つかる可能性がある。ここで一時的に消すしかない。そう決め、私は翼を全部広げた。
羽根が舞い散ってしまうが多少は仕方がない。広げてから、折りたたむ。そして消す。イメージ、イメージが大事。
足音が聞こえる。案の定、誰か来てしまった。やばいやばいやばい。このままでは見つかってしまう。抑えるしかない!
強く思った私は、うっかり翼を広げてしまい、雪かと思えるほどの沢山の羽根が舞い降りていった。ああ、とうとう見つかったか。
「なっ...」驚く中学生。制服とバッジですぐに気がついた。この人、同じ学校の同級生だ。口を半開きにしながら棒立ちする中学生に、私は振り返りながら優しく微笑んだ。「見ちゃったのか、君」
驚くほど冷静に、優しく言葉を放つ私に自分でも驚いた。
私の翼は夕日の光が反射して、真っ赤に染まり上がっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます