第3話 飛んでみたい

「はーい、おはようございます。今日のホームルームは文化祭についてです。うちのクラスは出し物はしませんが、なにか意見のある人いますか?」

始まった。僕、天宮あまみや かけるが世界で一番嫌いな行事。

なぜ嫌いか、陰キャなら当然分かるだろう。

人とのコミュニケーションが苦手。

そもそも青春という言葉が嫌い。嫌いな理由はそれぞれだが、一番の理由は協力することだ。いつもは陰口ばっか、いじり合いばっかしている奴らがなぜ〇〇祭となるとこんなに団結するのだろう。普段からこんな感じだったらいいのに。まあ、そこにも僕の居場所はないけれど。窓の外を見る。校庭で走り回っている人たちが見える。上を見るとさっきと同じ、青い空がずっと広がっている。

そこに飛んでいる鳥たちは街を見下ろし、優雅な旅を続けている。僕も飛んでみたい。そんなことを思っていると、ホームルーム終了のチャイムが流れていた。「では今日はこれで終わり。次回までに実行委員はアンケートを回収しておくこと」他の人たちが一斉に挨拶する。ああ、世界は今日も平和だなあ。

「ああ、平和だな。翔」そう話しかけてきたのは、菊野雷斗。僕の数少ない友達であり、理解者。少し茶髪の彼は、苦笑いしながらこう言った。「またそんなこと呟いちゃって、妄想にひたってたのか?」「ああ、鳥みたいに飛んでみたいなあ」

その時は願いがこんなふうに叶うなんて、これっぽっちも思っていなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る